死んだ日の朝に巻き戻りしました  ら、溺愛生活がリスタート?

ピコっぴ

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4 困惑と動悸の日々

4‑5 テラスにて

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     🙇
前話を修正中に寝落ちしてしまいました
内容が一部前後して混ざってしまい、気づいてすぐに重複部分を削除しましたが、朝早くからお読みいただいた読者の方には困惑させてしまいました

申し訳ありませんでした

❈❈❈❈❈❈❈

     🍹

「疲れさせてしまって、すまなかったね」
「いいえ。学生でなくなれば日常の一部になる事ですし、毎回疲れていては務まりません。もう少し、体力と精神力を鍛えるように心掛けますわ」

 本当にそうだ。
 ただの魔法士としてだけではなく、公爵令嬢として社交の場に出るのが当たり前になるというのに、出るたびに疲れ切ってしまっていては話にならない。

 エリオス殿下から温かいシャンパンを受け取り、一口。
 温かいからか、生姜やジンジャーハーブが少し入れられた微炭酸が心地よく、緊張から渇いていた喉に優しく潤いを与えてくれた。

「シャンパン風味の発泡飲料というだけでなくて、ハーブが少し入っているんですね。初めて口にしましたが、とても美味しいですわ」
「気に入ってもらえたならよかった。落ち着いたかい?」

 たちまち疲れが回復する訳ではないし、王族と話す緊張が弛むことはないけれど、それらの気怠さや身体が重く感じるのは、幾分和らいだのは確かだ。

「こんな事なら、ダンスのお復習いをもっとしておくべきでしたわ」

 かと言って、殿下に練習を頼む訳にもいかず、また時間もとれない。
 それは、研究チームの男子生徒や魔法省の執事達も同様に忙しいのに頼みづらいし、そもそもそこまで親しくなれた訳でもない。

 あれから、まだセオドア従兄にいさまにはお会いしていなかった。

 クレディオス様と最期に踊ったのは、いつだっただろうか。

 つくづく、もっと、親しみの持てる優しい殿方と縁を結べていたら、その方を好きになれていたら、人生は違ったものになっていたかもしれない。

「それだけど、エステル」
「それ?」
「僕やセオドアを例に挙げて、真面目で誠実な人物を好きになれていたら、その相手と縁を結べていたら幸せになれていたのではって⋯⋯
馬車の中でこぼしていただろう?」(3-4参照)
「憶えていらしたのですか?」
「もちろん。お褒めの言葉として受け取っていたし、切実な本音なのだろうとも感じていたしね」

 そう。何も、エリオス殿下と恋仲になりたいと言った訳ではないし、セオドア従兄にいさまを選んだ訳でもないけれど。
 お二人のような、何事にも真摯に向き合う方となら、移り気もなさらないだろうし、心穏やかで気を許しあえる幸せな夫婦になれるのではないかと思えた。更にそのお相手を愛せたなら、もっと幸せになれるのではないかとも思ったのだ。
 その考えは、貴族に生まれてはなかなか望めるものではなかったし、そんな縁に恵まれる人は、もしかしたら少ないのかもしれない。

 それでも、夢見ることは自由だろう。その思いを希望に生きるのも。
 ただ、その考えに固執しても、囚われてしまったら逆に不幸になるとも思うけれど。

「だから、その考えを、思いを、実践してみる気はない?」


   ꙳꙳꙳


 その日は、閉会前のラストダンスも貴族ルールで王族(かその場での最高位の者)が締めるために、殿下に手をとられて一曲だけ踊った。

「お嬢さまのドレスアップは久し振りで、嬉しかったです」
「ラケル⋯⋯ 私は肩が凝って大変だったわ。まさか、エリオス殿下と踊らなくてはならなくなるなんて、次に、夜会や舞踏会に出なくてはならない時は、セオドア従兄にいさまやセヴェリ従叔父さまに頼むか、パートナー無しで参加したいわ」
「また、そんな事仰って⋯⋯ パートナー無しで参加できるはずもありませんでしょう?」

 セヴェリ従叔父さまは、アァルトネン一門の伯爵家の三男で適齢期を迎えてずいぶん経つのに、妻も迎えず自らの家族を持たず、婚約者もいない独り者である。
 本人いわく、家は長男が継ぐし、もしもの時も二男がいる。だから、自分は魔法と精霊と遊ぶ方がいいと仰って、恋人すらいない変わり者。
 お年は確か27歳。とても綺麗な、満月のような黄味を帯びた銀髪を背中の半ばまで延ばし、セオドア従兄にいさまよりも高くて190㎝を超えた長身。

 セオドア従兄にいさまと同じく、子供の頃から私のことを気にかけてくださっていた一人だ。
 そして、子供には母親が必要だと言って再婚しようとする父に、最期まで反対していた一人でもある。
 伯爵家の三男で、十三歳の子供だからと意見を聞いてもらえなかったと、今でもこぼす時がある。

「でも、王族のパートナーとして夜会に参加されるのは、精神的にも大変でしょうね」

 エリオス殿下に婚約者がいて、仕事上の付き合いとしてお相手を務めると言うのなら、まだ気は楽だ。浮気相手ととられたり下心を疑われたりしないように気をつけるだけ。
 だけど殿下には婚約者はいない。

 お若く魅力的で独身の王子のそばに着飾って立つ。日々隣にいて仕事をする。

 他に同様の近い存在がいなければ、誤解を招くのは避けられない。

 せめて、クレディオス様が健康で、婚約者として寄り添ってくださっていれば、ああ仕事仲間か、で済むのかもしれない。でも、クレディオス様は傍にいてくださらず、いずれ婚約解消に向けて動いていたことは、周囲にも知られるだろう。
 その時、エミリアと婚約を結び直した事も広がれば、人々は面白おかしく想像をかき立てて、あらぬ関係性を疑う物語を創り出し良くない噂が流れるだろう。

 そこに、殿下を巻き込んでしまうのが心苦しい。

 殿下にいただいたドレスと宝飾品を丁寧に収納し、屋敷のランドリーメイドに手入れをさせるからと荷に纏め、ラケルは私の身仕度も手早く整えて、またいつでも呼んでくださいと言い残して、公爵邸へ戻って行った。

 さすがに、夜会用のドレスはひとりでは着付けられない。寮母に許可を取り、ラケルだけ呼びつけたのだけど、久し振りに彼女と話せてよかった。

 玄関口で見送ると、誰とも会話したりすることなく与えられた自室に戻る。

 ひとりになると、テラスでエリオス殿下の遺した言葉を何度も考えしまって、頭がグルグルした。




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