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4章
4章84話(384話)
しおりを挟むそれから数日後、カーラ様の言う通りにお腹を温めたら、痛みがだいぶ良くなってきたので、手紙を書くことにした。ジーン、イヴォン、ジェリーの三人。ディアにも声を掛ける予定だ。
みんなとお茶会をしたい、という簡潔な内容。そして、報告したいことがある、とも。リタに頼んで手紙を送り、すぐに返事が届いた。どうやらジーンたちは個人的に集まっていたみたいで、積もる話もあるだろうから、朝からにしようという提案が書いてあった。
お茶会をしたいとお母様に伝えないとね。と、考えていたら扉がノックされた。
「はい」
短く返事をすると、扉が開いてディアが顔を覗かせた。
「ディア!」
明るく彼女の名を呼ぶと、ディアは、「入ってもいいかしら?」と控えめに聞いてきたので、「もちろん」と答える。ディアとふたりで話すのは久しぶりのことだ。
ディアはホッとしたように息を吐いて、それから中へ入って来た。私の近くに来ると、心配そうに眉を下げる。
「体調は大丈夫?」
「ええ。痛みもだいぶ引いたしね」
「個人差があるみたいよね、その痛み」
こくり、と小さくうなずく。アカデミーの寮で同室のジーンとイヴォンが毎月大変そうなのは見ていたから……。大人の女性になるというのは、大変なことなんだろうなぁと感じてはいた。
「……あのね、リザ」
「なぁに?」
「……シリル様と、お付き合いをすることになったの」
ディアが顔を赤らめながら、そう言った。言葉は震えていて、良く見たら指もかすかに震えているように見える。
「おめでとう」
私の祝福の言葉に、ディアはゆっくりと顔を私に向けた。
「シー兄様なら、きっとディアを守ってくれるわ」
「……わたくしが、シリル様とお付き合いすることに、反対しないの?」
「反対? どうして? 私、ディアにもシー兄様にも、幸せになってもらいたいわ」
……なんて、前にアル兄様とヴィニー殿下から聞いていたから、いつかはこの日が来ると思っていたのよね。それが『今』ということに少し驚いたけれど、納得もする。だって、今は一緒に暮らしているのだもの。シー兄様とディアの関係を発展するくらいの長さで。長期休暇の恩恵を受けていたのよね。
「この話、みんなには?」
「初めにリザに伝えたかったの。わたくしの友人で、シリル様の妹だから」
「そっか。話してくれてありがとう。とても嬉しいわ。……シー兄様を、よろしくね」
どこかホッとしたようなディアの表情。緊張が解けたのか、私のベッドにへなへなと座り込んだ。
「祝福してくれてありがとう、リザ。緊張していたのよ」
「するわよ、祝福。……結婚することも、考えているの?」
ディアは首を左右に振った。そして、顔を真っ赤にさせながら、ぽつぽつと「まだ学びたいことがたくさんあるから」と答えた。……つまり、それが落ち着いたら結婚のことを考える……ということかしら?
「私は、ディアが姉になったら嬉しいな」
「そ、そう?」
うん、と首を縦に動かす。シー兄様とディアが並んでいる姿を想像すると、とてもお似合いだと思う。……それにしても、いつの間にそんなに仲を深めたのだろう?
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