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休み時間

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「何読んでるんだ?」


 昼休み。

 いつもの中庭にて。


 私が眠っていないのがそんなにおかしいのか、不思議そうな顔で近づいてくる者が1人。


 あの男子生徒だ。


「これ」


 説明するのも面倒なので、私は裏表紙のあらすじを彼に読ませた。


 男子生徒は、回りくどい言い方をする。

「……君、結構な趣味を持ってるんだね」

「失礼ね、あなた。これ、私の使用人の趣味よ」


 自分のセンスがないみたいなことを言われ、私は憤慨した。


「それはすまない」


 彼は目を細め、吟味するようにしてパラパラと本のページを捲った。


「男爵令嬢と公爵子息の恋愛模様?」

「ええ、そうみたいね」

 私は頷く。

「へえ」


 苦虫を噛み潰したような顔。

「君の現状にそっくりだね」

「でしょ?」

「気味が悪いくらいに」


 基本寝てばかりいる私は、この世界の貴族の常識なんてものは知らないが。


 前世でよくある、

「男爵令嬢との禁断の恋」

「真実の愛を見つける」

 なんていうおとぎ話は、おとぎ話でしかないというのはよくわかっていた。


「……こんなの、1歩間違えれば、貴族に対する不敬になるだろ。よくこんな本世間で流通してるよな」

「流行ってるらしいわよ、これ」

「……俺には全然わからないが」

「私にもわからないわよ。これの良さが」

「君とは話が合いそうで良かったよ」
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