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4章
4章64話(364話)
しおりを挟む自室に入ると、ソルとルーナが真っ先にベッドに向かった。ぽす、と軽い音を立ててベッドに着地して、満足げにすりすりと頬をシーツに擦りつける。
「ふかふか~」
「疲れただろう、エリザベスも寝たほうが良い」
「うん、でもその前に、お風呂に入るね。ソルとルーナは寝ていていいよ」
私がそう言うと、ソルとルーナは互いに顔を見合わせて、ふわぁ、と大きな欠伸をして目を閉じた。
お風呂に入るためにこっそりと浴室へ向かう。魔法でお風呂が沸かせるから、リタたちを起こす必要もないだろう。
浴槽に水と火の魔法でお湯をたっぷりと用意して、服を脱いでお湯に浸かる。あまりの心地良さにはぁ、と息を吐いた。
そっと、唇を指でなぞる。今でも、ヴィニー殿下の唇の柔らかさを思い出せて、顔が熱くなった。ドキドキと鼓動が早くなっていくのを感じて、顔を両手で覆う。
あんな風に交わり合った魔力が心地よいものなんて、知らなかった。
ひとつになるのではなく、個々の結びつき。まるでリボンを結ぶような……そんな感覚だった。ヴィニー殿下、そんなこともできるのね……。魔力の使い方は、絶対に彼のほうが上だ。
「……私もがんばらなきゃ」
ヴィニー殿下の隣にずっと立っていられる淑女になるには、どうしたらいいかしら? 身体も心も成長して、彼を支えられるようになりたい。
だって、ずっと支えてもらっているから。
「……アル兄様たちにも、支えてもらっているよね」
目を閉じれば簡単に顔が浮かぶ。それくらい、私はアンダーソン家の一員として、家族に愛された。心が満たされたことを、感じている。
両手を顔から胸元に移動させて、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。今は、身体を休めよう。
私にはまだ、たくさんの時間が残っているから。
眠くなってきたので、全身を洗ってお風呂から上がる。髪を乾かすのもネグリジェに着替えるのもひとりで出来る。アカデミーではそれが普通だから。こうしてひとりで着替えるのを覚えていくらしい。とはいえ、貴族がひとりで着替える機会なんて滅多にないだろうけれど。
自室に戻ると、ベッドで丸くなって寝ているソルとルーナの姿が見えて、ふふっと小さく口角を上げた。
この当たり前だった光景が愛おしい。
私は眠っている精霊たちを起こさないように、そうっとベッドに潜り込んで目を閉じた。
傍にいる精霊たちの気配を感じながら眠るのは久しぶりで、ただただ愛しい気持ちが溢れた。眠っているはずの精霊たちが、私に近付いてきたことは、きっと気のせいではないだろう。
眠気はあっという間に訪れて、ぐっすりと眠ることが出来た。
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