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第一章 巻き込まれたその日は『一粒万倍日』
1-73 しばしの別れ
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あれからすぐに様子見がてらに戻って来た、まだおっかなびっくりだったフォミオに頼んで村まで無事に帰還した。
俺のメテオレインのせいか、少し怪我をしていたのでポーションをつけてやったら魔物にもちゃんと効くようでよかった。
きっと俺という主を見捨て切れずに逃げるのを躊躇っていたのだろう、愛い奴め。ああ、あの時に無理して自爆なんかしなくてよかったぜ。まったく無意味な死に方をするところだったわ。
そしてカイザの家に帰った俺達を出迎えてくれたのは、例によって若干退屈におかされた感じの幼女様方だった。
「お父さん、おとうさーん。お姉ちゃんだ、超かわいいお姉ちゃんが二人も来たよー」
またしてもアリシャが駈け出していって叫んでいた。あっはっは、しょうこりもないなあ、でもこれはさすがに無理なんじゃないのかなあ。
「なんだ、なんだい。またさっきは凄い爆発なんかが立て続けにあって現場を調べに行かなくちゃいけないんだが。ん、お姉ちゃんだと?」
怪訝そうな顔をしながら、剣や背嚢などの装備を整えた格好で出てきたカイザは、そこに黒髪黒目の女性が二人もいるのを見て、事の成り行きを察したようだった。
「さきほどの騒ぎはあなた方の仕業なので?」
「いえ、それは概ね、そこの麦野さんが」
「は、やっぱりそうだったか」
そしてまた妙に得心したと言いたいような顔をするカイザ。あのなあ、ふざけるなよ。あのザムザが来ていやがったんだぞ。
「お父さん、それよりも頑張ってお姉ちゃんを口説かないと!」
「え? ああいや、この人達はな」
困って頭をかいている、やや甲斐性の足りないお父さんの様子に、俺も笑ってアリシャの頭を撫でてやった。
もう新しいお母さんが欲しくて堪らないので必死で訴える幼女様、本当に可愛らしいな。マーシャの方はもう少し落ち着いて様子を見ている。そして俺は無慈悲に宣告してやった。
「この人達はすぐ旅に出ないといけないんだから無理だ、お前達には優しいフォミオママがいてくれるだろう」
「ちぇえー!」
「また駄目だったか、ざんねーん!」
そして俺達は楽な服装に着替えて、さっそくお菓子の製作にとりかかった。もちろんフォミオも一緒で、面倒な泡立てとかはみんなフォミオがやってくれるので、あっという間に出来上がっていく。
マーシャとアリシャもちょろちょろと、お手伝いなんだかお邪魔なんだかよくわからない真似をしている。
そして楽しくお菓子パーティをして過ごし、それは奇しくもまるでこれから旅立つ二人の壮行会のようだった。
そして、その翌日の朝。
「麦野さん、本当にお世話になっちゃったわね。エレも加護をくれてありがとう。この先の旅路に少し希望が持てたわ」
エレも新しいお菓子と引き換えだったので、非常に機嫌よく答える。基本的にこいつら精霊は現金な連中なのだ。
「そいつがあると、他の精霊から見ても目印になるからね。おまけに、その堪らない匂いのチョコがあるんだから絶対にどこかで他の精霊と会えるよ。
会えたらチョコと引き換えに、必ず加護をもらっておくようにするといいよ。加護の数が多い方が信用も高いから向こうも安心してくれるはずさ。保証人は多い方がいいからね」
なるほどなあ、納得の説明だった。俺やチビ達はすでにそうなんだな。
「いやなんの。こっちこそ、命を助けてもらったからな。物資が足りなくなったら、またいつでも補給に来てくれ。また何か有用な物があれば仕入れておこう。
もしかすると用足しに出かけてたり旅に出てたりするかもしれんが、ここが俺のホームだ。いくらかの物資は収納の魔道具が手に入ったら、そこのカイザにも渡しておくから。
もし日本に帰れそうだったら俺も呼びに来てくれよな。俺も手掛かりを探しに行こうと思ったんだが、すっかり村に根が生えちまってな。でもまあ王都まで一度は行ってみたいもんだ。きっと大都会ではあれこれといい物があるんだろうなあ」
「わかった、約束する。うん、王都はなかなかの物だったよ。きっと麦野さんの欲しいものがあるはず。飛んで連れていってあげたいくらいだけど、何しろ王国からも追われる身だから王都はごめんだわ。それにいつも佳人ちゃんを抱えて飛んでいるんだしね」
「はは、違いないよ。それに俺もあまり大っぴらに王都に行くのはどうもな。絶対に歓迎されないに決まっているだろうから」
それに俺を小馬鹿にする奴が何人もいるはずだから、連中と顔を合わせたくはないんだ。
こうして帰り道探索は他力本願というか、無情にも俺と同じく見事にはぐれ勇者となった宗篤姉妹に任せて、俺は当座の間は異世界生活を満喫する事にした。
あれから俺が異世界から持ち込んだ紙のインク部分だけを収納して白紙の紙を作り、それからフォミオが作ってくれた日記帳に異世界のあれこれを『異世界満喫日記』として記すのだった。
