【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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2章:同じことはしないけど

放課後デート 2話

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 フィリベルトさまが用意した馬車に乗り、王都の中心からちょっと外れた場所に移動する。

 中心は人々が多いけれど、少し外れると一気に少なくなるのよね。

「フィリベルトさまは、王都に詳しいのですか?」
「一応、留学するときに調べたし、この国についてから自分の目でも見て回ったからね」
「……そういえば、どうしてフィリベルトさまは留学先にこの国を選んだのですか?」

 ユミルトゥスからこの国まで、かなりの距離がある。隣国とはいえ、ね。

「気になりますか?」

 自分のことに興味を抱いたと、彼は瞳をきらめかせて問いかける。

「はい。恋人のことですもの」

 ――……我ながら、この言葉はちょっと気恥ずかしい。

 フィリベルトさまは目を大きく見開き、それから照れたようにはにかんだ。

「恋人……いい響きですね」

 ぽつりと言葉を紡いでから、馬車の窓に視線を移す。

 目的地についたのか、馬車が止まった。扉を開けて彼が先に降り、すっと手を差し出す。その手を取って降りると、目の前にはカフェ。お客さんはあまりいないみたいで、静かだ。

「……ここは?」
「美味しいと有名のカフェです。穴場、ですけどね」

 パチン、とウインクするフィリベルトさまに、カフェの外観をよく眺めてみる。

 木造三階建て。見た目からはカフェとは思えないくらいシンプル。

 なら、どうして私がカフェだと思ったのか――……それは単純な話だ。

 入口近くに、メニューボードがあったから。

「ここのチーズケーキが絶品らしいです」
「チーズケーキ! 好物ですわ」

 どんなチーズケーキだろう。スフレかな、レアかな。大好物なのよね。あの濃厚ながらさっぱりとした後味がたまらない。

「それはよかった。では、行きましょう」

 彼にエスコートされながら、店内に入る。

「……綺麗……」

 王都にこんなカフェがあるとは。

 店内は広く、開放感のある空間だった。新築なのか、木の香りが鼻腔をくすぐった。

 ところどころ、絵画が飾られていて、その絵画のセンスも素晴らしい。

 風景画や人物画が、バランスよく飾られていた。優しい灯りが辺りを照らし、落ち着く場所になっている。

「いらっしゃいませ」

 すぐに、店員が声をかけてきた。私たちを見て、にっこりと笑顔を浮かべ、奥の席に案内してくれた。

 フィリベルトさまが椅子を引いてくれて、そこに座る。

 彼も座ると、さっそくメニュー表を広げた。

「……チーズケーキだけでも、たくさんありますのね」
「そうですね……これだけあると、悩みますね」

 定番のスフレやレア。さらにストロベリーやブルーベリー、なんと抹茶まである。

 さすが日本で発売されたゲームの世界……と考えていると、フィリベルトさまがこちらを眺めていることに気づいた。
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