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第一章 ヒロイン編

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知らなかったとはいえこんなことってあるのでしょうか?

「マッマシューリ殿下、人違いではありま「リティアナ、マシューリ殿下なんて言わずいつものようにと呼んで。ああ、俺が送った髪飾りつけていてくれて嬉しいよ。ほら俺も胸元につけていてお揃いだ。」

私の疑うような声を遮るように放たれた言葉とマシューリ殿下の胸元にある私とお揃いの黒いバラを目を見開いて見つめていた。
確かに同じですわ。
黒のバラって珍しいと思ってましたが……マシューリ殿下の髪も黒色……。
では………本当にマシューリ殿下がマシュで文通相手??
とはいえ、マシュなんて軽々しく皇太子のことは呼べません。
私は知らないとはいえ隣国の皇太子でヒロインの攻略対象者と関わりを持っていたってこと?

「今日は逢えて嬉しいよ。俺はこちらの学園に留学するからこれからはいつでも会えるな。」

「えっ!?」

時期が早くなってませんか??
私の知ってる時期よりだいぶ早いですわ。

「文から感じる可愛いらしさも好きだったが、実際のリティアナは想像以上で本当に可愛いな。」

うっとりした表情で私の髪飾り黒バラを触りながら私の髪をとりキスをした。
隣国の皇太子とはいえ、カルの婚約者である私にやりすぎですよね。
こんな展開があるなんて聞いてません。
横を向くのが怖いですわ。
腰を抱き締めているカルの手に力が入ってることはマシューリ殿下とやり取りをしながら感じてましたが怒ってますよね。
それに……カルは私の文通相手がマシューリ殿下だと言うことを知っていたようですわ。
それでいつも私がマシュの話をするとき不機嫌でしたのね。
いつから私はカルの地雷を踏み続けていたのでしょう………恐ろしいですわ。

殿。知らなかったとはいえ文通をしていたこととても嬉しかったですわ。長年私と交流をありがとうございました。」

あえて私はマシュとは言わず殿下と呼びましたわ。
一線引かないとカルが怒ってしまいますし何よりも皇太子に対して恐れ多いです。
マシューリ殿下を見ると不機嫌な顔をしていてさっきまでの笑みが消えていました。

「俺のことをと呼んでリティアナ。ここでは人が多すぎる。改めてファシリック公爵家に。」

私の頬を手で一瞬触れてから去っていかれました。
とても無駄のない動作で触られましたが、隣のカルが目に入ってなかったのでしょうか?
確実にカル睨んでると思いますが………私でさえ横を向けないでいるのに。
ここにヒロインがいなくてよかったですわ。
カルのことで目をつけられてる………いや、されてますのにマシューリ殿下のことまでも加わると考えるだけで恐ろしいですわ。

ゾクッと背筋が凍るような視線を感じ視線の方に目を向けると身体が硬直した。
目があった人物がヒロインモーリス男爵令嬢でした。
………なんでいるの?
とても恐ろしい殺気が駄々漏れしてますが隣はあのバカブレーリ兄だから気づけないだろう。
あの感じだとヒロインもマシューリ殿下を狙ってるのかしら……巻き込まれたくない。
カルのことでも反感をかってるのにマシューリ殿下までもとなるとなにされるかわかったものじゃないわ。

「リティ、あとで色々とお話をしようか。」

隣から聞こえてきた声にハッとしてカルを見上げると、今度は満面の笑みのカルに凍りついた。
声は不機嫌なのにその笑顔はこの後を想像するだけで恐ろしいです。
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