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2章
2章101話(202話)
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「それと、やっぱりレーベルク王国の踊りに興味があるみたい」
「……そうなの。……では、わたくしはレーベルク王国の踊りを、リザたちに教えれば良いのかしら? それとも……両国の伝統的なダンスを取り入れて、新しいダンスを作る?」
わたしたちは思わず目を瞬かせた。そして顔を見合わせて、首をこてんと横に傾げて尋ねる。
「そんなこと出来るの?」
「……多分?」
「ふむ、良い機会かもしれないね。社交ダンスの授業もあるし、創作ダンスの授業も学年が上がると必修になるから、その前に体験してみるという手も悪くないだろう」
レイチェル様にそう言われて、私たちは思わずレイチェル様をじっと見た。……今年、創作ダンスの授業なんてなかったから……。学年が上のイヴォンとレイチェル様は経験しているということよね……。創作ダンスって、想像がつかないわ……。
「私は平民部門だから、課題は普通に陛下が……いや、もしかしたら王妃殿下かもしれないけれど、選んだダンスを予選で踊るわ」
「どんなダンスなの?」
「『マーガレットの祈り』ってダンス。この国ではかなり人気よ」
……全然知らない……。それが顔に出ていたのだろう。座っていたレイチェル様とイヴォンが立ち上がり、いきなり芝居がかった声でレイチェル様が天井へと手を伸ばす。
「『ああ、愛しいマーガレット! 君を国に残す僕を許しおくれ。この戦いが終わった後、きっと君を迎えに行くから――……』」
何事かと思ったけれど、レイチェル様は真剣な表情をして芝居をしている。……マーガレットの祈り、はお芝居だったのかしら?
「『――あれから幾年の月日が経っても、帰ってこない彼。今日も彼のために、祈りのダンスを捧げましょう――……』」
そう言って、たんっと軽くジャンプしてくるりと一回転、その動きの鮮やかなこと! ぱちぱちと拍手をすると、イヴォンとレイチェル様は「これが始まりだよ」と笑った。
「元はミュージカルなのよね。戦場へ行った婚約者を待つ女性の物語。小さい頃、両親に連れられて見たことがあるの」
「そうだったの……。イヴォンにとって、とても思い出深いミュージカルなのね」
「……そうね、その通りよ。これも運命のいたずらなのかしら?」
クスクスと笑うイヴォンに、レイチェル様が少し羨ましそうな視線を向けていた。その表情があまりにも切なそうに見えて、どうしたのだろうと考えているとレイチェル様がイヤリングを取り出した。どうやら、誰からか連絡が来たようだ。
「慌ただしくてすまないね。また誘ってくれ」
そう言って、残っていたお茶をぐいっと飲み干してから出て行った。その姿を見送って、改めて舞姫のことを話し合ったり、『マーガレットの祈り』のことを聞いたりと、ダンスの話に夢中になった。もっと話したかったのだけど、時間は無限ではないのよね……。授業の予習もあるし……。
「中々濃い一年になりそうね」
「……もうなっている気がするわ」
「……確かに」
……もう少しすれば、ソフィアさんがアカデミーに来る。……その時、ジェリーはどういう反応をするのかしら。そして、ソフィアさんはどうするのだろうか。……そんなことを考えながら、授業の課題と予習を先に済ませておく。やっておけば心に余裕が生まれるし、ね。
それに、イヴォンやジーンと一緒に居られるこの時間がとても大切だから、大事にしたい。
もしも、イヴォンがハリスンさんと結婚することになれば、アカデミーはどうするのか……聞きたいけれど、聞くのが怖い。教えてくれるとは思うのだけど、そこまで踏み入ってしまってもよいのか悩むところよね……。だから、私は私が出来ることをしよう。イヴォンの背中を、いつでも押せるように。……そう言えば、セリーナ先生もアカデミーで見初められたのよね。……こういうパターンって、もしかして多いのかしら……?
「……そうなの。……では、わたくしはレーベルク王国の踊りを、リザたちに教えれば良いのかしら? それとも……両国の伝統的なダンスを取り入れて、新しいダンスを作る?」
わたしたちは思わず目を瞬かせた。そして顔を見合わせて、首をこてんと横に傾げて尋ねる。
「そんなこと出来るの?」
「……多分?」
「ふむ、良い機会かもしれないね。社交ダンスの授業もあるし、創作ダンスの授業も学年が上がると必修になるから、その前に体験してみるという手も悪くないだろう」
レイチェル様にそう言われて、私たちは思わずレイチェル様をじっと見た。……今年、創作ダンスの授業なんてなかったから……。学年が上のイヴォンとレイチェル様は経験しているということよね……。創作ダンスって、想像がつかないわ……。
「私は平民部門だから、課題は普通に陛下が……いや、もしかしたら王妃殿下かもしれないけれど、選んだダンスを予選で踊るわ」
「どんなダンスなの?」
「『マーガレットの祈り』ってダンス。この国ではかなり人気よ」
……全然知らない……。それが顔に出ていたのだろう。座っていたレイチェル様とイヴォンが立ち上がり、いきなり芝居がかった声でレイチェル様が天井へと手を伸ばす。
「『ああ、愛しいマーガレット! 君を国に残す僕を許しおくれ。この戦いが終わった後、きっと君を迎えに行くから――……』」
何事かと思ったけれど、レイチェル様は真剣な表情をして芝居をしている。……マーガレットの祈り、はお芝居だったのかしら?
「『――あれから幾年の月日が経っても、帰ってこない彼。今日も彼のために、祈りのダンスを捧げましょう――……』」
そう言って、たんっと軽くジャンプしてくるりと一回転、その動きの鮮やかなこと! ぱちぱちと拍手をすると、イヴォンとレイチェル様は「これが始まりだよ」と笑った。
「元はミュージカルなのよね。戦場へ行った婚約者を待つ女性の物語。小さい頃、両親に連れられて見たことがあるの」
「そうだったの……。イヴォンにとって、とても思い出深いミュージカルなのね」
「……そうね、その通りよ。これも運命のいたずらなのかしら?」
クスクスと笑うイヴォンに、レイチェル様が少し羨ましそうな視線を向けていた。その表情があまりにも切なそうに見えて、どうしたのだろうと考えているとレイチェル様がイヤリングを取り出した。どうやら、誰からか連絡が来たようだ。
「慌ただしくてすまないね。また誘ってくれ」
そう言って、残っていたお茶をぐいっと飲み干してから出て行った。その姿を見送って、改めて舞姫のことを話し合ったり、『マーガレットの祈り』のことを聞いたりと、ダンスの話に夢中になった。もっと話したかったのだけど、時間は無限ではないのよね……。授業の予習もあるし……。
「中々濃い一年になりそうね」
「……もうなっている気がするわ」
「……確かに」
……もう少しすれば、ソフィアさんがアカデミーに来る。……その時、ジェリーはどういう反応をするのかしら。そして、ソフィアさんはどうするのだろうか。……そんなことを考えながら、授業の課題と予習を先に済ませておく。やっておけば心に余裕が生まれるし、ね。
それに、イヴォンやジーンと一緒に居られるこの時間がとても大切だから、大事にしたい。
もしも、イヴォンがハリスンさんと結婚することになれば、アカデミーはどうするのか……聞きたいけれど、聞くのが怖い。教えてくれるとは思うのだけど、そこまで踏み入ってしまってもよいのか悩むところよね……。だから、私は私が出来ることをしよう。イヴォンの背中を、いつでも押せるように。……そう言えば、セリーナ先生もアカデミーで見初められたのよね。……こういうパターンって、もしかして多いのかしら……?
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