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「学校が終わったら、お姉ちゃんにあやまりに行こう」
そう思っていたナオ君ですが、いざお姉さんの家の前にくると、こわくなってしまいました。
インタホンを押そうと手を伸ばしては引っ込め、手を伸ばしては引っ込めと、もう何度もくり返しています。
今日はやめにして、明日あやまろうかな。
そんなことを思ったやさき、ナオ君の肩にポンと手がおかれました。
おどろいて振り返ると、そこには制服を着たミユキお姉さんが立っていました。
「何してるの、ナオ君」
お姉さんはいつものようにニッコリと笑っています。
その笑顔を見て、ナオ君は少し安心しました。
きっと、ケガをうつしたことを怒っているだろうなと思っていたのです。
そうだ。ケガ!
そのことを思い出して、ナオ君はお姉さんを見ました。
ナオ君がケガをしたのは右のヒジ。
でも、お姉さんのヒジは制服にかくれて見えません。
「お姉ちゃん、ケガは?」
ナオ君があわてて聞くと、ミユキお姉さんは「うん」とうなずきました。
「ちゃんと、とんできたよ」
そういって制服をめくると、お姉さんの右ヒジにはすりむいたような傷がありました。
まちがいなく、ナオ君のケガです。
「このケガは転んですりむいたの?」
「うん。ドッチボールをしてて」
「痛かった?」
「うん。最初はがまんしようとしたんだ。でも、泣きそうになって。ケンタ君にも『ナオが泣くぞ』って言われて」
「そっか」
「お姉ちゃん、痛かった?」
「うーん」
ミユキお姉さんはちょっと首をかしげて、うなずきました。
「そうだね。ちょっとだけね」
「ちょっとだけ?」
ナオ君は驚いた顔でお姉さんを見ます。
「痛くて泣いたりしなかったの?」
「うん。泣かなかったよ」
「どうして泣かなかったの?」
首をひねるナオ君に、お姉さんは笑ってこたえました。
「転んでケガをするよりも、もっと痛い思いをしてるからかな」
「もっと痛いこと?」
「そうそう。その痛さに比べれば、転んでケガをする痛さなんて何でもないの」
「…じゃあ、ボクも転ぶよりも痛い思いをすれば平気になるの?」
「そうだね。…あ、でも」
うなずいてから、お姉さんは少しからうような目でナオ君を見ました。
「ナオ君、そういうケガをしたら私にうつしちゃうから、だめかも」
「え、うつさないよ!」
「えー。うつすよ」
「うつさないってば!」
むきになるナオ君に、お姉さんは言います。
「だって、転んだケガの痛さくらいでうつしちゃうんだもん。もっと痛いケガをしたら、なおさらうつしたくなるでしょ」
たしかに、お姉さんの言うとおりです。
転ぶよりもずっと痛い思いをしたら、きっとすぐにおまじないをとなえてしまうでしょう。
でもナオ君は、お姉さんにバカにされたことがくやしくて、怒ったように言いました。
「うつさないったら、うつさない!」
「ほんとに? 転んだケガくらいでうつしちゃうのに?」
「じゃあいいよ! 転んでケガしたって、もううつさないから!」
思わずそんなことを言ってしまいました。
転んでケガをしたら、ナオ君はまた泣いてしまうでしょうし、ケンタ君たちにも笑われるにちがいありません。
それはとてもイヤなことでしたが、お姉さんに弱虫だと思われるのはもっとイヤだったのです。
「ぜったい、うつさないから!」
「約束する?}
「約束する!」
ナオ君はそう言うと、くるりとお姉さんに背をむけてけけだしました、
そして、一度立ち止まってお姉さんを見ると、
「ぜったいにうつさないから!」
さけぶように言って、またかけていきました。
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「学校が終わったら、お姉ちゃんにあやまりに行こう」
そう思っていたナオ君ですが、いざお姉さんの家の前にくると、こわくなってしまいました。
インタホンを押そうと手を伸ばしては引っ込め、手を伸ばしては引っ込めと、もう何度もくり返しています。
今日はやめにして、明日あやまろうかな。
そんなことを思ったやさき、ナオ君の肩にポンと手がおかれました。
おどろいて振り返ると、そこには制服を着たミユキお姉さんが立っていました。
「何してるの、ナオ君」
お姉さんはいつものようにニッコリと笑っています。
その笑顔を見て、ナオ君は少し安心しました。
きっと、ケガをうつしたことを怒っているだろうなと思っていたのです。
そうだ。ケガ!
そのことを思い出して、ナオ君はお姉さんを見ました。
ナオ君がケガをしたのは右のヒジ。
でも、お姉さんのヒジは制服にかくれて見えません。
「お姉ちゃん、ケガは?」
ナオ君があわてて聞くと、ミユキお姉さんは「うん」とうなずきました。
「ちゃんと、とんできたよ」
そういって制服をめくると、お姉さんの右ヒジにはすりむいたような傷がありました。
まちがいなく、ナオ君のケガです。
「このケガは転んですりむいたの?」
「うん。ドッチボールをしてて」
「痛かった?」
「うん。最初はがまんしようとしたんだ。でも、泣きそうになって。ケンタ君にも『ナオが泣くぞ』って言われて」
「そっか」
「お姉ちゃん、痛かった?」
「うーん」
ミユキお姉さんはちょっと首をかしげて、うなずきました。
「そうだね。ちょっとだけね」
「ちょっとだけ?」
ナオ君は驚いた顔でお姉さんを見ます。
「痛くて泣いたりしなかったの?」
「うん。泣かなかったよ」
「どうして泣かなかったの?」
首をひねるナオ君に、お姉さんは笑ってこたえました。
「転んでケガをするよりも、もっと痛い思いをしてるからかな」
「もっと痛いこと?」
「そうそう。その痛さに比べれば、転んでケガをする痛さなんて何でもないの」
「…じゃあ、ボクも転ぶよりも痛い思いをすれば平気になるの?」
「そうだね。…あ、でも」
うなずいてから、お姉さんは少しからうような目でナオ君を見ました。
「ナオ君、そういうケガをしたら私にうつしちゃうから、だめかも」
「え、うつさないよ!」
「えー。うつすよ」
「うつさないってば!」
むきになるナオ君に、お姉さんは言います。
「だって、転んだケガの痛さくらいでうつしちゃうんだもん。もっと痛いケガをしたら、なおさらうつしたくなるでしょ」
たしかに、お姉さんの言うとおりです。
転ぶよりもずっと痛い思いをしたら、きっとすぐにおまじないをとなえてしまうでしょう。
でもナオ君は、お姉さんにバカにされたことがくやしくて、怒ったように言いました。
「うつさないったら、うつさない!」
「ほんとに? 転んだケガくらいでうつしちゃうのに?」
「じゃあいいよ! 転んでケガしたって、もううつさないから!」
思わずそんなことを言ってしまいました。
転んでケガをしたら、ナオ君はまた泣いてしまうでしょうし、ケンタ君たちにも笑われるにちがいありません。
それはとてもイヤなことでしたが、お姉さんに弱虫だと思われるのはもっとイヤだったのです。
「ぜったい、うつさないから!」
「約束する?}
「約束する!」
ナオ君はそう言うと、くるりとお姉さんに背をむけてけけだしました、
そして、一度立ち止まってお姉さんを見ると、
「ぜったいにうつさないから!」
さけぶように言って、またかけていきました。
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