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第127話 最強の味方
しおりを挟む妹の嬉しそうな顔を見て、兄二人は気づかれないように視線を交わした。
彼女には言えないが、アンドレアの将来にほぼ自由はない。
まだ五歳にもなっていないとはいえ、王家に王女が生まれていない今、彼女は次の聖女候補にも、王子達の妃候補にも名前が上がっているのである。
聖女に関しては聖属性の素質が必要なのだが、アンドレアは王家の血を引いているがゆえに期待されているのだ。このところ魔力が強まってきているのも、その期待に拍車をかけていた。
(今くらいは夢を見せてあげたい……)
もうすでに可愛い妹の一番から外されてしまったのには全然納得いかないけれど、それが兄達の本心だった。
「よし、じゃあその時が来たら、君をかけて竜と勝負してやろう。どうだい、ジェフリー!?」
「そうだね、ユージーン兄様。僕達の妹をしっかり守れる奴か、ちゃんと確かめないといけないもんね!」
張り切る二人の様子がおかしかったのか、思わずと言った感じでアンドレアが笑った。
「まあ、兄様たちったら」
「アハハハッ」
「うふふふっ」
妹を笑顔にするのは、ずっと自分達の役目だと思っている。
だから竜に負けるのはちょっぴり悔しいけれど、妹の嬉しそうな顔にまあいっかと一緒に笑ったのだった。
◇ ◇ ◇
「……そんなこともあったね。だけど、夢物語だとも思っていた。それでも君の心を軽くしてくれるなら……と」
「本当にそうですわね。あの頃の兄様達との想い出は、今でも大切な宝物ですわ」
「うん、私もジェフリーもそうだ。同じ想いだよ」
柔らかく微笑みながらいうアンドレアに、ユージーンも懐かしそうに頷く。
「だから、びっくりしたんだ。こんな奇跡が起こるとはね」
「……実をいいますと、私もまだ実感がわきませんの」
「そうだろうねぇ」
聖女に決定したと言う喜びの手紙が届けられたばかりだったのだ。
その上、更に竜の半身に選ばれるとは、彼女達の想像を越えていてた。
「驚きもあるだろうが、最強の守護者がついてくださっていると思うと心強い限りだ。違うかい?」
「ええ、ユージーン兄様。 恐れ多いことですが、とても大事にしてくださいますし」
兄の問いに控えめに答えるアンドレアだが、とても大事というか、周りが見えなくなるほど大切に、そして彼女がいなければ生きていけないというかのように情熱的に愛してくれている。
絵本の中の世界のまま、竜から一途に愛される彼女は、結果的にこれ以上ないほど、身の安全を保証されたといえるだろう。
緊迫する情勢の中で、これほど心強いことはない。
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