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4章
4章94話(394話)
しおりを挟むヴィニー殿下の『お願い』のため、私はベッドの上で正座をしている。膝の上に頭を乗せて、ごろんと横になるヴィニー殿下に戸惑ったような声を掛けた。
「……あの、首が痛くなりませんか……?」
人の頭を膝の上に乗せるのは初めてのことだ。だから、不安になってそう尋ねた。すると、ヴィニー殿下は「大丈夫」とだけ言って目を閉じ、すとんと眠りに落ちたようだ。
すやすやと眠る姿を見て、ほっと息を吐く。私はまだヴィニー殿下のことを知らないのだなぁと思いながら、そっと彼の髪を撫でる。
「……ん……」
起こしちゃったかもしれない、と慌てて手を離す。でも、ヴィニー殿下は目を開けない。大丈夫……だったのかしら?
「膝枕~」
「ぽかぽか?」
ソルとルーナが小さな声でヴィニー殿下を見ながら呟く。しゅる、と音を立ててシェイドも姿を現した。
「良かった、寝てくれた……」
その一言で、ヴィニー殿下のことを案じていたのかがわかる。シェイドにこっちへおいでと声を掛けると、シェイドは素直に私の近くに来てくれた。ヴィニー殿下以外のそばにあまり近付かなかったシェイドが! と手招いておいて驚いたけれど、嬉しい。
「シェイドも眠いのなら、眠って良いのよ」
「……じゃあ、ちょっとだけ」
シェイドはそう言うと、ヴィニー殿下の近くで横になった。ヴィニー殿下とシェイドが目覚めるまで、私は彼らのことをソルとルーナと一緒に見守っていた。
――二十分ほどで、ヴィニー殿下が目を覚ました。それに合わせたように、シェイドも起きる。
ヴィニー殿下は私の髪をそっと掴んで、微笑む。その表情がとても幸せそうで、思わず同じように笑みを浮かべた。
「良く寝た~、ありがとう、リザ」
「いえ。その、お役に立てたのなら、光栄です」
ヴィニー殿下は起き上がり、ぺこりと頭を下げる。私は首を左右に振ってから、彼をじっと見つめた。……うん、休む前よりも顔色が良くなっている。そのことにほっと安堵の息を吐く。
……ちょっと、足は痺れたけれど、ヴィニー殿下が休めたのなら本望よ。
「……ところで、どうして膝枕を……?」
「昔ね、陛下と王妃殿下がしていたのを思い出して。やってみたくなったんだ」
「そうだったのですね」
国王陛下と王妃殿下が膝枕……。その姿を想像して、仲睦まじいのねと思った。痺れがだいぶ取れてきて、ゆっくりと動かす。うん、大丈夫そうね。
「お茶会の邪魔をしてごめんね。夢中になっちゃって」
眉を下げて微笑むヴィニー殿下に、私は目を数回瞬かせてから、ヴィニー殿下の服を掴んだ。
「邪魔ではありませんわ。それに、夢中になれるくらい好きなことなのでしょう?」
ヴィニー殿下は驚いたように目を見開き、こくりとうなずく。
「ですが、夢中になりすぎるあまり、自分のことを蔑ろにしないでください。心配するものが、ここにおります」
とん、と自分の胸元に手を置くと、ヴィニー殿下はじぃっと私を見て、それから照れたようにはにかんだ。
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