258 / 353
4章
4章30話(330話)
しおりを挟むヴィニー殿下の話を聞いて、私は目を丸くした。
「……そんなことが、可能なのですか?」
「可能だから、きみに魔力を与えられたんだよ」
ふふ、と笑うヴィニー殿下に、あのときのことを思い出す。確かにヴィニー殿下の魔力は私の魔力によく馴染み、心強かった。……違うわね、ヴィニー殿下が傍に居てくれた。それがとても――心の支えになった、が正解かもしれない。
そっと胸元に手を置いて、目を伏せる。
「リザ。浄化の火はまだ使えそう?」
「……試してみます」
あのときの感覚を思い出しながら、手のひらを上に向けて試す。するとぽぅ、と淡く輝く蒼い火が浮かび上がった。――使えるんだ、と自分で驚いた。
「……使えたね」
「……使えましたね」
魔力の操作をやめると、すぐに火は消えた。ヴィニー殿下は微笑んで、私を見つめる。
「それはきっと、きみにしか使えない、きみだけの魔法だ」
「……私、だけの……」
きゅっと拳を握って、ゆっくりと言葉を紡ぐ。なんだか不思議な感じだわ。ヴィニー殿下がふと私の首元に視線を向けて、ペンダントをつけていないことに気付き、
「アミュレットは壊れちゃった?」
首を傾げて尋ねた。小さくうなずくと、「そっか。だからほんの少し魔力が残っていたのかな」と口元に手を当てて考え出した。
「――そういえば、秘薬の小瓶ってまだある?」
「あ、あります。これです」
小瓶を手渡すと、ヴィニー殿下は興味津々に持ち上げ、中を確認するように片目を閉じて見つめる。
「これを解析するにはカーラの力が必要かなぁ」
「ヴィニー殿下、絶対に口にしないでくださいね。私が口をつけていますし、それに――」
……『血の記憶』で見たことを説明するときに、秘薬のことは口にしなかった。それを説明するのは、気恥ずかしさが勝ったから。
でも、このままだとヴィニー殿下は残った数滴の秘薬を飲みそうだから、慌てて止めた。
「それに?」
「……その、秘薬の使い方が……」
私が小声で秘薬の使い方を説明すると、ヴィニー殿下の顔が真っ赤になった。……私の顔も真っ赤になっていると思う。だって、頬が熱いもの……。
黙り込む私たち。その静寂を破ったのは、ノックの音だった。
びくっと肩を跳ね上げさせる私とヴィニー殿下。互いに顔を見合わせて、眉を下げて笑い合った。
「マリアお母様とクリフ様に待ってもらっていたんです。クリフ様、ずっとヴィニー殿下の傍から離れなかったそうですよ」
「――クリフ様が?」
意外そうに目を丸くするヴィニー殿下に、私は笑みを浮かべて扉へ近付いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8,762
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。