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2章
2章33話(134話)
しおりを挟む小屋……と言うか、一軒家のように広い。遠かったから小屋に見えていただけなのかもしれない。
「ほれ、入れ」
グレン先生にそう言われて、私たちは家の中へと入った。何だか不思議な気分だわ。
「グレン先生はこちらに住んでいるのですか?」
「あ? ああ、まぁな。畑の世話もあるし……近くて良いんだ、ここ。まぁ、ひとつだけ問題点を上げるとしたら――」
バンッと大きな音を立てながら扉を開ける。私たちがびっくりしていると、グレン先生は「はぁぁああ~」と大きなため息を吐いた。
「ここはお前らの家ではないんだが?」
「あ、お邪魔してます、グレン先生」
「相変わらずここの野菜は美味しいですね」
「アカデミーで野菜嫌いを克服したって子、結構いるんですよ~」
ほのぼのとした会話を繰り広げる人たち。……大人、のようだけれど……。
「あれ、先生、こんなに可憐なレディたちを連れてどうしたんですか」
「まだまだガキだろ。ん? シリルはどうした」
「トマトに夢中です」
……そうだ、騎士の格好をしているんだわ、この人たち! ……と言うか、今、シー兄様の名前を口にした……?
「あの、この方たちは……?」
「アカデミーの警護をしている騎士たちだよ。ああ、そうだ。こいつシリルの妹な」
「えっ! あの噂の!」
そう言って私に視線を向けるグレン先生。騎士の人たちは私たちに近付いて、興味深そうに眺めている。……噂の? 騎士の方々にも私の……どんな噂かわからないけれど、噂を聞いていると言うことで……、えっと?
「こらこら、背の高い男が、少女たちを取り囲むんじゃない!」
「あ、ごめんね、怖かったね」
「俺らシリルと同期の騎士なんだ」
「え、えっと、エリザベス・アンダーソンです。いつもシー兄様がお世話になっております……!」
騎士の方々はわざわざしゃがんでくれたので、慌ててカーテシーをすると、騎士の方々は「わー、良いなぁ、妹~」なんて口にしていた。
「リザ?」
「シー兄様!」
「え、なにこの状況……。なんでお前らがオレの妹、囲んでいるの……?」
シー兄様の低い声に、騎士の方々はビクッと肩を震わせた。……と、思ったら、誰かがペシンとシー兄様の後頭部を叩いた。
「いって!」
「怖い雰囲気を出すんじゃない、この馬鹿!」
「……かしこまりました」
忌々し気にそう言うシー兄様たちに、私たちはおろおろとしていた。グレン先生が肩をすくめて、騎士の方々に「食ったなら戻れ!」と家から追い出そうとした。シー兄様も出ていこうとしたけれど、それをディアが「お待ちください!」と引き留めた。
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