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3章

3章33話(243話)

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「アル兄様は、自分が当主になることに何か不安が……?」

 私が眉を下げて尋ねると、くしゃりと私の頭を撫でて緩やかに首を左右に振った。だけど、アル兄様は何かを耐えているように見えて、思わずぎゅっとアル兄様の手を握った。

「リザ?」
「私に出来ることなら、何でも話してくださいね!」

 私がそう言って微笑むと、アル兄様は目を瞬かせて、それからぷっと吹き出した。アル兄様がどうして笑い出したのかがわからなくて、おろおろとしていると、アル兄様は「ありがとう」と心底嬉しそうに笑った。

「……僕も強くならなくちゃ……」

 小さな声で呟かれた言葉は、私の耳には届かなかった。
 そっと私の手を握り返して、アル兄様はその手をヴィニー殿下に渡すように動かした。ヴィニー殿下は私の手を取って、小さく微笑む。それからは、最初と同じようにシー兄様とディア、アル兄様とジーン、ヴィニー殿下と私、のペアで歩いた。
 普段、こういう場所に行かないから、冒険をしている気持ちになった。いろいろと道が分かれていて迷路のようにも見えた。きょろきょろと辺りを見渡していると、誰かが屋根の上に立っているのが見えた。とても身体能力が高いのか、屋根の上を軽々と走り、跳び、まるで踊っているようだった。

「……何をしているのかしら……?」
「……屋根の上であんなに飛び跳ねる人、初めて見た……」

 思わずと言うように言葉がぽろりと落ちた。それをヴィニー殿下が拾い、私が見ていたほうへと顔を向けて、屋根の上を走っている人が居るのを見つけると、その身体能力に驚かされたように目をみはる。
 立ち止まった私たちに気付いたジーンたちが、「どうしたの?」と声を掛けてきたので、私とヴィニー殿下は視線を交わし、それから揃って屋根を走り回っている人を指した。
 みんなが屋根を見上げて、屋根の上で走り回ったり、ぐるんと回転しているのを見て、

「え、え?」と困惑したようなディアの声が聞こえた。
「……でも、どうして屋根の上を走り回っているんだ……?」

 シー兄様が怪訝そうに眉をひそめてその人を見ていた。私たちが見ていることに気付いたのか、おーい、とばかりに片手を大きく振って……こちらに向かって来た!
 私たちが驚いていると、その人はぴょんぴょんと跳ねるように屋根から屋根へと飛び移り、屋根の上からこちらへと飛び降りた!

「あ、あぶな――……っ!」

 くるん、と三回転くらいして、スタッと着地した。

「奇遇だね、めーちゃん! こんなところで会えるとは思わなかったよ」

 そう言って、にっこりと笑うハンフリーさんに、ジーンとディアが私を庇うように前に出た。
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