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2章

2章106話(207話)

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「アル兄様は、ディアのことが気になるのですか?」
「いや、別に。留学生って大変そうだなぁとは思うけど。……ただ、舞姫、引き受けてくれたんだろう? 無理させてないかと……」
「大丈夫ですよ、今はみんなとどんな踊りにしようか考えています」
「それならいいけど……。どうせなら、たくさんの思い出をアカデミーで作って欲しいよね」
「それを言うなら、僕らもじゃない? アカデミーに在籍出来るのは限られているのだから」

 確かに、とアル兄様がうなずいた。アル兄様はアンダーソン家の後継者だし、ヴィニー殿下は王族だ。アカデミーでどのくらい過ごせるのか、あらかじめ伝えられていたのかもしれない。
 研究職の人たちはアカデミーに残る……という話は聞いたことがあるけれど……。……私がアカデミーにいる間に、アル兄様もヴィニー殿下も卒業しちゃうのよね。

「みんなでたくさん、思い出を作ろうね」
「はい!」
「……で、アルは舞踏会のパートナー決めたの? 言っておくけどリザはダメだよ」
「さすがに妹をパートナーに選ばないよ……って、まさか!」
「入学祝いのパーティーの時に、僕はもう申し込んだからね」

 がくりと肩を落とすアル兄様に、私は声を掛けようか悩んだけれど、ちらりと見たヴィニー殿下が可笑し気にクスクスと肩を震わせて笑っているのを見て、とりあえずお茶を飲むことにした。

「まぁ、舞踏会までまだ時間はあるし、ゆっくり決めたら?」
「……でもなぁ、ギリギリだとパートナーって大体埋まっているんだよね……。去年はウェイターだったから良かったものの……」

 アル兄様とヴィニー殿下のウェイター姿は、ちょっと興味があるけれど……。言ったら早速とばかりに服を着てくれそうな気がして、軽々しく口にして良いものかと悩んでしまう。でも、絶対に似合うと思うのよね……。……だってふたりとも格好良いもの。そんなことを考えてながらお茶を飲んでいると、次の授業の時間が迫って来た。

「それじゃあ、私は授業に向かいます」
「途中まで一緒に行くよ」

 その申し出をありがたく受けて、次の授業を受けるために教室に向かう。さすがに校舎には入らなかったけれど、すぐにソルとルーナがぴょこんと現れて、私を教室までガードしてくれた。……ルーナの後ろ姿って可愛いのよね……。もちろん、前から見ても可愛いのだけど、ぴょこん、ぴょこんと跳ねている姿はやっぱり可愛い。ソルも可愛い。たまに甘えるように頬にすりすりとして来ると、余計に可愛いなって思ってしまう。
 ……みんなにも、自分にぴったりな精霊が見つかると良いな。

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