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5話
しおりを挟むそこからはなぜかとんとん拍子に話が進んでいった。ライナルト様が我が家に来て、これまでの経緯を話すと、お父様もお母様も呆れたように私を見た。そして、ライナルト様のおうちにも挨拶に行った。
ライナルト様のお父様とお母様は私を歓迎してくれて、「息子に春が来るなんて……!」と涙を浮かべていた……。ライナルト様はそんな二人を「はいはい」と適当にあしらっていて、家族に見せる表情を見られたことがとても嬉しかった。
そして挨拶から数日後、ノイマイヤー侯爵夫人に招かれて、ライナルト様、ノイマイヤー侯爵夫人、私の三人でお茶会をした。
「それにしても、本当にうちの子で良かったの?」
「……わ、私は前からライナルト様のことが好きだったので……。ただ、私とライナルト様では身分があまりに違うので、……ノイマイヤー侯爵夫人は、本当によろしいのですか……?」
私は男爵家の令嬢、ライナルト様は侯爵家の令息。本来なら、私が結婚出来る方ではない。ノイマイヤー侯爵夫人は、そんな私に目を瞬かせて、それから小さく微笑みを浮かべてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「この子ったら、縁談が来てものらりくらりと逃げてしまってね。……まぁ、数回お見合いには成功したのだけど、相手のご令嬢からやんわりと『怖いから無理ですごめんなさい』……なんて返事ばかりもらっていたのよ。だから、驚いたの。まさかこの子から、『会って欲しい人がいる』なんて言われた時には!」
「母上……っ」
「本当のことじゃない。私はライの幸せを願っているわ。男爵家から嫁ぐということは、大変なことになるでしょう。ですが、ライも、私たちもあなたのことをしっかりと守るから、そこは安心してちょうだいね」
ノイマイヤー侯爵夫人にそう言われて、私は内心ちょっと驚いた。男爵家の令嬢ということで、門前払いされてもおかしくないのに、守ってくれる、なんて……。私が「ありがとうございます」と口にする前に、ライナルト様が口を挟んだ。
「そんな当然のことを言わなくても……」
当然……?
「あら、きちんと宣言したほうが良いのよ、こういうことは。ねぇ、安心出来るでしょう?」
「え、ええと……、ま、守っていただけるのはとてもありがたいです」
「ほらね?」
「あの、……ええと、ただ、守られるだけではイヤです」
「……?」
ライナルト様もノイマイヤー侯爵夫人も、不思議そうに私を見た。私はちらりとノイマイヤー侯爵夫人を見てから、ライナルト様を見つめた。
「私だって、ライナルト様をお守りしたいのです」
彼が傷つくのはイヤだ。私になにか出来るのかと問われると、答えることは出来ないけれど――……。
「クラウノヴィッツ男爵令嬢……いえ、名前で呼ばせてちょうだいね、レオノーレ。あなたは既に、ライを守っているわ」
「……え?」
「殿下の護衛は危険も伴うわ。ライは何度も死にかけたことがあるの。それを救ってくれたのは、クラウノヴィッツの薬よ」
し、死にかけた……!?
ライナルト様を見つめると、ふいと視線を逸らされた。そのことが事実だと物語っている。
「クラウノヴィッツの薬が二人の縁を結んだのね」
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