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4章
4章22話(322話)
しおりを挟む自身の魔力が杖に集まっていく。それを感じ取り、ジェリーとジュリーに声を掛ける。
「ジェリー、ジュリー、私にふたりの魔力を注いでちょうだい!」
力強い声に、彼女たちは同時にうなずき、魔力を注ぎだす。それと同時に魔物が姿を見せた。シー兄様とブランドン様が剣を抜き、魔物に向かって行く。アミーリア様も弓で応戦していた。
ヴィニー殿下とアル兄様、ディアが魔法陣を風に乗せるように飛ばしていた。光の柱に魔法陣が張り付いていく。風を操っているのはヴィニー殿下のようだ。すべての魔法陣が光の柱に張り付いたのを見て、ヴィニー殿下が私を見る。
視線を交わしてうなずき合い、私は「光の中へ!」と杖を強く握り声を上げる。私の身体がふわりと浮き上がり、銀色の光に包まれる。迷うことなく光の柱に入って行く。
「リザ……!」
アル兄様が手を伸ばしたのがわかった。それを制したのはヴィニー殿下だった。なぜだろう? 月の女神の力なのかもしれない。光の柱の中でも、ヴィニー殿下たちの姿や声がわかる。
「今の僕らに出来るのは、彼女を信じて待つことだよ、アル。――それに、魔物も倒さなきゃ。リザが戻って来たときに、魔物がいたら台無しだ」
集まって来た魔物たちと戦い始め、ジェリーとジュリーはその場で祈るように手を組んで、私に魔力を届けている。その近くにはディアがいて、彼女たちを守るように魔法を使っていた。
――光の柱の中では、様々な声がハッキリと耳に届いた。そのどれもが、苦痛や救いを求める声だった。
「……ソル、ルーナ」
名前を呼ぶと、精霊たちが姿を見せた。精霊たちは心配そうに私を見ている。私は柔らかく微笑み、ソルとルーナに声を掛ける。
「この人たちを、解放したいの。……私に力を貸して?」
そう言葉を紡ぐと、ソルとルーナは「解放……」と呟く。少しの沈黙。でも、すぐに強い意志を宿した瞳で私を見る。
「ソルとルーナにも罪はある」
「ただ見守るしかしなかったという、罪が」
「だから」
「ソルもルーナも、カナリーン王国の人たちを」
「解放したい」
そう言って、精霊たちは私に魔力を注ぐ。杖をぎゅっと握って、目を閉じた。
「……あなたたちが、安らかに眠れますように――……」
祈りの言葉が自然と口から出た。目を開けて、杖の先端に魔力を集める。すると先端から、淡く蒼い火が出てきた。
蒼い火は光の柱を上から下まで包み込むように広がる。じりじりと魔力が削られていくのを感じ、「――ッ……!」と、耐えるように杖を握りしめる。
――このまま、カナリーン王国の人々の魂を解放出来ないの――?
魔力が尽きていくのを感じ、そんなことを考えてしまい涙と汗が滲む。イヤだ。絶対に。でも、このままじゃ――……!
「諦めるのはまだ早いよ、リザ」
肩に手を置かれて、驚いた。振り返るとそこには――ヴィニー殿下が、いた。
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