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・地下室調教編(Day7~)
一日目 1-1
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また日付が変わっていた。
だが、目を覚ました場所は昨日とは別の部屋だった。
「ん……」
起き上がろうとして青年は叫んだ。
「なっ!」
何も衣服を身に着けていない他、両手首、両足首に金属製の輪がはめ込まれており、そこから伸びるチェーンが、青年が身動きするたびに、じゃらじゃらと鳴った。
幸い、四つのチェーンの先が何かにくっついているわけではない。だから、身体は自由に動かすことができるが、固く冷えた感覚に青年は不気味さを感じた。
「おはよう」
すぐちかくから声がした。
「ずいぶん、ぐっすり寝ていたみたいだな」
「藤滝」
声の主は、その部屋の出入り口の前で脚を前後に交差しながら佇んでいた。
この部屋は四方をコンクリートむき出しの壁に囲まれており、その壁面に、ぼつぼつと丸い金具がとりつけられている。
地下室だ、と青年は思った。
前にも一度、脱走後の折檻のためにここにつれて来られたことがあった。
「くそ! 何をするつもりだよ!」
「威勢だけはいいな」
ふっと冷徹な笑みを浮かべる藤滝に、青年は頬が熱くなった。
「お前……」
男をにらみつける。
それが逆に男の嗜虐心をあおるとも知らずに。
「脱走に次ぐ脱走。さらに勝手に人の部屋にもぐりこんでの覗き。ここまでしつけがなっていない犬は初めてだ」
「そ! それは!」
別に覗いていたのではない。それに、それに対して藤滝がどれだけこの肉体を追い詰めたか――。
「さすがに昨日ので、目が覚めたよ。お前のような者に必要なのは、アメとムチなどではない。極限まで追い詰めて誰がお前を支配しているのか、頭の奥にたたきつけてやることだと――」
「はあ!?」
藤滝は、近づくと青年の髪を掴んで引き寄せた。
「教えてやる。誰がお前の主人かを」
「くっ」
青年は、ひきちぎられそうな髪の痛みに、眉根を寄せたが、ここで負けるのは悔しかった。彼に向けて、つばを吐きかけた。
男は、表情を変えなかった。しかし、瞳の奥の冷たい氷河が一瞬ゆらめいた。
「入れ」
男が命じると、黒い制服を着た使用人がひとり入って来た。
「あ……」
青年には見覚えがあった。
この男の部屋に忍び込んで、戸棚の隙間から部屋の様子を覗き込んでいたときに、この男が抱いていたあの使用人だった。
彼はじっと藤滝を見つめると、意図を察したのか、てきぱきと動き始める。
青年はそれに気が付いて、とっさに逃げようとしたが、藤滝が、上から青年をおしたおして、そのまま床におしつけた。
「くっ――やめろ!」
「減らない口だな」
藤滝が、笑う。
使用人は、青年の手首から生えているチェーンを壁にかかっている金具にそれぞれ通した。
藤滝が合図をする。彼の腕が青年からはなれる。逃げられる、と一瞬の期待がおこったのだが、それは無残にもすぐに崩れ落ちた。
「!?」
金具を通した先のチェーンを使用人がめいっぱいに引っ張った。それに合わせて、青年の手首が、上に引き上げられた。
だが、目を覚ました場所は昨日とは別の部屋だった。
「ん……」
起き上がろうとして青年は叫んだ。
「なっ!」
何も衣服を身に着けていない他、両手首、両足首に金属製の輪がはめ込まれており、そこから伸びるチェーンが、青年が身動きするたびに、じゃらじゃらと鳴った。
幸い、四つのチェーンの先が何かにくっついているわけではない。だから、身体は自由に動かすことができるが、固く冷えた感覚に青年は不気味さを感じた。
「おはよう」
すぐちかくから声がした。
「ずいぶん、ぐっすり寝ていたみたいだな」
「藤滝」
声の主は、その部屋の出入り口の前で脚を前後に交差しながら佇んでいた。
この部屋は四方をコンクリートむき出しの壁に囲まれており、その壁面に、ぼつぼつと丸い金具がとりつけられている。
地下室だ、と青年は思った。
前にも一度、脱走後の折檻のためにここにつれて来られたことがあった。
「くそ! 何をするつもりだよ!」
「威勢だけはいいな」
ふっと冷徹な笑みを浮かべる藤滝に、青年は頬が熱くなった。
「お前……」
男をにらみつける。
それが逆に男の嗜虐心をあおるとも知らずに。
「脱走に次ぐ脱走。さらに勝手に人の部屋にもぐりこんでの覗き。ここまでしつけがなっていない犬は初めてだ」
「そ! それは!」
別に覗いていたのではない。それに、それに対して藤滝がどれだけこの肉体を追い詰めたか――。
「さすがに昨日ので、目が覚めたよ。お前のような者に必要なのは、アメとムチなどではない。極限まで追い詰めて誰がお前を支配しているのか、頭の奥にたたきつけてやることだと――」
「はあ!?」
藤滝は、近づくと青年の髪を掴んで引き寄せた。
「教えてやる。誰がお前の主人かを」
「くっ」
青年は、ひきちぎられそうな髪の痛みに、眉根を寄せたが、ここで負けるのは悔しかった。彼に向けて、つばを吐きかけた。
男は、表情を変えなかった。しかし、瞳の奥の冷たい氷河が一瞬ゆらめいた。
「入れ」
男が命じると、黒い制服を着た使用人がひとり入って来た。
「あ……」
青年には見覚えがあった。
この男の部屋に忍び込んで、戸棚の隙間から部屋の様子を覗き込んでいたときに、この男が抱いていたあの使用人だった。
彼はじっと藤滝を見つめると、意図を察したのか、てきぱきと動き始める。
青年はそれに気が付いて、とっさに逃げようとしたが、藤滝が、上から青年をおしたおして、そのまま床におしつけた。
「くっ――やめろ!」
「減らない口だな」
藤滝が、笑う。
使用人は、青年の手首から生えているチェーンを壁にかかっている金具にそれぞれ通した。
藤滝が合図をする。彼の腕が青年からはなれる。逃げられる、と一瞬の期待がおこったのだが、それは無残にもすぐに崩れ落ちた。
「!?」
金具を通した先のチェーンを使用人がめいっぱいに引っ張った。それに合わせて、青年の手首が、上に引き上げられた。
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