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4章
4章24話(324話)
しおりを挟む「おかえりなさい、エリザベスお嬢様」
と、涙声で言うリタに、私はそっとリタの手に触れて微笑みを浮かべ、「ただいま」と同じように涙声で言葉を紡ぐ。
「……ねえ、リタ。あの光の柱はもうないのよね?」
リタはいつ目覚めてもいいように、ずっと私についていてくれたみたいで、私が目覚めたときにいなかったのは、水を取りに行っていたらしい。
「お嬢様は戻ってきてから一週間、眠り続けていました」
「一週間も!?」
それで身体が重かったのね……。しばらく動いていなかったから。
リタに連れられてお風呂に入り、身支度を整える。リタがお父様たちに私が目覚めたことを伝えると、みんなでこの部屋に来そうだったから、食堂に集まることを提案してくれたらしい。
私がお腹空いているだろうというリタの配慮(はいりょ)だ。
確かに、お腹は空いている気がする。でも、今は――あのあと、なにがあったのかを知りたい。
リタと一緒に食堂に向かい、扉を開けてもらうと、「リザ姉様!」と一番に駆けつけてきたのはエドだった。ほんの少し離れていただけなのに、エドの背が伸びているような気がするのは気のせいかしら?
私に抱きついてきたエドを抱きしめ返して、ぐす、と肩を震わせるエドの背中を、ぽんぽんと優しく叩いた。
「エリザベス、目が覚めたのね」
安堵したように微笑むマリアお母様。少し、やつれているような気がする。
ジャックお父様、シー兄様、そしてアル兄様も私に近付く。ブランドン様とアミーリア様の姿はなかった。私はそっとエドから離れて、家族を見渡して頭を下げた。
「あの、ご心配をおかけしてすみません。アル兄様、シー兄様……私が意識を失ってから、どうなったのでしょうか?」
下げていた頭を上げて、シー兄様とアル兄様を見つめる。彼らは顔を見合わせて、少し悩むように「……ええと」と言葉を濁す。
シー兄様が私の肩に手を添えて、「その前に、リザは一週間なにも口にしていないから、なにか食べなきゃ」と優しく言われて、みんなが大きくうなずいた。
それぞれ席につく。私の前に置かれたのは、野菜がくたくたに柔らかくなるまで煮こまれたミネストローネだった。
……懐かしい。どうやらみんなはもうすでに食事を終えていたらしく、それぞれお茶を飲んで、私が食べるところを眺めていた。
こう注目されるとなかなか食べにくい。そのことに気付いたのか、お母様がこほん、とわざとらしく咳払いをすると、さっとみんなが私から視線を逸らした。
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