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第13話 理由

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 ――アンドレアの冷静な指摘に、思わず狼狽えてしまったレオン。

 しかしそのタイミングで、ユーミリアからこぼれ落ちそうな、涙をいっぱい含んだ瞳を向けられる。

 上目遣いですがるように、うるうると見つめられて保護欲が刺激されたらしい。

 勢い込んで今度はこう言ってきた。

「い、一瞬の隙を突かれたんだっ。丁度その時、彼女に頼まれ飲み物を取りに行っていたのです。少しだけ目を離した、その隙にやられたのですよ。虎視眈々とユーミリア嬢に嫌がらせをする機会を狙っていたに違いありません! こんな姑息なやり方、優しい彼女は思いつきもしないでしょう。貴女の指示に決まっているっ」

 ……成る程、飲み物を……ねぇ?

 つまり、仕掛けたという訳ですのね……こうしてわたくしを悪役にするために。

 それは確かに、虎視眈々と捏造する機会を狙っていたに違いありません。

 ……しかし、このような稚拙な手に、揃ってコロコロと引っ掛かってしまわれるだなんて、あまりにも残念過ぎますわ……。

 あなた方、少しチョロすぎではありませんこと?



「……そのパーティーにはわたくし、諸事情があって出席すらしておりませんのに? 何をどう狙って出来るというのです?」

「ふんっ。そこが貴女の腹黒いところです。自分の手を汚さずに、他の令嬢方を使ってあんな卑劣な嫌がらせをしたに違いない。可哀想に彼女は貴女に怯え、ひっそりと泣いて耐えるばかりで……見ていられませんでした」

「仮定の話をいくらおっしゃられても、何の証拠にもなりませんわ。それに彼女の涙と主張だけを聞いて、一方的に真実であると信じてしまわれる方々と、公平な議論が出来るとは思えません」

「策謀を張り巡らす貴女と違い、純真そのものの男爵令嬢であるユーミリア嬢が嘘をつく筈もないし、その言葉は疑い様もないだろう。それだけで充分ではないかっ」

 ――何なんですの。

 証拠を挙げ証明していく場での、その精神論的な理屈は……?

「……では、公爵家令嬢であるわたくしがそんな事実はないと証言すれば、それも充分な証拠だと言えますわね?」

「何だと、口先だけで証拠もない貴女が何を言う!?」

 ……。

 わたくし、ここで笑って差し上げるべきなのかしら?

 彼女の側にいるだけで何故か視野が狭まり知能が低下し、頭の中までお花畑になってしまうみたいですわね……。




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