死んだ日の朝に巻き戻りしました  ら、溺愛生活がリスタート?

ピコっぴ

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4 困惑と動悸の日々

4‑9 殿下の瞳

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 実習生達に、魔力操作の単純な作業ゆえのコントロールの難しさや危険性を、なるべく威圧的にならないように、丁寧に説く。
 先ほどのオッシを見ていたので、皆、真剣に聞いている。

 エリオス殿下に任された、講義の纏めになっただろうか?

 解散して、休憩に入る者、次の授業の場に移動していく者を見送り、私は救護施設へ向かう事にした。


 また、殿下のアメシストの綺麗な瞳が赤かったように思う。

 充血とは違う。それなら炎症や疲労から白目の血管が膨らんだり浮きあがったりして、或いは内出血してなるものだ。
 殿下の、薄藤色アメシストの虹彩部分が紅かった。眼の色が変わるなんてこと、あるだろうか?
 ブルーやグリーンの瞳の人が、緊張や貧血で血の赤味が薄くなってブルーグレーやグレーになることはあるかもしれない。
 でも、血の色そのものに変わるなんて聞いたことがない。

 殿下は、何かを隠している?

 前回魔力枯渇を起こして倒れた時に赤かったのも、誤魔化されたような気がする。


 救護施設では、簡易ベッドに寝かされて眠るオッシを見守る殿下が、椅子に座っていたけれど、やはり疲れているように見えた。

 クレディオス様の精霊達を集めた術式は、私には解咒出来ないかもしれないほどに複雑且つ高度だったけれど、先ほどのオッシの魔力塊程度なら、殿下が疲れたり体調を崩されるとは思えない。
 山津波と化した土石流や王城付近の土台を数日間支え続けた事を思えば、当時私が魔力譲渡を施していたとは言え、今回はそんなに消耗するはずがないのだ。

 いったい、エリオス殿下に、何が起こっているの?



「エステル。授業は無事終わったかい?」
「はい。殿下の知識には及びませんが、魔力操作という基礎がいかに重要で、基礎にして困難な事なのか、先ほどのオッシを見ていたこともあって、皆、理解してくれたと思います」
「そうか。うん、それなら、オッシも怖い目を見た価値はあっただろう。今後はもっと慎重になるだろうしね」
「はい」

 ハァと肩で息をする殿下。やはり勘違いではなく、かなり疲れているように見える。
 昨夜、送っていただいて分かれてから、王城で魔力を消費するような事柄でもあったのだろうか?

 魔力は枯渇するほど消費している訳ではないにしろ、疲労回復が上手くいっていないようだった。

 殿下の前に立ち、両手を取る。

「エステル?」

 目を閉じて呼吸を整え、殿下の負担にならないようゆっくりと私の魔力を注ぎ込み、疲労回復を促す咒紋を脳裏に描き、エリオス殿下へと魔力と共に移す。

「ああ、温かいね。とても優しい力だ⋯⋯」

 殿下のお身体の不調を探るサーチすべく失礼にならない程度に探っていくと、目の辺りが熱く、冷たく、魔力が集まっているのにその流れが不自然で、まるで呪いのようだった。

「殿下、その目は⋯⋯」

 まるで、その事に触れることは許さないとばかりに、突然手を強く引かれ、勢い余って殿下の膝の上に倒れ込む。
 そして、そのまま斜め向きの姿勢を直す隙もなく背後から抱き竦めるように拘束された。

 殿下の、私のお腹へまわる手が、わずかに震えている。

 震えて私を抱きしめるのが縋るようでもあり、その様子はまるで、魔力循環が滞ったり負担になっている魔力が急に強くなった成長期の子供によくある、魔力障害にも似ていた。

「エステル。済まない。オッシはしばらく目覚めないだろうし、救護所回復士は、魔法省へ癒し姫を呼びに行っているから⋯⋯ 戻るまでだけで良いから、しばらく、このまま、君の魔力の、流れを、霊脈、を感じ、させて、欲し」
「⋯⋯はい」

 魔力障害を起こした子供は不安になるし、恐怖を感じるという。それは、その状態が続けば魔力暴走を起こしたり、身の内を灼いたり、危険である。
 幸い、私もエミリアも魔力障害も暴走も起こしたことはないけれど、クレディオス様のあの時の様子を思い出して、殿下がああなったらと思うと、抱き竦めるように拘束されていても、否とは言えなかった。




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