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3章:竜の国 ユミルトゥス
留学準備 2話
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◆◆◆
――そんな生活が数ヶ月続き、夏季休暇のあいだにユミルトゥスに向かうことになった。
自室で荷物の最終チェックをしてから、ローレンとチェルシーに視線をやる。
「さて、準備は終わったわね。……二人とも、最後の確認よ。本当についてきてくれるの?」
「もちろんでございます。それに……」
「それに?」
「竜の国にいれば、あの物語も発売日に買えるかもしれませんし」
嬉々として笑顔を見せるローレン。彼女の本当の目的って、こっちなのでは……?
チェルシーと視線を合わせて、くすくすと笑い合えば、ローレンがこほんと咳払いをした。
「ふふ、貴女たちがいてくれるのなら、心強いわ」
「光栄です、リディアお嬢さま!」
チェルシーがパァッと表情を明るくさせた。こういうところが可愛いと思う。
ローレンが妹のように可愛がるのもわかるわ。
もしも妹がいたら、こんな感じなんだろうなぁと想像を巡らせていると、扉がノックされた。
「リディア、いるかい?」
――この声は!
「キースお兄さま!」
隣国に留学していたキースお兄さま。夏期休暇に入ったから帰ってきたのね!
慌てて扉に向かうと、ガチャリと扉が開いた。そして、ぎゅっと抱きしめられた。
ギブギブギブッ! お兄さま、力が強すぎる! バンバンと背中を叩くと、キースお兄さまはハッとしたように力を緩めてくれた。そっと離れてお兄さまを見上げると、今にも泣きそうな表情をしている。
「耳に届いた瞬間、心臓が凍るかと思ったよ。どうしてこんなに可愛いお前が……」
留学先は隣国だったから、きっと帰省前にはアレクシス殿下と婚約解消したことはお兄さまの耳に届いていたでしょうね……
キースお兄さまは私よりも二歳年上で、このゲームの中ではちらっとしか出てこなかったのよね。
大学に進学して、留学先でこの騒動を知ったお兄さまの心情はいかに。
「……アレクシス殿下のお心はすでに、フローラさまに移ってしまいました。そんな方の妻になるつもりは毛頭ありません。ですので、婚約解消は当然の結果ですわ。心配なさらないで、キースお兄さま」
ちなみに、この数ヶ月、アレクシス殿下とフローラが婚約したという話は一切聞かない。
そもそも、フローラは男爵家の令嬢なので、殿下と婚約するにはいろいろ条件が足りないのよね。魅了の魔法の件もあったし。
学園では、私以上に浮いた存在になっていたし……それでもアレクシス殿下の傍から離れないから、根性はあると思う。
アレクシス殿下は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたけど。この結果を招いたのは自分自身だから、責任は取らなきゃね。
私の傍にいるよりも、フローラの傍にいることを選んだのは殿下。
最初は魔耐性だって高かっただろう。それでも、フローラの傍にいることを選び続けたのだから、殿下はフローラのことを本当に好きになっていた……と思う。
本人から直接聞いたわけではないので、私の憶測になっちゃうけれど。
――そんな生活が数ヶ月続き、夏季休暇のあいだにユミルトゥスに向かうことになった。
自室で荷物の最終チェックをしてから、ローレンとチェルシーに視線をやる。
「さて、準備は終わったわね。……二人とも、最後の確認よ。本当についてきてくれるの?」
「もちろんでございます。それに……」
「それに?」
「竜の国にいれば、あの物語も発売日に買えるかもしれませんし」
嬉々として笑顔を見せるローレン。彼女の本当の目的って、こっちなのでは……?
チェルシーと視線を合わせて、くすくすと笑い合えば、ローレンがこほんと咳払いをした。
「ふふ、貴女たちがいてくれるのなら、心強いわ」
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ローレンが妹のように可愛がるのもわかるわ。
もしも妹がいたら、こんな感じなんだろうなぁと想像を巡らせていると、扉がノックされた。
「リディア、いるかい?」
――この声は!
「キースお兄さま!」
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慌てて扉に向かうと、ガチャリと扉が開いた。そして、ぎゅっと抱きしめられた。
ギブギブギブッ! お兄さま、力が強すぎる! バンバンと背中を叩くと、キースお兄さまはハッとしたように力を緩めてくれた。そっと離れてお兄さまを見上げると、今にも泣きそうな表情をしている。
「耳に届いた瞬間、心臓が凍るかと思ったよ。どうしてこんなに可愛いお前が……」
留学先は隣国だったから、きっと帰省前にはアレクシス殿下と婚約解消したことはお兄さまの耳に届いていたでしょうね……
キースお兄さまは私よりも二歳年上で、このゲームの中ではちらっとしか出てこなかったのよね。
大学に進学して、留学先でこの騒動を知ったお兄さまの心情はいかに。
「……アレクシス殿下のお心はすでに、フローラさまに移ってしまいました。そんな方の妻になるつもりは毛頭ありません。ですので、婚約解消は当然の結果ですわ。心配なさらないで、キースお兄さま」
ちなみに、この数ヶ月、アレクシス殿下とフローラが婚約したという話は一切聞かない。
そもそも、フローラは男爵家の令嬢なので、殿下と婚約するにはいろいろ条件が足りないのよね。魅了の魔法の件もあったし。
学園では、私以上に浮いた存在になっていたし……それでもアレクシス殿下の傍から離れないから、根性はあると思う。
アレクシス殿下は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたけど。この結果を招いたのは自分自身だから、責任は取らなきゃね。
私の傍にいるよりも、フローラの傍にいることを選んだのは殿下。
最初は魔耐性だって高かっただろう。それでも、フローラの傍にいることを選び続けたのだから、殿下はフローラのことを本当に好きになっていた……と思う。
本人から直接聞いたわけではないので、私の憶測になっちゃうけれど。
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