死んだ日の朝に巻き戻りしました  ら、溺愛生活がリスタート?

ピコっぴ

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4 困惑と動悸の日々

4‑7 貧血を起こしそうです

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     💝

 エリオス殿下と、交際の練習を?

「それこそ、婚約者が居なくなった途端に、王族に色目を使うはしたない女と思われませんか?」
「そうかな? 君は公爵家の跡取りの一人娘ヽヽヽ、僕は当代国王の嫡出第二王子。君が公爵家を、アァルトネン一族の惣領家を捨てられるとは思えないし、僕も、第三王子以外や庶子ならともかく、気軽に婿養子に臣籍降下するとは思われないだろう? 常識の範囲内で交際の真似事をするだけなら、問題はないと思われるけれど、どうかな?」

 どうかな?と言われましても⋯⋯

 結局、試用期間のまま上手くいくかもしれないけどセオドア従兄にいさまを傷つけるかもしれない可能性と、エリオス殿下の提案に乗って男女交際の初心者の真似事をして、男性と付き合うとはどういった感じなのかを知り、他の男性を見る訓練になるか、を天秤にかけた結果──


「一般的な、政略結婚相手の婚約者同士がどう過ごすものなのか、男性がどういう行動をとった時にわたくしはどう対応するべきなのか、お教えいただけますか?」

 第二王子殿下の提案を蹴る勇気がなかったのもあるけれど、初めから結婚する筈のない相手が、その関係性を踏まえた上で、常識の範囲内で交際の手解きをしてくださるというのなら、望まれていると判っているセオドア従兄にいさまを傷つける可能性よりも気が楽だと思ったのもある。

「英断だね、これからよろしく、エステル」

 殿下は、眩しさに胸がチクリと痛むキラキラとした笑顔で、私の手をとり軽く握った。

 やっぱり、殿下が急に手を取っても、ゾワッとしたり嫌悪感が涌いたりはしなかった。


   ꙳꙳꙳


 学生プロム会場のテラスでエリオス殿下に提案され、擬似交際を承諾したことは、ラケルには言えなかった。

 王族の個人的なプライベートに関わる事でもあるし、練習であって本当の交際じゃないし、恋愛訓練ってなんなのかと訊かれれば説明しにくいし、気恥ずかしいのもある。
 なにより、ラケルの耳飾りはセオドア従兄にいさまの風霊が擬態したもの。見聞きした情報を、精霊ゆえに善悪の別なく感情に左右されて選別されることなく、記憶される。
 前回のように、ラケルがガードしてもセオドア従兄にいさまに再生されるかもしれないという心配も少しあった。


 交際の手解きを受けるとあってか。

 朝、寮の食堂で女子職員に人気という、発酵させた酪のフルーツサラダと、カリカリベーコンと削りチーズを添えたオートミールをいただいて、学校に向かおうと玄関に出たら、エリオス殿下が待っていた。

「おはよう、エステル。支給品のローブとは思えないくらい、小物の合わせ方が上手くて、よく似合ってるね」

 そう。魔法省の職員用耐魔ローブは、着心地も良いしシンプルで気に入っている。手持ちのタリスマンやアミュレッドと合わせて、コート代わりのガウンを重ね着するだけで、魔法士らしい装いが完成する。下はいつものように、ワイドフレアキュロットを穿いている。パッと見は足首まであるロングフレアスカートだろう。

「行こうか」

 殿下に手を取られ、踏み台ステップを登って馬車に乗り込む。

 王宮の左翼棟に繋がる魔法省から王立魔法士学校までは、さほど遠くない。
 けれど、学生の多くは、研究資料や魔道具などを積んで馬車で通うので、それに倣う。

 馬車の中は、少し緊張した。
 今までの、第二王子殿下と臣下の一令嬢としてだけではなく、昨晩からは、男女交際を知るべくその真似事を始めたのだ。

「そんなに固くならなくても、本当に交際する訳じゃないんだから、今まで通りに⋯⋯と言っても、今までも固くなってたか。肩の力を抜いて。それじゃ肩が凝るし、その内貧血を起こすよ」

 今。今、貧血を起こしそうです。

 馬車の中。崖の下から救い出していただいた時以外、ずっと私の対面に座られていたのに、今は肩がくっつくくらい寄り添って隣に座っているのだから。

 エリオス殿下は、アメシストの美しい眼を細めて、微笑んで私を見ていた。




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