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3 新しい生活の始まり
3‑10 プロム
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エリオス殿下の研究室にも、学生はいるわけで。
「ドレス、どうする?」
「んー、城下町でレンタルするしかないかなぁ」
「私の何年か前に、一度着ただけのドレスを貸してもいいけど、型遅れよねぇ?」
「それでもいいわ。貴族みたいにドレスを何回も新調できないんだもの、誰も気にしないわよ、きっと」
レンタルするか、友人に借りるか悩んでいるのは、平民のアニヤ。両親はパン焼きで、奨学金で通っている。
火の魔法が得意で、殿下が教えて来た下級生の中でも優秀な子で、研究室にスカウトされたとのこと。
ドレスを貸してもいいと言っていたのは、北の広大な土地を管理する辺境伯の娘でソルヤ。風と地の魔術が得意で、しかも調教師の力も持っていて、ある程度の強さの生物や妖魔なら、使い魔として契約することも出来るらしい。まだ、見せてもらったことはないけど、召喚士とは契約魔法の形態が違うらしいので、いつかテイムした動物達を見せて欲しいと思っている。
彼女達が話していたのは、来週のプロム(プロムナード=舞踏会)の事だろう。
魔法士学校に限らず、一般的な学校でも、卒業式の前後にプロムが開かれるけれど、この魔法士学校では二ヶ月に一度、最上級生に限らず、誰でも参加できるものが、校内のどこかの学舎のホールで開かれる。
貴族なら、デビュタントすれば、夜会や王城の舞踏会にも参加する機会はあるし、デビュタントしてなくても、各家門の茶話会に参加することもある。
魔法士は、卒業後、普通の仕事に就く人は少ない。その多くは、魔法省の事務方なり魔法士なりになる。
その時、貴族や王族との付き合い方や、警備対象の習慣がわからなければ困ることもあるだろうと言うことで、平民出身者が貴族社会に慣れるため、将来魔法士として活動するときのために貴族と伝手を作れるように、ひと月置きに、どこかの学舎で持ち回りで開催されるのだ。
もちろん、全員参加ではないし、当校の学生であれば誰でも参加できる。
「何色? 私の相方は茶髪だし薄茶の眼だから、暖色なら歓迎⋯⋯あ」
アニヤが、言葉を濁し、気づいたソルヤも口をつぐむ。
「バッカ。ここで話題にするなよ」
と、二人を窘める男子学生は男爵家の三男で、魔法力が強いから魔法士師団で出世を狙っていると言っていた。それには、もう少しコントロールをしっかりした方がいいとは思うけれど、素質は十分にある。
クレディオス様が魔術のコントロールを失い、魔力には問題ないものの魔法力が極端に弱まり、休学中なのは皆が知っているし、貴族出身の生徒ならクレディオス様が私の婚約者だと知っているし、その関係性はうまくいってなかったのは察しがついていただろう。
「気をつかっていただいてありがとうございます。元々あまり参加したことはなかったの。クレディオス様がお元気であっても、参加しなかったと思うから気にしないで?」
なるべく自然に笑えているように見える事に気を配って微笑みかけると、困ったり恥じたりすることはないのに、三人とも頰を赤らめて俯いてしまった。
「そうだな? この際、わたしと一度参加してみないか? エステル」
いつの間にか殿下が真後ろに立っていて、目が合うとにっこりと笑いかけて来た。
「あの⋯⋯」
「この先、わたしの助手を務めるなら、国内外の会議や査問会、事件や事故の現場などに赴くことになる。その時、執事達より高位貴族──公爵家のご令嬢である君が傍にいた方が都合がいい場合もあるだろう」
「それはそうかもしれませんが」
「その時の予行演習だと思えばいいだろう? 王侯貴族の夜会のような派手ではない衣装にするから」
派手ではない衣装にするから、とは?
