朝凪の口付け

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終章 わたしの心の青海原

4話※

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「タクマさんって、い、意地悪なの?」

話している割にはやや性急に、私の足の間に腰を入れようとする彼に、焦りを感じて、なんでもいいから話を続けようとした。
私の片方の腿の上に手のひらが添えられ、膝を折るように上へ、裏へと滑らせていく。

「さあ……どうかな。  それは置いといても、オマエの体は美味い。 すんなりハマってやたらに抱き心地がいい。 肩も腰もどこもギスギスしたとこがなくって、アソコも乳首みたいに真っ赤んなってすぐ濡れる。 無茶苦茶唆るし気付いたら、男としても困りモン」

ヌルヌル蜜口に先端を擦り付けて、途中の僅かな凹みを見付けると、またそこに愛液を塗り付ける。
太いそれが、そのあとぐっと私をこじ開けてきた肉の先に、思わず大きく喉を晒した。
どこか昂って上擦った彼の声が聞こえた。

「最初の男が…オレで良かったとか……そんな馬鹿みてえなことを思うとかな」

「ん、ンん…っ」

ゆるゆると、その代わり、少しも躊躇わずに進んでくる。

導入のそれは優しくて気持ちがいい、私の好きな口づけのやり方に似ていた。

長く大きな熱の塊が、昨晩は触れられなかった私の奥まで、すぼまった膣壁をぐぐぐと押し開いていく。

「大事にしたいし、見てたいし、見たくねえ。 一緒にいたいし、突き放したくもなる。 触りたいし、泣かせたいし、どうしようもなく欲しい。 ……こんな感情はオマエなら、なんて言う?」

話していることは分かるけど、その意味を咀嚼できる余裕が私に無い。
ただ、その侵入が止まったので全て受け入れたのだと思って息を吐いた。

「あ。 わ、わた…し」

「んなガチガチになんなくていいから」

私の頭の両側で肘をつき、顔を傾けて耳元を撫でる彼の甘い声は、彼ごと私の中をすぼませる。

けれども強い圧迫感に慣れようと呼吸を整えながら、その命令に赴くままに、張り詰めてピンと伸ばされた脚先から、ぎこちなく力を抜いた。

「はぁっ…た、クマさ…好…き」

「……オマエはいつも見えないモノを『それ』に込める。 そんな無責任な芸当はオレには出来ない」

そのうち言葉じゃ足りなくなる──────
そんな彼の話が頭を掠め、でも欲しがりなタクマさんはその両方を続ける。

「好きの反対の無関心……なら、数え切れない感情持ってる、オレはどうしようもなく好きなんだろ。 それでも、ボンヤリした好きなんかで終わらされたら、困る」

そう言い終わって、彼が腰を進めた瞬間、まだ残っていた昂りの全部が私の奥底をズンと押す。

「っ……っ…っ!ンあ…は」

擦り付けるようにグイグイ圧し、限界まで、もっと深くまでと彼が求める。
荒くなった彼の息遣いが耳に届く。
それと同調して、私の喘ぎも反らした喉からひっきりなしに漏れ出た。

昨晩よりもあけすけで差し迫った自分の声に、狼狽えた。

「ん…はぁッ……むり…もっや、…んっダメ」

深いまま、拡げては探るように、ねっとり弧を描き始めるそれに、一ミリの余裕もない。

もう頭がおかしくなりそうだった。

「昨晩は、好きにしていいっつったよな……?」

「ん、ン…あっ…で、も…こん…なっ」

私の頬を舌で舐め上げて、予測のつかない動きに翻弄される。

唇や首すじ、胸や腕や脚。
お互いの全てがきつく絡んで、しごかれて、息をつくタイミングも分からなかった。

浅いところに押し付けて、少し進んでは小刻みに壁を震わせ、赴くままに内部を暴れる、熱の塊。
その硬い昂りはぬめりを巻き込んで掻き出し、摩擦によって滲む体液さえも熱く熱く、燃え上がる。

「ハア…っ…良過ぎ……止まんね」

彼の荒い息の合間に愉悦が吐き出される。
そんな情動に伴い、前後に、上下に揺すられ続ける私の体。
私の一部のはずのそこが、掻き回されてドロドロに溶けてるみたいで、自分のもののような気がしなかった。

前に進んだ彼が私の体を折るように重ね、挿入のたびに畳まれた膝が頼りなげに揺れては開く。
そうやって単純に、私の内部を往復する動きに変化した。

ぱちゅんっぱちゅンパチュンパチュんっ

恥毛まで濡れそぼった私の湿りを叩く音がする。
今度はズンズン打ち込まれる抽挿に、甘い苦痛の入り交じった嬌声が止まらない。

「あっ…っ…っあっ…ンんっ……ダメっも…変、になっちゃ…んぁっや」

「変じゃ、ねぇだろ?  見たことない、ドロドロん顔しやがって。 ちゃんと…言えよ。 いつもみたいに」

そしてこんな時に……私にも言葉を求めてくる。

一旦は彼のくびれを引っ掛けて、浅い入り口へと戻る熱。
刹那、離れるのが惜しいとでもいうように、たて続けな拡張が体を貫いてくる。

これまで無いほどに、全身でタクマさんを感じた。

「だっ…変…っ…あン…好きっ…き、気持ち…っいいッっ…好きぃ! ぁっあっ、アんん!」

「……っいい反応。 コッチもそろそろ」

開かれた入り口に彼の根元の下腹が強く押し付けられる。 
塊がぐうっと膣内いっぱいに膨らみ、気を失いそうになった。

永遠にでも続きそうに思えるそれは、地獄のようでもあり天国のようでもあり。

目を開けても閉じても、見えるのはバチバチと瞬く光だけ。
結合をピッタリと深いままに、小さく声を洩らした彼が、ようやくに動きを止めた。


「……乃、生きてるか」

なでなでと、頬をさすってくれる感覚。

これはタクマさんだ。

目を薄くあけると、明るい豪奢な室内で、頬杖をついて私を眺めてるタクマさんが見えた。
目元に少しだけ緩い隙のあるこの彼は、いつもの穏やかなバージョンらしい。

そんな彼に弱々しく腕を回して、横向きにしがみついて、甘えた。

「……も、だめ…え」

「きつかったか。 でも、少しは慣れただろ?」

私の頭を撫でながらそう言う彼に、力無く首を横に振る。

これがいわゆるセックスというもので。
でも、昨晩とは全く違う種類だ。
未だにジンジンと余韻の残る体内に息を漏らした。

「フーン?  ……まあ、こっちも足んねえし。 じゃ、次はちゃんと気持ちいいとこしてやんねぇと。 大体分かったから」

そんな見当違いなことを言いながら、また私に覆いかぶさってくるタクマさんのこれは、まさかの二回目ということ?

仰向けにした私の体をじっと見下ろす彼の瞳に再び熱がこもり始めて、焦って彼の体を押そうとしたら頭の上でそれを束ねられた。
それと同時に、再び彼の上半身がゆっくりと倒れてくる。

「まっ、待って待って……っ」

「無理だな」


「……っ…っ……っ!」
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