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異世界でお菓子屋さんを開きました 第三章 本編(和菓子編 後半)

第9話 内緒の逢引き(抹茶わらび餅)③

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第9話 内緒の逢引き(抹茶わらび餅)③

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目の前に…オキニス君がいる。

嘘じゃない本当にっ…

「オキニス君っ!!」

タッ タッ タッ

迷う事なく駆け寄り、
彼の服の裾を摘んだ

「会いたかったです…
ありがとうございます…
来てくれて…うぅぅ」

普段の私ならきっと…
弱音を吐かなかっただろうな

オキニス君より年上だから、きっと
大人な落ち着いた対応を取るつもりで…

『会いたかったよオキニス君』って
笑顔で言う予定だった



……でも…



無理だった。

頭の中で笑顔で再会する
シュミレーションも何度もしたのに…

不安にさせないように
明るく振る舞おうとしたのに…

オキニス君を目にしたら、
もう……感情が溢れ出てしまった…

オキニス「真澄…よかった!
よかった無事で!!」

グイッと手首を引かれ、
ボスンと彼の胸にもたれ掛かった。

ポタ ポタ と頭に水が落ちる

「オッオキニスくっ…」

驚いて顔を上げると
オキニス君は、切なげな表情で
涙をこぼしていた。

オキニス「もう…俺の前から
いなくならないで下さい…
どんなに不安な日々を過ごしたか…
真澄がいないなんて…俺には耐えられない」

ぎゅうぅと力強く抱きしめられ、
少し苦しかったけど…

「はい…心配かけて
申し訳ございません…グスッ…」

彼の温もりが夢じゃないと
実感できて嬉しかった。

「……………………」

おもむろに手を少し動かした途端、

グスグスッと声が聞こえて来た…

「…………!!」

オキニス「……!だっ誰です?!」

そうだった…翠狐さんがいた。

あぶない あぶない
無意識に抱き返して
…気持ちが露わになる所だった

手を止め、おそるおそる
後ろを振り向くと…

翠狐「よがっだぁぁよぉぉ
2人どもぉぉぐすっ うえぇぇぇん!!」

私達以上にぼろぼろと泣く翠狐さんと

呉紅店主「本当によかったですね
2人とも…あぁ久々に涙出ました…」

翠狐さんの隣には
目頭にハンカチを押さえる
呉紅店主が立っていた。









数十分後、
全員が泣き止み、
それぞれの挨拶が始まった。


翠狐「えー…大変お騒がせしました
僕は牡丹王国の左大臣・深緑 翠狐と
いいます。よろしくお願いします」

オキニス「わたくしはクモード王国で
『騎士』をしております。
オキニスと言います
目は大丈夫でしょうか?翠狐さん
よかったら、これを使って下さい」

オキニス君は濡れたおしぼりを
さっと手渡した。

…優しいなオキニス君

翠狐「ありがとうございます!
…なんて優しいんだい
今の状況、普通なら警戒するべきなのに…
さすが、クモード王国のお…
コホン!いや、騎士様だ
本当、どっかの王子様は見習って欲しいよ
この優しさ!!」

あー…おしぼり気持ちーと呟き
翠狐さん、自分の瞳におしぼりを当てる

…が

翠狐「…って悠長にしている場合じゃないよ!!」

バン!! と机を叩き、立ち上がる

その様子に私達3人は目を丸くする。

翠狐「呉紅店主!
今朝、雛美火様が呪いをかけたんだ」

呉紅店主「呪い?!禁断術ですよね
かかったのは?…まさか…」

翠狐「うん…真澄さん…」

ちらっと私を見て、

翠狐「側にいたのに…止める事ができずに
ごめん まさかあの時点で術を
かけるだなんて…」

と呟き頭を伏せた。

……呪いって一体?

状況に追い付けず
ポカンとする…と

オキニス「雛美火様…って
たしか…人間嫌いだと
真澄!『彼』と関わっているのですか
それに呪いって?!」

隣にいたオキニス君は、
驚愕な顔してガッと私の肩を掴む。

あっ…肩に手が食い込んでて
少し痛い…

初めて出会った頃を思い出すな…

「あっ…はい
彼女は私の護衛をしておりまして…
たしか…牡丹王国の第三王女って
言っておりました…」

オキニス「彼女…?
真澄…何を言っているんですか
牡丹王国の雛美火・紅さんは…」

「へ?…オキニス君?」

オキニス「『男性』です!
女性ではありません
あと彼は第一王子ですよ」

「……男性……」


…距離近かったよね…



手を握られたり、抱き寄せられたり、
スキンシップもあった…

着替えてる所も見られて…

私…今まで、
女性だと思って接した
雛美火さんは……男性…

女性なら特に気にならなかった部分
男性と知った途端…

今までの彼女…いや『彼』の
行為を思い出して…

「…………っ」ぐらっ

オキニス「真澄っ……しっかり!」

全身に鳥肌が立ち
目眩がした。

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