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第26話 お茶会 ※9月22日加筆
しおりを挟む毎日三食、たっぷりと用意される美味しい食事と、食事の合間に朝夕の二回、甘くて美味しいお菓子を食べられるお茶の時間。
砂糖を惜しみなく使って作られるお菓子など、平民だった頃は、父が母の元に訪ねて来た時にしか食べられなかった贅沢品だ。
それが今では毎日食べられるなんて信じられない。甘いものに目がない母と一緒に、今までの暮らしでは味わえない甘味を喜び、優雅な時間を楽しんだ。
正妻の娘のお下がりだったが、きれいなドレスもたくさんもらった。
ドレスだけではない。用意されていたユーミリアの部屋には、子供用の可愛いらしいデザインながら、高価そうな家具一式の他に、たくさんのぬいぐるみや素敵な恋愛小説、綺麗な装身具なんかも揃えられていた。
これは、娘の将来への期待を捨て切れなかった父が、正妻に隠れてこっそりと用意してくれたものだった。全部、自分だけのものにしていいらしい。
「いずれはドレス一式、きちんと仕立ててやる。何と言っても、お前は聖女様になるかもしれない大事な娘だしなっ」
「うん。わたし聖女様になる!」
「ああ、きっとなれるともっ。ユーミリアはこんなに可愛いんだからな! ははははっ」
正妻に言われて一度は冷静になったものの、ドリー男爵は全然諦めていなかったのである。
そして、ユーミリアも父に乗せられるまでもなく、すっかりその気になってしまっていた。
貧しい平民の生活から一変、まるで絵本に出てくるお姫様のような暮らしになり、子供だったユーミリアは舞い上がっていたのだ。
――聖属性持ちで本当に良かった、と彼女は思った。
貴族って凄い、男爵家に引き取って貰えた自分は、なんて幸運な女の子なんだろうとその時は思っていた。
貴族の令嬢としての生活をスタートさせたユーミリアには、もう一つ夢中になったものがあった。
ツンと澄ました意地悪な貴族令嬢達から、想い人を奪ってやることである。
―― 初めてそれに愉悦を感じたのは、年の近い貴族の子女だけを集めて定期的に開かれるお茶会でのこと。
そこでは同じような身分の令息、令嬢達がたくさん、親に連れられて来ていた。
目一杯、おしゃれをして着飾ったユーミリアもワクワクしながら参加したのだが、そこで女の子たちから自分の思い描く未来を否定されたのである。
このお茶会は、自分を上手に売り込んで人脈作りをするためにあるんだよ、と事前に父が教えてくれていた。
だからユーミリアは、自分は聖属性持ちで将来は聖女様になるんですとみんなに教えてあげれば、友達になりたいと思う子はたくさんいるだろうと考え、実行したのだ。
将来有望な自分と今から友人になっておけば、彼女達の未来も明るいだろうし、きっと喜んで受け入れてくれると思ったのに……。
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