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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

39.恩人への、初めての隠し事③

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 サヴィアの世話している、カインハウザー様の畑を避けて作物をこっそり食べ、サヴィアの畑はおトイレに、林の中で隠れ住んでいた、金茶色の長めの毛並みの狼犬。
 彼? 彼女? は、先日発生した、闇落ちと呼ばれる魔獣が街の近くに現れた事件で、襲われた私を助けようとしてくれたのか、魔獣に躍りかかって、倒してくれた。

 サヴィアの言うには、その時に怪我はしなかったし穢れに感染はしなかったそうなのだけど、体力や魔力などを大量消費して衰弱状態で、お肉を食べようと、豆狸を狙ってみたものの失敗、崖から転落したと言うのだ。

 その時に負った怪我で更に弱ってしまい、ここ2日間、寝たきりなのだという。

「なんとか、創を看せてくれないかしら?」
《野生動物なら無理デショ。でも、シオリを助けようとしたのなら、もしかしたら、以前は飼われてた犬なのかしらね?》

 そろっと、一歩一歩、近づいてみる。

 もし、飼い犬だった経験があるなら、言葉、解るかな?
「こんにちは。あの、こないだは、助けてくれてありがとう。本当に、感謝してます。妖精達もお花畑も、私も街も、みんな助かったわ」

 驚かさないように小さめの声で話しかけてみる。
 狼犬は、閉じてた片方の眼も開いて、こちらを向く。やはり、言葉、解るのかしら。
 少なくとも、助けてくれたし、人間に興味がない訳でもないだろうし、優しい子なんだと思う。

「怪我をしてるんでしょう? その、まわりにある葉っぱね、怪我にいい薬効があるの。怪我を看せてくれないかしら?」

 唸ったり牙をむくでもなく、立ち去るでもない。

 一歩近づく。

 ギロッと眼力が強くなるけど静かにそこにいる。

「怪我、痛いでしょう?」

 一歩、二歩、近づく。

「大丈夫よ? 怪我を看るだけ。この木の葉はお薬になるから、塗るだけ。ね?」

 そろーっと近づいて、嫌がらない様子をうかがいながら、手を伸ばせば届くくらいの距離まで近づけた。

 やはり、唸らない。

 そっと手を伸ばす。

 それでも唸らない。

「怖がらないで。痛いかもしれないけど……みせてね?」

 降り積もった葉をそっと払い、毛をなでながら掻き分けて、嫌がらないので、そのまま傷を探す。

 あった。背中側からお腹にかけて、ザックリ切れた痕が…… 見てる方が痛い。

 土や細かい木のクズが体中はもちろん、傷口まわりにもいっぱいついてる。衛生的によくないよね。

「ねえ、サヴィア。お水持ってきて傷口洗った方がいいよね?」
 振り返って訊くと、サヴィアが答えるより早く、水霊がふよふよと寄って来て、狼犬の全身を包み込んだ。

 狼犬は驚いて身動ぎしたけれど、体を清めてるだけだと解ったのか、大人しくなる。

 ひと通り狼犬の体を洗浄すると、水霊は川の方へふよふよと去っていった。

「傷に効く、いい葉っぱなの。痛いだろうし染みたらごめんね」

 カインハウザー様に教えてもらったように、葉を重ねて揉み合わせ、ちょっと青臭い感じの汁が出て来たので、傷に上から落としてみる。

 かなり痛むのかびっくりしただけなのか、大きく体がはねる。

 エルバレオが分けてくれてる葉を幾つか使い、更にサヴィアの勧めで、揉んで汁を搾った後のくしゃくしゃになった葉を傷口に当て、メリッサさんに心の中で謝りながら、エプロンをワンピースから外して、傷口を包むように胴体に巻き付けた。

「包帯持ってないし、この方ほうがしっかりしてるんじゃないかな。保健体育の本でも、三角巾を使った被覆包帯とか圧迫包帯止血とかって習ったもの」

 傷口を直接触らないように、エプロンのたすきゆるまないように縛る。

 そこまでの私の行動を、黙ってジーッと見ていた狼犬は、ペロリと私の手の甲を舐めた。

 ありがとうって言ってくれてるのかな?




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次回、Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

 40.恩人への、初めての隠し事④

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