「公式な公務用に、華美ではないが粗末でもない上質のものを何着か用意させる。いいね」
「自分の着る物なら自分で用意を⋯⋯」
「僕の、わたしの仕事上の連れとなるからには、わたしの衣装にある程度は合わせる必要もあるだろう? 必要経費で作らせるから」
殿下にドレスを贈られ、学生プロムとはいえ舞踏会に出ることになってしまった。
エリオス殿下の研究室にも、学生はいるわけで。
「ドレス、どうする?」
「んー、城下町でレンタルするしかないかなぁ」
「私の何年か前に、一度着ただけのドレスを貸してもいいけど、型遅れよねぇ?」
「それでもいいわ。貴族みたいにドレスを何回も新調できないんだもの、誰も気にしないわよ、きっと」
レンタルするか、友人に借りるか悩んでいるのは、平民のアニヤ。両親はパン焼きで、奨学金で通っている。
火の魔法が得意で、殿下が教えて来た下級生の中でも優秀な子で、研究室にスカウトされたとのこと。
ドレスを貸してもいいと言っていたのは、北の広大な土地を管理する辺境伯の娘でソルヤ。風と地の魔術が得意で、しかも調教師の力も持っていて、ある程度の強さの生物や妖魔なら、使い魔として契約することも出来るらしい。まだ、見せてもらったことはないけど、召喚士とは契約魔法の形態が違うらしいので、いつかテイムした動物達を見せて欲しいと思っている。
彼女達が話していたのは、来週のプロム(プロムナード=舞踏会)の事だろう。
魔法士学校に限らず、一般的な学校でも、卒業式の前後にプロムが開かれるけれど、この魔法士学校では二ヶ月に一度、最上級生に限らず、誰でも参加できるものが、校内のどこかの学舎のホールで開かれる。
貴族なら、デビュタントすれば、夜会や王城の舞踏会にも参加する機会はあるし、デビュタントしてなくても、各家門の茶話会に参加することもある。
魔法士は、卒業後、普通の仕事に就く人は少ない。その多くは、魔法省の事務方なり魔法士なりになる。
その時、貴族や王族との付き合い方や、警備対象の習慣がわからなければ困ることもあるだろうと言うことで、平民出身者が貴族社会に慣れるため、将来魔法士として活動するときのために貴族と伝手を作れるように、ひと月置きに、どこかの学舎で持ち回りで開催されるのだ。
もちろん、全員参加ではないし、当校の学生であれば誰でも参加できる。
「何色? 私の相方は茶髪だし薄茶の眼だから、暖色なら歓迎⋯⋯あ」
アニヤが、言葉を濁し、気づいたソルヤも口をつぐむ。
「バッカ。ここで話題にするなよ」
と、二人を窘める男子学生は男爵家の三男で、魔法力が強いから魔法士師団で出世を狙っていると言っていた。それには、もう少しコントロールをしっかりした方がいいとは思うけれど、素質は十分にある。
クレディオス様が魔術のコントロールを失い、魔力には問題ないものの魔法力が極端に弱まり、休学中なのは皆が知っているし、貴族出身の生徒ならクレディオス様が私の婚約者だと知っているし、その関係性はうまくいってなかったのは察しがついていただろう。
「気をつかっていただいてありがとうございます。元々あまり参加したことはなかったの。クレディオス様がお元気であっても、参加しなかったと思うから気にしないで?」
なるべく自然に笑えているように見える事に気を配って微笑みかけると、困ったり恥じたりすることはないのに、三人とも頰を赤らめて俯いてしまった。
「そうだな? この際、わたしと一度参加してみないか? エステル」
いつの間にか殿下が真後ろに立っていて、目が合うとにっこりと笑いかけて来た。
「あの⋯⋯」
「この先、わたしの助手を務めるなら、国内外の会議や査問会、事件や事故の現場などに赴くことになる。その時、執事達より高位貴族──公爵家のご令嬢である君が傍にいた方が都合がいい場合もあるだろう」
「それはそうかもしれませんが」
「その時の予行演習だと思えばいいだろう? 王侯貴族の夜会のような派手ではない衣装にするから」
派手ではない衣装にするから、とは?
「公式な公務用に、華美ではないが粗末でもない上質のものを何着か用意させる。いいね」
「自分の着る物なら自分で用意を⋯⋯」
「僕の、わたしの仕事上の連れとなるからには、わたしの衣装にある程度は合わせる必要もあるだろう? 必要経費で作らせるから」
殿下にドレスを贈られ、学生プロムとはいえ舞踏会に出ることになってしまった。
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