ヤンデレ王子とだけは結婚したくない

小倉みち

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第1章

解決

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 あの令嬢たちは予想通り、大人たちに先ほどの適当な嘘を申したらしい。


 しばらくしてから大人たちがわらわらと私たちの周りに集まってきて、

「何をしているんだ!」

「殿下から離れなさい!」

「嫉妬して殿下を無理やり襲うだなんて」

 と言い出したため、しっかりと令嬢たちの目の前で証拠を提示してあげた。


 魔法石はしっかりとその役目を果たしてくれた。


 これでもかというほど画質の良い証拠映像が、空に向かって映し出される。

 声は残念ながら入っていないが、襲っているのが私ではないことがしっかりとわかるはずだ。


「酷いですわ……」

 私は顔を覆い、泣き真似をする。

「婚約者であるマクシミリアン殿下を助けようとしたのに、加害者なんて言いがかりつけられるなんて……。王家とお父様に報告しなくては」


「ああ、いや、その……」

「それは……」


 自分たちが間違っていたことに気づいた大人たちは、口々に言い訳を述べようとする。

 令嬢たちは適当な嘘がバレてしまったのが恥ずかしいのか、泣き出す子までいた。


 いや、あの……。

 なんで加害者側が泣くわけ?


 それよりもやることあるでしょ。


「……謝れよ」

 低い声で、マクシミリアン殿下が言う。

 
 私の思いをしっかりと代弁してくれた。


「も、申し訳ございません、殿下――」

「僕にだけじゃない。ハリエットにもだ」

「あっ……」

「僕の婚約者を痴女呼ばわりして、それで済むと思っているのか? 本来なら謝罪だけでは済まされないことだぞ」


 殿下が色々言ってくれているのを良いことに、私は泣き真似を続行する。

「う、うぅ……。お父様に言わなきゃ。酷い子とされたって」

「「「も、申し訳ございませんでした! ハリエット嬢」」」


 慌てて、大人たちが私に頭を下げる。


「こら、お前たちも謝りなさい!」

「元はと言えばお前たちが嘘をつくから――」


「す、すみませんでした……」

「ごめんなさい……」


 一応は頭を下げる令嬢たちだが、どう考えても不服そうな顔をしている。


 謝罪する姿が全く気に食わないので、宣言通り王家と両親に告げ口することを決めた。


「あの……」


 彼らが去った――というか、無理やり私が、

「あなた方加害者がいたら、殿下が苦しむと思いません? そういう配慮もしないのかしら」

 と言って追い出した――のち、殿下が私に言う。


「何よ」

「ハリエット。泣き真似、下手くそだな」

「……は?」


 せっかく助けてあげたのに、なんなんだその態度は。


「冗談だって」

 
 私が睨むと、マクシミリアン殿下はくすくすと楽しそうに笑う。


 初めて見た、殿下の笑顔だった。

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