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3章
3章35話(245話)
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ディアも恐る恐ると言うようにボールを空中に投げた。そして、ハンフリーさんやシー兄様を真似るように手を動かしていた。最初のほうはタイミングが掴めないようでボールを落していたけれど、数回チャレンジすると出来るようになった。二つのボールをゆっくりと、回していると「そうそう、筋が良いね」とハンフリーさんが褒めた。
「そ、そうかしら……? うふふ」
心なしか嬉しそうだ。……それにしても、なんだか不思議な気分だわ。
アル兄様とヴィニー殿下は、ハンフリーさんのポケットについて話していた。
ジーンはそんな彼らを見て肩をすくめて私へと腕を絡めて来た。
「……なんだかすっかりあの人のペースね」
「……そうね……」
ハリスンさんはシー兄様とディアにコツを教えていて、気が付いたらシー兄様が持っているボールが一つ増えて四つのボールを器用に回していた。……あんなにあっさりと四つのボールを扱えるようになるなんて、と感心しているとディアが「わたくしは二つで精いっぱいですわ」と言いながらも楽しそうにボールを空中に投げていた。
「あのポケット、空間魔法をどうやって付与したと思う?」
「うーん、一番確実なのは、このくらいの布に出来るだけの魔法陣を書いて――……」
アル兄様とヴィニー殿下は考え込むように一度顎に手を添えてから、視線を合わせて様々な憶測を話し合っていた。……ヴィニー殿下は魔術を好きだということは知っていたけれど、それと同じくらい、アル兄様も魔術が好きなのかしら……?
そう考えこんでいると、ピィーッと言う音が聞こえて、それを聞いたハリスンさんが表情を崩した。
「あ、やべ。そろそろ戻らなくちゃ。それじゃあ、めーちゃんたち、良い夜を!」
どうやらサービスデー終了の合図だったようだ。ハンフリーさんはシー兄様とディアからボールを回収してポケットにしまい込み、家の壁を走って屋根へ。そして、私たちに向けて大きく手を振ると、一目散に去っていった。思わず口をぽかんと開けた私たち。ジーンと視線が合って、「……嵐のような人ね」と私にだけ聞こえるように話すジーンに、私は「本当に」と同意のうなずきを返した。
……良かった、何も言われなくて。相変わらずハンフリーさんの中では私は『めーちゃん』なのが気にかかるけれど……。気にしていても仕方のないこと、よね。
「それにしても、シー兄様すぐに四つのボールを扱えるなんてすごいです!」
「本当に! わたくし、実際にやってみて難しさが身に沁みましたわ。ですが、いつか三つのボールにもチャレンジしてみたいです!」
興奮したようにディアが自分の両手をぎゅっと握った。シー兄様はそんなディアを見て、何かを思いついたように手を叩く。
「そ、そうかしら……? うふふ」
心なしか嬉しそうだ。……それにしても、なんだか不思議な気分だわ。
アル兄様とヴィニー殿下は、ハンフリーさんのポケットについて話していた。
ジーンはそんな彼らを見て肩をすくめて私へと腕を絡めて来た。
「……なんだかすっかりあの人のペースね」
「……そうね……」
ハリスンさんはシー兄様とディアにコツを教えていて、気が付いたらシー兄様が持っているボールが一つ増えて四つのボールを器用に回していた。……あんなにあっさりと四つのボールを扱えるようになるなんて、と感心しているとディアが「わたくしは二つで精いっぱいですわ」と言いながらも楽しそうにボールを空中に投げていた。
「あのポケット、空間魔法をどうやって付与したと思う?」
「うーん、一番確実なのは、このくらいの布に出来るだけの魔法陣を書いて――……」
アル兄様とヴィニー殿下は考え込むように一度顎に手を添えてから、視線を合わせて様々な憶測を話し合っていた。……ヴィニー殿下は魔術を好きだということは知っていたけれど、それと同じくらい、アル兄様も魔術が好きなのかしら……?
そう考えこんでいると、ピィーッと言う音が聞こえて、それを聞いたハリスンさんが表情を崩した。
「あ、やべ。そろそろ戻らなくちゃ。それじゃあ、めーちゃんたち、良い夜を!」
どうやらサービスデー終了の合図だったようだ。ハンフリーさんはシー兄様とディアからボールを回収してポケットにしまい込み、家の壁を走って屋根へ。そして、私たちに向けて大きく手を振ると、一目散に去っていった。思わず口をぽかんと開けた私たち。ジーンと視線が合って、「……嵐のような人ね」と私にだけ聞こえるように話すジーンに、私は「本当に」と同意のうなずきを返した。
……良かった、何も言われなくて。相変わらずハンフリーさんの中では私は『めーちゃん』なのが気にかかるけれど……。気にしていても仕方のないこと、よね。
「それにしても、シー兄様すぐに四つのボールを扱えるなんてすごいです!」
「本当に! わたくし、実際にやってみて難しさが身に沁みましたわ。ですが、いつか三つのボールにもチャレンジしてみたいです!」
興奮したようにディアが自分の両手をぎゅっと握った。シー兄様はそんなディアを見て、何かを思いついたように手を叩く。
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