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2章

2章98話(199話)

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 ジーンは上空にアミュレットを投げ、魔法を使う。弱い攻撃魔法だ。

「えっ!?」

 攻撃魔法を防御するアミュレットの、範囲が違う。一方は狭く、一方は広く……私が目を瞬かせていると、アミュレットはジーンの手の中に戻って来た。

「ね? 防御範囲は広いほうがエリザベスの作ったアミュレット、狭いほうが自作のアミュレット。これだけの違いがあるのよ」
「……精霊が関係しているの?」
「恐らくは。だから、私も精霊と契約したいなと思って!」

 ぱっと表情を明るくするジーンに、首を傾げる。……アミュレットを作るためだけに? 顔に出ていたのだろう。ジーンは小さく眉を下げて、アミュレットをポケットに入れると背中に腕を回して手を組んで、空を見上げた。

「私ね、悔しかったの」
「悔しい……?」
「そう。だって、風の属性があっても、私一人の力ではこの重苦しい魔力を吹き飛ばせなかった。エリザベスは気付いていなかったかもしれないけれど、あの時のエリザベスは、私たちに魔力を貸していた状態だったのよ」

 恐らく、一回目に魔力を吹き飛ばした時のことを言っているのだろう。……私が、二人に魔力を貸していた? 困惑していると、ジーンが「やっぱり気付いていなかったのね」と呟く。

「……だからね、いい機会かもしれないと思ったのよ。精霊学科で精霊のことを学べば、なにか掴めるかもしれないって」

 そう言って今度は私に顔を向けて微笑む。どこか吹っ切れたようなジーンの姿を見て、
私はそっか、と口にしてジーンに近付いて手を差し出す。差し出された手を見て、ジーンが不思議そうに私を見たけれど、ぎゅっと手を握ってくれた。

「精霊学科でもよろしくね」
「こちらこそ」

 そして二人同時にふふっと笑い合った。ジーンも精霊学科にいてくれるのなら、なんだか心強い。
 ……ソフィアさん、……あ、ソフィア先生って呼ばないといけなくなるのかな?

「それじゃあ、部屋に行きましょうか。王城はどうだった?」
「うん、あのね、やっぱりディアのことを気に掛けているみたいで――……」

 王城でのことを話しながら部屋に向かう。相変わらず、重苦しい魔力を感じる。そもそも、こんなに魔力を充満させて身体は大丈夫なんだろうか……。これだけの濃い魔力で寮内を満たすには、かなりの魔力を放出しないと出来ないと思うのだけど……。一体、なんのためにこんなに魔力を使っているのだろう……?
 謎しかないわ……。
 部屋に戻るとイヴォンの姿はなかった。どうやら、平民部門にエントリーしてくると街へ向かったらしい。

「張り切っているのね、イヴォン」
「好きな人と結ばれるためだもの」
「……ちなみに、ジーンは気になる人っていないの?」

 私が尋ねると、ジーンは目を丸くした。そして、口角を上げて目尻を下げ、私の腕に抱き着いて来た。
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