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3章
3章23話(233話)
しおりを挟むまだ時間があったから、イヴォンとハリスンさんを控室に招いて昨日と今日のことを詳しく話した。話していくうちにみんな神妙な表情を浮かべた。
私たちの話を聞いていたハリスンさんは後頭部に手を置いて「なんというか……、聞いていて良かったのかな?」と尋ねてきたので、私はうなずいた。
「アル兄様たちにも話そうと思っていたから……。もしもアル兄様たちに会ったら、私から話があると伝えてくれると助かります」
「わかった。後で合流する予定だったから、その時に伝えるよ」
「ありがとうございます」
アル兄様たちにも、今日のことを伝えるべきだと思った。話せばきっと心配をかけてしまうだろうけれど、これ以上の心配をかけないためにも。シー兄様にも伝えたいけれど、アル兄様に話せばきっとシー兄様にも伝わると思う。
「前世のことはともかくさ、舞姫たちが『現在』大切なのはステージを成功させることだろ? 『現在』が続いて『未来』になるんだし」
ハリスンさんの考えに、私は同意のうなずきを返す。……確かに過去も大切かもしれないけれど、ここに居るのはハンフリーさんの言う『めーちゃん』ではなく『エリザベス・アンダーソン』だ。私は、私の『現在』を大切にしたい。
ぎゅっと胸元で手を組む私に、ジーンとディアがそっと頭を撫でた。
「とりあえず、そろそろ準備もしないといけないでしょ? 私たちはこれで……。昼のステージ、楽しみにしているわね」
私たちに対して明るい声でイヴォンがウインクをしながら言葉を口にした。私たちはうなずいて、控室から去っていくふたりに対して、もう一度「本当にありがとう!」と声を掛けると、彼女たちはひらりと手を振った。
「……とりあえず、ステージを成功させないとね」
ジーンの言葉に、私たちはうなずいた。
話を聞いてもらって、大分肩の荷が下りたのか、昼のステージは伸び伸びと踊ることが出来た。多分、見てくれているだろうイヴォンたちにありったけの感謝の気持ちが伝えたい。
困惑していたけれど、私……どう向き合おうか決めたわ。
その決意を読み取ったのか、ソルとルーナが魔法を使った。柔らかく吹く風が花弁を舞い散らす。――私の決意を、応援してくれているのだろう。舞い散った花弁が観客の元に届く。わぁ、と歓喜の声を聞いて、私は笑みを深めた。
ダンスが終わりカーテシーをすると、盛大な拍手が聞こえた。ソルとルーナが私に向かって飛び込んでくるのを抱きとめて、ディアとジーンが精霊たちの頭を撫でる。そしてソルは翼を広げ、ルーナは片手を上げて手を振った。
――愛らしい姿に、私はぎゅっとソルとルーナを抱きしめた。
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