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第一章 辺境の町
第206話 白チーズ茸
しおりを挟む「ローザ、念のため少し離れていてくれるか。樹液が飛び散ると危ないからな」
「うん、分かった」
私が後ろに下がったのを見て、ラグナードが土魔法を放つ。彼の土魔法はレベル3とのことで威力が高い。さっそく、霧の魔樹の核に命中した!
危なげなく一撃で討伐してくれたので、続けて生活魔法の『乾燥』を二人で使い、一気に水分を抜いて仕上げてしまうことに。液体だと持ち運びしにくいし、ある程度まで固めておきたいんだよね。
それに液体より固形物にしておいた方が買取価格も上がるらしいし、水分が抜けると小さくなるから嵩張らないし……。
そうして出来上がったものは見た目が琥珀色で、消化しきれていない何かの骨みたいなのが残ったまま固まっちゃってるけど、スライムぐらいの柔らかさがあった。
後で錬金術師が不純物を取り除いてきれいにしてから硬化するそうなので、この状態で納品したらいいみたい。
水分が完全に抜けて硬度が増すと直接触れても大丈夫だけど、今の状態で触ると皮膚が溶けてしまうそうなので、ラグナードが専用の手袋と革袋を使って回収してくれた。
最後に聖魔法で『浄化』してから『魔力感知』スキルを使い、聖魔水晶を探してみたんだけど、残念ながらここにはなかったんだよね。どうやら先程の樹液溜まりに全て溶け込んじゃったみたい。
少しがっかりしてたら、その方が樹液により多くの魔力が含まれている事になるから素材としての価値が上がって、買取価格も上昇するんだと教えてもらった。
意図したわけじゃないけど、一番いい結果になったみたいです。よかった。
回収後は、魔力に惹かれて魔物が寄って来ない内にと、リノのいる樹の下まで急いで戻っていった。
彼女と合流した後、ラグナードの『索敵』を上手く使って、魔物を避けながら移動を開始した。
これ迄のところは昨日よりも魔樹が少なく、スモールトレント付きの個体など、大きくて緊急性の高いものにも出くわしていない。
この辺りは思ったより森の状況はひどく無さそう。このまま見つからないといいなぁ。
短いお昼休憩挟んで、また調査を再開し道なき道を進んでいた、その時……。
前方に白くて丸い謎の物体がいくつもくっついている、奇妙な樹木が見えてきた。
何だろ、これ?
気になったので『鑑定』してみると、この白いのは「白チーズ茸」という茸らしい。美味しそうな名前! なんかもう、聞いただけで美味しいのが想像できちゃうっ。
ワクワクしながら更に詳しく視てみると……。
【 白チーズ茸
効能:滋養強壮作用
可食:生食不可
チーズのような風味があり美味
乾燥させると長期保存できる
採取:球型の茸で軸は殆どないが、樹の幹にしっかりくっついている
25~50cm程の真っ白な茸を採る 】
魔法的な効能はないみたいだけど栄養豊富みたいだし、わざわざ美味って『鑑定』に出てるくらいだから絶対おいしいよね。食べてみたいな!
ラグナードによると、居酒屋でも人気の食材らしく、雨の月から夏にかけてが主な収穫時期だから、特に今の時期は品薄で買取価格もいい値が付くそう。
薄く切って軽く両面を炙ってやると、チーズの風味がいい感じにでた美味しいおつまみになるし、一定の温度を越えるとトロトロに溶けちゃう性質があるみたいで、そうして食べるのもまた堪らなくいいんだとか。
小鍋で溶かしチーズフォンデュのようにして食べたり、パンの実を食べやすい大きさに切った上に乗っけてグラタンのようにして食べたりと、お店によって創意工夫がされ、とっても美味しいらしい。
なんか聞いてるだけでお腹空いてきちゃったっ。
応援ありがとうございます!
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