【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

３章：竜の国 ユミルトゥス

乙女な部屋 ４話

　その内容に、私は小さく口角を上げてしまった。

　ジェットコースターに乗る経験なんてないものね。

　……でも、この世界のどこかにあってもおかしくない……気はする。

　なんせこの乙女ゲーム、いろんなものがあったもの。

　水族館がデートスポットにあるくらいだから、遊園地があってもおかしくないと思うのよね。

　ただ、私たちが暮らしていた国にはなかったけれど……その代わり、デートスポットはそこそこあった。

　……乙女ゲームの世界だから、そりゃそうだろう。

「ここから学園の寮までは馬車でしょうか？」
「おそらくね。こちらの学園も夏期休暇中でしょうから、ちょっと外を見てみたいわね」
「そうですね。私たち、まったく知らない国にきていますからね。どんな人たちが暮らしているのか、興味があります」

　キリッと真剣な表情を浮かべるローレン。

　チェルシーは明るい声色で、彼女の脇腹を突いた。

「そんなこと言って、本屋さんが気になるだけでしょう？」
「チェルシー！」

　図星だったのか、ローレンが顔を赤くした。……本好きのローレンだ。本屋を巡ることを楽しみにしていても、変ではないわね。

「なら、明日にでもフィリベルトさまに頼んで、街を案内してもらいましょう。私もどんな人たちが暮らしているのか、気になるし」

　空から見た限り、とても整った街のようだし、そんな街に住んでいる人たちが、どんなふうに生活しているのか、この目で確認したい。

「どんな場所なのか、わくわくしますね！」

　チェルシーがぐっと拳を握って、目をキラキラと輝かせた。私たちは生まれも育ちもサクリアナ王国だから、彼女の言う通り、好奇心が勝っている気がする。

　……でも、チェルシーは知らない土地だというのに、全然不安を感じていないようで、そこに首をかしげてしまった。

「……不安はないの？」
「お嬢さまたちと一緒ですもの！」

　彼女はパァッと明るく笑う。私たちへの信頼が感じられて、ローレンと顔を見合わせて、思わずふふっと笑い声をこぼす。

　チェルシーはキョトンとした表情になったけれど、自分の言葉に気づいて、照れくさそうに頬をかいた。

「でも、本当ですよ。私、一人ならきっとこんなふうに他国にいくことは、なかったと思います」

　それにはローレンもどうするようにうなずいていた。

　私もあのままアレクシス殿下と結婚して、王妃になっていたら、外交で少し国外にいくだけだったと思う。

　こうして留学の道は、選べなかっただろう。

　そう考えると、あの二人に感謝するべきかもしれない。

　選択肢を与えてくれたことを――……