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4章
4章95話(395話)
しおりを挟む「ありがとう、気をつけるよ」
ヴィニー殿下がそう言ってくれたので、少し安心した。シェイドへと視線を向けて、声を掛ける。
「シェイド、ヴィニー殿下が無理や無茶をしないように見守っていてね」
シェイドはコクコクとうなずいていた。それを複雑そうな瞳で眺めるヴィニー殿下に、首を傾げるとぽんっと私の肩に手を置く。
「リザも無理や無茶をしないようにね?」
「――はい」
そう返事をすると、ヴィニー殿下がちらりとソルとルーナに視線を送る。ソルとルーナは声を揃えて、「任せて!」と言った。
「少し休んだし、僕はそろそろ行くよ。杖の完成、楽しみにしていて」
「はい、楽しみにしています。……が、本当に身体に気をつけてくださいね?」
「はは、そうだね、気をつけるよ」
彼を見送るために、一緒に玄関まで向かう。馬車に乗って去って行く前に、窓から手を振るのが見えた。手を振り返して、馬車が見えなくなるまで見送り、ディアたちはどうなったかしら? と思い、中庭へ足を運んだ。
中庭ではお茶会が続いていた。私が戻ってきたことに気付いて、ディアが立ち上がる。
「リザ、ヴィンセント殿下は?」
「少し休んで帰られたわ」
ジーンに聞かれて答えると、みんなじぃっと私を見た。イヴォンが立ち上がり、駆け寄って来たと思うと私の手を取り、椅子に座らせた。
「い、イヴォン?」
「お茶会はまだ終わっていないのだから、今度はリザの恋の話を聞きたいわ」
にっこりと微笑むイヴォン。ジーン、ジェリー、ディアに顔を向けると、みんな目を輝かせていた。
「えっと……」
恋の話、と言われても……と困惑していると、ジェリーが質問を投げてきた。
「政略ではないのでしょう?」
「え、ええ、そうね」
そこからは、ぐいぐいと質問が飛んできた。それに答えているうちに、段々と自分がヴィニー殿下をどう思っているのかが形になってきて、「ちょっと待って……」と顔を手のひらで覆った。
「リザ?」
ジーンの声が聞こえる。けれど、それどころではなかった。
「……リザ姉様、耳まで真っ赤よ」
「……言わないで、ジェリー」
言葉にすることでどんどんと形になった彼への想い。それを友人たちに話してしまったことも気恥ずかしい。
「言葉にすることで、わかる気持ちもあるのよね」
イヴォンの言葉にこくりと小さくうなずく。
「……でも、よかったわ。リザが恋を知ることが出来て」
「ジーン?」
どういう意味? と覆っていた手を外し、ジーンを見つめると、彼女は嬉しそうに目元を細めて微笑んでいた。
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