162 / 353
3章
3章24話(234話)
しおりを挟む建国祭三日目、早朝から目が覚めた私は、ジルとディアを起こさないように、そっとから抜け出すとテラスへと出た。早朝の風を受けて、目元を細めた。頬を撫でるように吹く風に、私は深呼吸を繰り返した。
「リザ、もう起きたの?」
「おはよう、ディア、ジーン。起こしちゃった?」
「おはよう。いいえ、目が覚めたの」
テラスへ抜ける扉が開く音がして、私が振り返るとディアとジーンが私を挟むように隣に立った。
「今日も良い天気のようね」
ジーンが空を見上げてそう言うので、私たちも空を見上げた。空は青く、雲ひとつない。こんなに天気が良いと心地が良いものね、と心の中で呟く。しばらく三人でホテルからの風景を楽しんで、身支度を整えた。そして、私がふたりの手を取り、
「今日もがんばろうね!」
と、笑顔で言うと、ふたりは目を一瞬大きく見開いてからふわっと微笑んだ。そしてふたりは、
「もちろん!」
――声を揃えて、そう言ってくれた。
朝食を摂り、今日はステージの時間ギリギリまで三人でホテルに居ることにして、いろいろなことを話した。私は昨日の決意をふたりに話した。
「そうね、エリザベスはエリザベスだもの」
「前世と言うことに少し興味はあるけれど……、過去は過去、今は今、だものね」
ふたりとも私の意見を尊重してくれた。良い友人が出来たなぁ、と心が温かくなるのを感じて、私は表情が緩むのを感じた。
「私は私だものね」
「ええ。さぁ、そろそろ行きましょうか」
ジーンが立ち上がり、私たちも彼女に続くようにホテルを後にした。
控室まで向かい、控室でダンスの衣装に着替えてソルとルーナを呼びだした。私の影からぴょこんと出て来る精霊たちに話し掛ける。
「ねぇ、ソル、ルーナ。これをつけて見てくれない?」
「……これは?」
「衣装を用意する時に、一緒に作ってもらったの。あなたたちがステージに上がるかどうかはお任せされていたから、念のために。……昨日、ステージに出てきてくれたでしょう?」
――そう、実は精霊たちの衣装も用意していたの。ソルとルーナに合いそうな布や宝石を選ぶのも楽しかった。
それに――……、マザー・シャドウとの決着後、ソルもルーナもどこか上の空になっていたので、気になってもいたから……。
少しでも、ソルとルーナが気に入ってくれると良いな、と思って用意したのだけど……。ソルとルーナは顔を見合わせて、それからずいっと私に頭を押し付けるように動かす。
私はふふ、と小さく笑ってソルに小さなシルクハットを、ルーナにピンク色のケープを羽織らせた。シルクハットにはサファイア、ケープにはルビーが飾られている。
「まぁ、なんて愛らしいのかしら……」
うっとりとしたように、頬に手を添えてディアが呟く。
ソルもルーナも満更ではないように……むしろ、嬉しそうに鏡をじっと見ていた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
8,762
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。