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4章
4章23話(323話)
しおりを挟む「ヴィニー殿下、どうして……!?」
目を見開いて彼を見ると、ヴィニー殿下は真剣な表情を浮かべていた。私の肩に手を置いたまま、杖を握る。
「今は、集中して。足りない魔力は僕から補って。シェイド、きみの魔力もリザに」
と、ヴィニー殿下がシェイドに声を掛ける。シェイドはヴィニー殿下の背中からこちらを戸惑うように見ている。そんなシェイドに、ヴィニー殿下は「シェイド」と優しく精霊の名を呼ぶ。
「……わかった」
複雑そうに了承するシェイド。……それも、そうだろう。シェイドはヴィニー殿下の精霊なのだから。それでも、足りない魔力を足してくれることはありがたい。
「僕がきみの力に合わせる。だから、リザ。きみはきみの好きなようにやるんだ」
「ありがとうございます、ヴィニー殿下」
――心強かった。ヴィニー殿下が来てくれて、本当に嬉しかった。微笑みを浮かべてもう一度神経を集中させる。ゆっくりと深呼吸を繰り返し、蒼い火を出す。
「どうか、安らかな眠りを――……!」
ソルとルーナ、ジェリーとジュリーの魔力を使い、足りない魔力をシェイドとヴィニー殿下からもらった。――なんて温かくて、大きな魔力なのだろう。
――カナリーン王国の人々の魂を、天へ――……
そう願いながら最大限に魔力を引き出す。蒼い火は光の柱を飲み込むように渦を巻き、――やがて、蒼い火がすべてを飲み込み、天へと昇って行った。
蒼い火がすべての人々の魂を包み込み、天へと向かったのだろう。ありがとう、と、やっと眠れる、という声が聞こえた。
――終わった……?
ホッとしたのと同時に、魔力を使い果たした私たちは、空中に浮いていることが出来なくて――
「リザ! ヴィー!」
と叫ぶアル兄様の声を聞きながらも、私たちはそのまま気を失ってしまった――……。
☆☆☆
それからどのくらいの時間が経過したのかわからない。気が付けば、アンダーソン邸の自室のベッドで横になっていた。
目を開けて最初に思ったのは、見覚えのある天井だ、だった。
ベッドからむくりと起き上がり、小さく「ここは……、私の部屋、よね」と呟く。
ただ、ベッドの上には私ひとりだけだった。ソルもルーナもいない。
「ソル? ルーナ? ヴィニー殿下やみんなは、どうなったの……?」
ベッドから抜け出して、もう一度ソルとルーナの名を呼ぶ。普段なら呼びかけるとすぐに現れてくれるのに。でも、まったく精霊たちの気配を感じない!
あの光の柱は消滅したはず。だから私は……ここにいるのよね?
――みんなはどうなったの?
ぐっと拳を握ってパタパタと足音を立てて廊下に出ようとしたら、その前に扉が開いた。ぱちくり、とリタが目を瞬かせ、それから涙をぶわっと溢れさせた。
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