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2章

2章43話(144話)

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 寮に戻ってから寮母であるアンさんに、ディアの部屋を聞いたけれども「今は休んでいるから、あとでね」と言われた。ディアの具合が良くなったかはわからない。私たちがディアの元に居るのかを尋ねたら、「さて……?」と首を傾げられたそうだ。

「ディアは他国の王族だから、私のような平民が気に掛ける理由もないって思われてそうで……。友人なのに、お見舞いにも行けないなんて……」
「……イヴォン……」

 元は貴族令嬢のイヴォン。悔しそうに表情を歪めているのを見て、私はそっと彼女の隣に座った。

「……ディアは、イヴォンの気持ちを理解してくれると思うわ」
「……そうね。……それで、これはどうやって使うの?」

 イヴォンに尋ねられて、イヤリング型の魔道具の使い方を説明した。魔力を込めるだけで連絡が取れるって、とても使い勝手の良いものよね。そんなことを考えていたら、ジーンが戻って来た。ホクホクと嬉しそうな笑みを浮かべながら。

「ジーン、良いことがあったの?」
「ええ、とっても! レイチェル様と契約を結んできたわ!」
「契約……?」
「魔道具についてよ。この魔道具は絶対に売れるわ。改良案を話し合っていたらつい長くなってしまって……」

 頬に手を添えて楽しげに話すジーンに、私とイヴォンは顔を見合わせて首を傾げる。改良案……? 売れる……? と思考を巡らせていると、ジーンは机に向かってレターセットを取り出した。
 椅子に座り、さらさらと文字を書いていくのが見える。なにを書いているんだろう?

「それじゃあ、ちょっと手紙を出してくるわね」
「い、行ってらっしゃい」

 フットワークの軽さに驚きながらも、ジーンが去っていくのを見送る。ジーン、契約って一体……。ジーンの姿が見えなくなってから、クスクスとイヴォンが笑いだした。

「イヴォン?」
「ジーンったら、相変わらずね」
「相変わらず?」
「マクラグレン侯爵家は、新しいものに目がないの。そしてそれは、娘であるジーンにも受け継がれているようなのよ。ほら、昨日のかんざしとかね?」

 そう言われて少し納得した。私はジーンに見せてもらうまで、髪をまとめるかんざしという物を知らなかったから……。そうか、新しいものが好きなんだ……。

「そしてマクラグレン侯爵のすごいところは、その新しいものを取り入れて世に広めるところなのよね……。流行は作るものだ! って言うのが、マクラグレン侯爵のモットーらしいわよ」
「それは……すごいわね……」

 正直に言えば、私は流行に疎い。流行に敏感な人たちは、それをうまく取り入れたドレスアップをしているようだけど……。

「今年はかんざしを使ったコーデが流行りそうね」
「確かに……」

 昨日のパーティーで、私たちの髪を纏めてくれたジーン。きっとこれからも色々な流行を作っていくんだろうな……。
 ジーンは手紙を出すとすぐに戻ってきたようで、とても生き生きとした顔をしていた。
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