行方不明だった元婚約者が戻ってきたので、浮気三昧な現婚約者を捨てることにしました

小倉みち

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朝食

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 私は次の日から早速、学校へ通うことを辞めた。


 毎朝憂鬱な気持ちで起きる必要もないし、イザベラに愚痴を言う必要もないし、嫌なことを考える必要もない。


 あの2人と顔を合わせる必要もないのだ。


 私は久しぶりに、すっきりとした朝を迎えることが出来た。

「おはようございます」


 いつもより1時間も多く眠ったが、誰にも文句を言われない。


 イザベラは、私の部屋のカーテンを開けた。

「おはよう」

「朝食の準備が出来ております。ご準備を」

「わかったわ」


 私はクローゼットにかけられた制服に見向きもせず、普段着のドレスを取り出す。

「今日はこれにするわ」

「承知いたしました」


 私からドレスを受け取ったイザベラは、私の着替えを手伝った。




「おはよう」


 私はダイニングへ向かう。

 お母様は、既に席についていた。


 お父様は朝早く仕事場である宮廷に向かっている。


「おはようございます、お母様」

「今日は随分と顔色が良いようで何よりです」


 お母様はふわりと微笑む。

「ありがとうございます。ランスは?」

「彼は先に朝食を食べて、自室で勉強をしているみたいよ」

「へえ」


 私は感心する。

「頑張っているのね」

「あなたのために頑張っているのよ」

 楽しげな表情でお母様は言った。

「あなたたち、幼馴染なんだもの」

「でも、ランスは私のこと、あまり覚えていないみたいだけど」


 彼が私に協力してくれるのは、それに対する罪悪感と同情からだと思っている。


 私の現状が可哀想だから、私に手を差し伸べてくれているのだ。


「せっかくだから、この数ヵ月の間に仲良くなっておきなさい。ランスが公爵家の当主として国王陛下に認めてもらうまで、彼はここに住み続けることになりますから。良い関係を築いてくださいね」


 私は少しドキッとする。


 その「良い関係」というのは、友人関係か、それとも――。


 いや、お母様のことだから、きっとあまり考えないで言った言葉なのだろう。


「そうですね。家の関係もありますし」

「そうね。それと、あなたの婚約者についてなんだけど」


 お母様は、少し言いづらそうに口をもごもごとさせる。

「リアムと別れたあと、次の婚約者を見つけるのは大変だと思うわ」

「……はい」


 リアムは次男で、私は1人っ子。

 女性が爵位を継ぐことは法律上出来ない。


 私たちの婚約はユーリが婿入りするということで成り立っていたのだ。


 彼の家は私の家と同じ爵位で、だからこそ敵同士という弊害はありつつも、両親はユーリを私の婚約者に選んだ。


 公爵令嬢である私と同じくらいの地位を持つ、次男以降の男性。


 その条件に当てはまる男性を見つけるのはとても難しい。


「家のこととか、長男かそれ以外かとか、あまり気にしないでちょうだい」

「でも」

「大事なのは、あなたの気持ちだから。次は、あなたが大切に思えるような人を選ぶのよ」

「……わかりました」


 私は了承したが、リアムに酷いことをされて傷ついている今、そんな相手を簡単に見つけられるとは到底思えなかった。




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