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・Day5/chapter2 間奏
62.
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――何を。
そう問い詰める時間も息継ぎのための間もなく、青年は呻いた。その胴体を激しく弓なりに逸らせ、その衝撃に、全身が強烈な光に包まれてしまったかのような激しい痙攣とともに、内側に押し込まれた男の熱情を感じて。
「はっ、とんだ淫乱になったな」
上から降り注ぐ自分に向けた嘲笑など、もはや感じない。荒い呼吸を整える暇すらなく、強引な出し送りに、身もだえて震え、全身をねじる。
「最初のころからやけに反抗的なやつだと思っていたが、それがどうだ? 今じゃこうして、主のいぬ間に男を誘うような――」
ぐっと内壁を押す質量が爆発的に増えた、と思った瞬間に男は彼の裡で達して、その奥へと熱いものを叩きつけていた。
ふっと、息を長く吐く。
くらくらして自分がどこにいるのかさえ、わからぬような浮遊感。彼の前は後ろの刺激に淡く立ち上がっており、蜜を垂らして幹を濡らしている。
「ああ……」
奥からそれをひきずりだされる感覚に喉奥から青年が声をこぼした。だが、出ていった、と思われたものは、すぐに硬くなり、再び青年の後蕾へとあてがわれる。
「何をしている?」
声がした。
足音にすら気が付かなかった。
ぎょっとして、先頭を蕾の入口にあてがったまま使用人が硬直した。
青年はもどってこれない混濁した意識――官能という強烈な光の渦にとらわれていた――そのなかに、ふっと一筋、暗い闇の存在を察知して、胸を弾ませた。
ふと、我に返ったのは使用人であった。
「もしわけありませんっ!!」
激しく、頭を床にすりつけるようにひざまずいて、彼の支配者に詫びる。彼の頭のなかにたくさんの言い訳が電光石火のように生まれてはすぐさま飛び立ってしまうため、彼は謝罪のことば以外なにも口にすることは出来ず、男の判断をただ息を殺して待っているほかなかった。
男は――自分のお気に入りの玩具を勝手に使用されたような複雑な表情を浮かべていたが、ふ、と軽く笑った。
「どうせ、こいつが誘ったのだろう?」
男の声は低かったが、冷たいものではなかった。その気配に、使用人は、ぱっと頭を上げた。
目の前に己の主の顔がある。
じっとこちらを見つめてくる瞳の奥には決して溶けることのない氷河が眠っているかのようだ。
凍てつく視線を浴びて、唇が紫に変色していく使用人の肩を主人はやさしくたたいた。
「さがれ」
それは絶対の命令だった。
あわてて、ひきさがろうとした使用人だったが、力がうまくはいらずに、よろめきながら、引き下がる。
「――藤滝?」
青年が男の名を呼んだ。
男は青年に腕を伸ばした。
そう問い詰める時間も息継ぎのための間もなく、青年は呻いた。その胴体を激しく弓なりに逸らせ、その衝撃に、全身が強烈な光に包まれてしまったかのような激しい痙攣とともに、内側に押し込まれた男の熱情を感じて。
「はっ、とんだ淫乱になったな」
上から降り注ぐ自分に向けた嘲笑など、もはや感じない。荒い呼吸を整える暇すらなく、強引な出し送りに、身もだえて震え、全身をねじる。
「最初のころからやけに反抗的なやつだと思っていたが、それがどうだ? 今じゃこうして、主のいぬ間に男を誘うような――」
ぐっと内壁を押す質量が爆発的に増えた、と思った瞬間に男は彼の裡で達して、その奥へと熱いものを叩きつけていた。
ふっと、息を長く吐く。
くらくらして自分がどこにいるのかさえ、わからぬような浮遊感。彼の前は後ろの刺激に淡く立ち上がっており、蜜を垂らして幹を濡らしている。
「ああ……」
奥からそれをひきずりだされる感覚に喉奥から青年が声をこぼした。だが、出ていった、と思われたものは、すぐに硬くなり、再び青年の後蕾へとあてがわれる。
「何をしている?」
声がした。
足音にすら気が付かなかった。
ぎょっとして、先頭を蕾の入口にあてがったまま使用人が硬直した。
青年はもどってこれない混濁した意識――官能という強烈な光の渦にとらわれていた――そのなかに、ふっと一筋、暗い闇の存在を察知して、胸を弾ませた。
ふと、我に返ったのは使用人であった。
「もしわけありませんっ!!」
激しく、頭を床にすりつけるようにひざまずいて、彼の支配者に詫びる。彼の頭のなかにたくさんの言い訳が電光石火のように生まれてはすぐさま飛び立ってしまうため、彼は謝罪のことば以外なにも口にすることは出来ず、男の判断をただ息を殺して待っているほかなかった。
男は――自分のお気に入りの玩具を勝手に使用されたような複雑な表情を浮かべていたが、ふ、と軽く笑った。
「どうせ、こいつが誘ったのだろう?」
男の声は低かったが、冷たいものではなかった。その気配に、使用人は、ぱっと頭を上げた。
目の前に己の主の顔がある。
じっとこちらを見つめてくる瞳の奥には決して溶けることのない氷河が眠っているかのようだ。
凍てつく視線を浴びて、唇が紫に変色していく使用人の肩を主人はやさしくたたいた。
「さがれ」
それは絶対の命令だった。
あわてて、ひきさがろうとした使用人だったが、力がうまくはいらずに、よろめきながら、引き下がる。
「――藤滝?」
青年が男の名を呼んだ。
男は青年に腕を伸ばした。
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