【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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3章:竜の国 ユミルトゥス

留学準備 1話

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 それまでのあいだに、いろいろなことがあった。

 まず、アレクシス殿下と私の婚約は、無事に解消された。最後まですがるようにこちらを見ていたのは気にしない。

 フローラは王妃教育を受け始めたけれど、まだ殿下との婚約はしていない。どうやら彼女は無自覚で魅了をかけていたようで、魔耐性がない人たちを自分の味方にしていた。

 ――ただ、それは幼い頃の話らしく、自身が持つ魅了の魔法に気づいてからは、むしろ積極的に使っていたらしい。

 マダムには魅了の魔法が効かず、あの離宮の人たちにも効かず、泣きながら王妃教育を受けているとのこと。

 自分が選んだことだもの、最後までがんばってほしいわ。

 私はというと、殿下との婚約が解消されてから、学園内で浮いた存在になってしまった。

 いや、前からそんな感じだったんだけど、余計にね。

 そんな私のそばに、フィリベルトさまは寄り添い、支えてくれた。

 彼がいなかったら、きっと私……自室に引きこもっていたわ。

 ただね、フローラの魅了の魔法が解けた人たちが、わざわざ謝りにきてくれた。

 魅了の魔法にかかっていたとしても、自分たちがしたことだから、と。

 彼女たちも、いろいろ大変だったと思う。

 謝罪は受け取った。彼女たちも被害者といえば被害者だもの。

 あとは……そうね、フィリベルトさまが本気で私のことを口説き始めたくらい、かしら?

『きれいなお花ね』
貴女あなたのほうが綺麗ですよ』

 こんな会話が日常茶飯事になった。……全然慣れない。

 褒め言葉なんて、いろいろな貴族たちから言われていたのに!

 どうしても、フィリベルトさまの言葉に反応してしまう。顔が赤くなってしまう。そんな私のことを『可愛い』なんて甘い声で言うのよ!

 こ、これがフィリベルトさまの本気……!? 甘い言葉をかけられるたびに、心臓が跳ねてバクバクと早鐘を打つの。

 アレクシス殿下は、こういうことしなかったし……他の貴族たちは社交辞令で褒めてくれることはあったけれど、口説いているという感じではなかった。

 前世の私は恋愛よりも仕事を選んでいたから……こんなふうに男性からの愛情注がれたことがない……ので、免疫がない!

 しかも、フィリベルトさまって、かなり好みのタイプなのよ。

 その好みのタイプが、愛を伝えてくるのよ!?

 ちなみにまだ仮の恋人同士、ということになっている。

 たぶん、お父さまは私が婚約を望めば許してくれると思う。……でも、フィリベルトさまのご両親はどうかしら?

 フィリベルトさまからは、『大丈夫ですよ、絶対』と言われているけれど、いきなり『私が婚約者になりました。よろしくお願いします』なんて挨拶するわけにもいかないしね。

 留学の準備をしながら、ゆっくりと一歩ずつ、恋のステップを踏んでいる感覚。

 私の気持ちが追いつくのを、フィリベルトさまは待ってくれているみたい。

 本当、どうしてこんなに私に良くしてくれるの……?
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