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2章
2章52話(153話)
しおりを挟むアンダーソン家の家系図を見るのは、そんなに大変なことなのかしら……? とカインを見上げると、カインがすっとしゃがんで私と視線を合わせてくれた。
「アンダーソン家の家系図は古いので、取り扱いに注意が必要なのです」
……古い紙に書いているのかな? そう考えていたら、シオドア司祭が頭を抱えていた。
「あの水晶持ち出せって? アンダーソン家の長男の頼みならいけるだろうけど……、なんでまた家系図……」
「……あの、それともうひとつ、頼みたいのですが……」
「もうひとつ?」
「……ファロン家の家系図を、見たいのです」
ぎょっとしたような表情を浮かべるシオドア司祭。そして考えるように目を閉じて口元に手を当てる。それからゆっくりと息を吐き、肩をすくめた。
「……ファロン家の家系図を見て、どうするんだい?」
「どうもしません。ただ、気になるだけです」
シオドア司祭は「う~ん」と言葉を濁す。それから、「掛け合ってみるから、ここで待っていて」と言ってこの部屋から出て行った。……ファロン家の家系図を見るのも、大変なことなのかしら?
私自身、半分とはいえファロン家の血が流れている。
その後、五分もしないうちにシオドア司祭ともう一人、年配の方が水晶を部屋まで来た。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
優しそうな雰囲気の方に声を掛けられて、私はカーテシーをした。
「シオドア、お前は出ていなさい」
「はい、レナルド大司祭」
シオドア司祭は頭を下げて、水晶を置いてから部屋を出ていく。恐らく、アンダーソン家かファロン家の家系図……なのかな? 家系図って紙に書かれているものだと思っていたから、どうして水晶なんだろう? と考えていると、年配の方がにこりと微笑む。
「アンダーソン家の家系図とファロン家の家系図を見たいのは、そちらのお嬢様ですか?」
「は、はい」
「ファロン家の家系図にはロックが掛かっていて、ある程度のところまでしか見られませんが……」
「ロックが掛かっている?」
怪訝そうに表情を歪めるシー兄様。レナルド大司祭と呼ばれた方は、小さくうなずいた。
「はい。ファロン家の出身はなぜかロックされていて……、直系の血族しか見られないようなのです」
「……それなら問題はないな。リザはファロン家の血を引いている」
レナルド大司祭は、「そうですか」と微笑み、水晶に視線を向ける。
「こちらがアンダーソン家の家系図です。そして、こちらがファロン家の家系図。どちらも直系の魔力に反応するように出来ています」
……ああ、だからアル兄様がシー兄様に話をしてくれたのかもしれない。そして、家系図って誰でも見られるわけではないのね。
「それじゃあ、まずはアンダーソン家の家系図から見てみようか」
「はい」
シー兄様の言葉に返事をすると、ソルとルーナがひょっこりと姿を現した。
「ちょっと」
「待った!」
ソルとルーナが魔法を使う。どうやら防音と部屋への入室を拒む魔法のようだ。
「せ、精霊……?」
「精霊!」
「精霊。エリザベスの精霊」
レナルド大司祭が目を瞬かせた。それからソルとルーナをじっと見つめて、気持ちを落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸をした。
「……精霊を見るのは初めてです」
……精霊って、そんなに姿を現さないのかしら……?
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