もちろん、子供達もそれに参加して見事にお絵描き帳というか異世界絵日記になってしまっていたのだが、それもまた楽しいもんだ。と、日記には書いておこう。
俺のメテオレインのせいか、少し怪我をしていたのでポーションをつけてやったら魔物にもちゃんと効くようでよかった。
きっと俺という主を見捨て切れずに逃げるのを躊躇っていたのだろう、愛い奴め。ああ、あの時に無理して自爆なんかしなくてよかったぜ。まったく無意味な死に方をするところだったわ。
そしてカイザの家に帰った俺達を出迎えてくれたのは、例によって若干退屈におかされた感じの幼女様方だった。
「お父さん、おとうさーん。お姉ちゃんだ、超かわいいお姉ちゃんが二人も来たよー」
またしてもアリシャが駈け出していって叫んでいた。あっはっは、しょうこりもないなあ、でもこれはさすがに無理なんじゃないのかなあ。
「なんだ、なんだい。またさっきは凄い爆発なんかが立て続けにあって現場を調べに行かなくちゃいけないんだが。ん、お姉ちゃんだと?」
怪訝そうな顔をしながら、剣や背嚢などの装備を整えた格好で出てきたカイザは、そこに黒髪黒目の女性が二人もいるのを見て、事の成り行きを察したようだった。
「さきほどの騒ぎはあなた方の仕業なので?」
「いえ、それは概ね、そこの麦野さんが」
「は、やっぱりそうだったか」
そしてまた妙に得心したと言いたいような顔をするカイザ。あのなあ、ふざけるなよ。あのザムザが来ていやがったんだぞ。
「お父さん、それよりも頑張ってお姉ちゃんを口説かないと!」
「え? ああいや、この人達はな」
困って頭をかいている、やや甲斐性の足りないお父さんの様子に、俺も笑ってアリシャの頭を撫でてやった。
もう新しいお母さんが欲しくて堪らないので必死で訴える幼女様、本当に可愛らしいな。マーシャの方はもう少し落ち着いて様子を見ている。そして俺は無慈悲に宣告してやった。
「この人達はすぐ旅に出ないといけないんだから無理だ、お前達には優しいフォミオママがいてくれるだろう」
「ちぇえー!」
「また駄目だったか、ざんねーん!」
そして俺達は楽な服装に着替えて、さっそくお菓子の製作にとりかかった。もちろんフォミオも一緒で、面倒な泡立てとかはみんなフォミオがやってくれるので、あっという間に出来上がっていく。
マーシャとアリシャもちょろちょろと、お手伝いなんだかお邪魔なんだかよくわからない真似をしている。
そして楽しくお菓子パーティをして過ごし、それは奇しくもまるでこれから旅立つ二人の壮行会のようだった。
そして、その翌日の朝。
「麦野さん、本当にお世話になっちゃったわね。エレも加護をくれてありがとう。この先の旅路に少し希望が持てたわ」
エレも新しいお菓子と引き換えだったので、非常に機嫌よく答える。基本的にこいつら精霊は現金な連中なのだ。
「そいつがあると、他の精霊から見ても目印になるからね。おまけに、その堪らない匂いのチョコがあるんだから絶対にどこかで他の精霊と会えるよ。
会えたらチョコと引き換えに、必ず加護をもらっておくようにするといいよ。加護の数が多い方が信用も高いから向こうも安心してくれるはずさ。保証人は多い方がいいからね」
なるほどなあ、納得の説明だった。俺やチビ達はすでにそうなんだな。
「いやなんの。こっちこそ、命を助けてもらったからな。物資が足りなくなったら、またいつでも補給に来てくれ。また何か有用な物があれば仕入れておこう。
もしかすると用足しに出かけてたり旅に出てたりするかもしれんが、ここが俺のホームだ。いくらかの物資は収納の魔道具が手に入ったら、そこのカイザにも渡しておくから。
もし日本に帰れそうだったら俺も呼びに来てくれよな。俺も手掛かりを探しに行こうと思ったんだが、すっかり村に根が生えちまってな。でもまあ王都まで一度は行ってみたいもんだ。きっと大都会ではあれこれといい物があるんだろうなあ」
「わかった、約束する。うん、王都はなかなかの物だったよ。きっと麦野さんの欲しいものがあるはず。飛んで連れていってあげたいくらいだけど、何しろ王国からも追われる身だから王都はごめんだわ。それにいつも佳人ちゃんを抱えて飛んでいるんだしね」
「はは、違いないよ。それに俺もあまり大っぴらに王都に行くのはどうもな。絶対に歓迎されないに決まっているだろうから」
それに俺を小馬鹿にする奴が何人もいるはずだから、連中と顔を合わせたくはないんだ。
こうして帰り道探索は他力本願というか、無情にも俺と同じく見事にはぐれ勇者となった宗篤姉妹に任せて、俺は当座の間は異世界生活を満喫する事にした。
あれから俺が異世界から持ち込んだ紙のインク部分だけを収納して白紙の紙を作り、それからフォミオが作ってくれた日記帳に異世界のあれこれを『異世界満喫日記』として記すのだった。
もちろん、子供達もそれに参加して見事にお絵描き帳というか異世界絵日記になってしまっていたのだが、それもまた楽しいもんだ。と、日記には書いておこう。
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