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第一章 辺境の町
第177話 『料理』スキルが大活躍・後編
しおりを挟む「うん、美味しいですっ。初めて飲みましたけど、濃厚なお味なんですねぇ。それに何だか体もポカポカしてきました」
「そうだね。少量なのに満腹感もあるし……この茸の特徴なのかな?」
「ああ、栄養価が高くて吸収率がいいんだよ。もう少し保存が効いたら携帯食に出来るんだが……」
「本当だよね。これだと何日くらい日持ちしそう?」
「う~ん。よくて六日ってとこか?」
「やっぱり傷物だと保存期間が短くなるんですね」
これは早めに飲みきるしかないみたい。まあ、食欲が爆発しているリノがいるから、絶対に余るってことはないだろうけどさ。
じゃあ次は本命のスモールボアのお肉を焼いていこうかな!
干し肉作りは後回しにして、ラグナードやリノが枝肉から骨を外してくれた塊肉を使う。
手に取ってみると、弾力があっていい赤身っ。これはシンプルにステーキにしよう。
分厚く切って、味付けは香草塩だけにしてと。少し味を馴染ませておきたいし、先にタレを作っておこう。
たくさんあるから、味に変化を加えてくれるものがあった方がいいよね。その方が飽きずに美味しく食べれそうだし。
まず一つ目は、手にいれたばかりの魚醤を使ったものにする。塩と川魚で作っているので独特の臭いがするなぁ。色は飴色できれいなんだけどね。
そのまま使うのはアレなので、魚醤に黒鞘豆草と辛草を入れてひと煮立ちさせてみた。
ピリリと辛い辛草を入れることで味が引き締まり、黒鞘豆草で魚醤独特の魚臭さがいい感じに取れたと思う。うん、成功かな。
次に、ミントチャツネっぽいものを作る。辛草と涼草をペースト状になるまですりつぶし、それと大体同量の香草塩と入れて混ぜる。
そこへ風味付けとしてダイダイの実の果汁を少々加えたもの。これ、前に一度作った事があるんだけどお肉によく合うんだよね。
ここまで目分量なのに、プロの仕事って感じに仕上がった。自分で作っておきながらアレだけど、さじ加減が絶妙というか。
本当、『料理』スキルって便利だなぁ。美味しいが約束されているようなものなんだよ。素敵ですっ。
とりあえずこれで二種類のソースの用意が出来たし、ステーキを焼いていくことにする。
二人にも食材の調理を一旦中断して、座ってもらった。ぜひ焼きたてを食べて欲しいからね!
食欲大魔人様がいるから、一度に大量に作っても大丈夫なはず。鉄板の上に並ぶだけおいていき、僅かな隙間にも水白茸や水光茸なんかをのせてみた。
うわぁ、凄い肉汁! これだけあるといっぱい出て来るね。茸のいい風味もついていることだし、これを使ってもう一つソースを作ってみようかな?
同量の魚醤と合わせて、その中に買ってきた果実酒を少し垂らしてっと。どうかな? うん、ほんのり甘いコッテリしたタレに仕上がってる。こうゆうのもいいね!
これで三種類のタレが揃った。ピリ辛と甘辛いのと、香草風味のものと。
どれも『料理』スキルのおかげで、肉の味を引き立ててくれる味になったはず。
そのタイミングでスモールボアのお肉も焼けてきたよっ。両面に程よく焼き色がついてて、食欲をそそりますねぇ。見ているだけで涎が出そう……じゅるりっ。
軽く香草塩で下味をつけただけなんだけど、何故こんなにも食欲のツボを刺激する匂いが出るのかっ。各種茸もどんどん焼けてきているけど、なによりも先にこのお肉を食べたい!
お好みで好きなソースを選んでもらえるように小皿に取り分けてテーブルに置いてから、ジュージューと音を立てる分厚いステーキを鉄板から下ろす。
宿泊客用の炊事場には、すぐ横に食事用のテーブルや椅子まで設置されているのがいいよね。出来立ての熱々を即、その場で食べられるなんて素敵です。
火をごく弱火に調節してから果実酒で乾杯し、森の恵みに感謝していただくことに……。
ほこほこした湯気を立てるお肉にスッとナイフを入れる。途端に溢れ出る肉汁! 焼いてる時にも結構出ていた気がしたけど、あれは極一部だったみたいね。
分厚くカットしたからか、お肉の中に殆どの肉汁を閉じ込めることに成功した模様です。
何これプロの仕事っぽいよっ。『料理』スキル万歳! もう堪りませんね!?
応援ありがとうございます!
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