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第一章 辺境の町

第222話 報告

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 空いている受付で、まずはいつものように買取の査定をしてもらう。

 ここ数日は主に調査をしている関係で、持ち込んだ魔石は少量だったため、待つことなくすぐに終わらせてくれた。

「さっそくだが、今日の調査結果を報告したい。急ぎの案件だ」

「分かりました。ではあちらでお願いします」

 報酬を受け取った後、例の件をギルドに伝えようとするとすぐに、カウンター横に設置されていたテーブルに案内された。

 ――いつの間にこんなスペースが……昨日まではなかったよね?

 そんな疑問が顔に浮かんでいたんだろう……近辺の森まで出てきた、迷いの魔樹発見に端を発する一連の事案は緊急性が高いので、こちらの臨時カウンターで専用に聞き取りする事になったんですと説明してくれた。わざわざ二階まで上がらなくてよくなったのはありがたい。



 先程とは別の、同じく老齢の男性職員さんが向かいに座る。

「お三方ともはじめましてですね。本日は私が対応させていただきます」

 こちらに軽く頭を下げて挨拶してくれたこの職員さんは、ラルフさんというらしい。
 見ない顔だと思っていたら、こうした非常事態の時に臨時で内勤の手伝いに来てくれる人みたいです。

 聞けば、すでに退職したギルド職員の中から、長年勤めあげた経験豊富な者を有事の際に臨時召集できる体制が作り上げられていて、退職の際に慰労金と引き換えに暗黙の了解的に登録させられるんだとか。

 というか異世界でも退職金とか貰える事にびっくりなんですけどっ。何かすごくない? 人の思考って世界が違っても似通ってくるのかな……。
 ともかく、冒険者ギルドの限られた資金で滞りなく運営する為にと考えられた制度らしい。

 ラルフさんも退職と同時に登録したとかで、今朝がた緊急召集されたんだと苦笑しながら教えてくれた。

 なるほど。 ギルド職員さんの、この突然の老齢化はそうゆう事情だったのかっ。

 エドさん含め、いつもいる比較的年若い職員さん達は全員、すでに迷いの魔樹の討伐に出払っているからいないんだって。
 彼らもこの町の戦力として頭数に入っていたんだ。そこまで総動員されているとは知らなかった……ご苦労様です。



 この緊急時の臨時雇用制度は、町を存続させるための救済措置として考えられたみたい。
 ボトルゴードの町のように儲けが薄い、旨味の少ない辺境だと上級冒険者が中々来てくれず、防衛が手薄になるからって。
 それにギルドの職員さんたちも、冒険者としての経験があって強い人が優先的に派遣されて来ているらしい。
 危険な討伐に参加して大丈夫なのかと思ったけど、余計な心配だったよ。皆さん優秀なんですね。

 彼らは今日、まだ会ったことのないギルドマスターも含めて、この辺りで一番危険で手薄になっている南の森の方へ行っているんだとか。
 領主様とも連携して活性化しているダンジョンの警戒と、魔樹の捜索及び南の森の魔物の間引きをしているらしくて、いつの間にか冒険者ギルドは完全に臨戦態勢に突入していた。



「それで、急ぎの報告と言うのは?」

「……北の森でこれを見つけた」

 例の、見た目はごく普通の茶色い蔓。一部を切断し、持ち帰ってきたものを袋ごとカウンターに置いた。
 一定量の魔素を蓄え魔核が形成されるまでの間、休眠している状態になっているもの。

 つまり、死んだ振りをしている訳で、魔力もほぼ感知出来ないし、見分けるのが難しいと思うんだけど……。




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