殿下、私たちはもう終わったんですよ

隣国 ～ウィリアム視点～

　私は想像する。


　あの女とさっさと別れ、ソフィアと結婚することを。

　彼女は可憐で、まるで野に咲く花のように素朴な美しさがある。


　その彼女を真に手に入れることが出来れば、一体どれほど幸せなことなのだろう。


　……しかし、公爵家どもも随分愚鈍になったものだ。

　我が国と向こうではレベルが違うことを忘れてしまったのだろうか。

　発展途上の国では、どうあがいても我が国には勝てまい。

　確かに今、我が軍は兵士が少ないという状況に追い込まれているが、武器や装備などは、我が国の方が圧倒的に優勢だ。


　戦争において大事なのは、量より質。

　我が国は凄まじい技術者たちをもってして、急速に発展していったのだ。

　その力は世界でも有数。


　そんな我が国に、彼らはどうやって勝つ気でいるのだろうか。


　それに、ソフィア。

　彼女の我がままにも、私はほとほと呆れてしまった。

　私が優しいから良いものの、ほかの有象無象であれば敬遠するほどの強情ぶり。


　そういうところも可愛らしいとは思うが。


　いい加減、私も我慢出来ない。

　彼女は、痴話喧嘩に国々を巻き込むのをなんとも思っていないのだろうか。


　彼女のせいで、死人が出るかもしれないというのに。


　私はため息をつく。


　私だって、戦争は嫌いだ。

　弱い者虐めを好いていない。


　こうして隣国という弱い存在を武力によって痛めつけるのは、心が痛む。


　しかし仕方がないのだ。


　私は、心の中からソフィアに話しかける。


　それはソフィア、お前が強情なせいだ。

　強情で困ったちゃんだから、私がなんとかするしかなく、こうして自分の周りの人たちを傷つける結果となってしまう。


　わかったか？

　わかったなら、大人しく私の元へと帰ってきておくれ。


　愛しい人よ――。