202 / 230
第八章 決戦!ペリドット領
203、景気が悪いと人は荒れる
しおりを挟む
「税に関する告知
来月、八月一日より下記の税について金額を引き上げる
・領民税
・通行税
・貿易税
なお、引き上げ額は現在の価格に二割増した金額とする
以上」
広場に着いたオリビアは、時計塔の目の前に掲げられた大きな看板に注目した。離れたところからも読めるくらいの大きな文字は一方的な知らせだった。近くに寄ったところで情報は変わらず、簡素な内容にオリビアは驚嘆した。
「二割増し。領民税と通行税と貿易税って、この領地の税全てじゃない。問い合わせ先も書いていないなんて不親切すぎるわ」
「本当に。有無を言わさずといった様子ですね」
隣でセオが険しい表情を看板に向ける。リタやジョージも内容を読んで顔をしかめている。
「二割増しなんて、しかも来月からなんて、無理があるのではないでしょうか?」
「どうりで通りがかりの店の商品が高いわけだ。そうでもしないと払えないってことか」
「きっとそうね。これからお店を回ってみましょう!」
オリビアは再びジョージと恋人を装い並んで歩きながら、まずは食器店を覗いた。陶磁器や銀食器が綺麗に並んでいる。各商品には、真新しい値札が付いている。
「いらっしゃいませ」
年配の女性店員が控えめな笑顔でオリビアとジョージを迎えた。ジョージがティーカップを手に取り、オリビアに見せる。
「リビー、これなんか素敵じゃないか?」
「そうね、よく見たいわ」
カップの持ち手には値札の紐が括られており、値札がカップの中に入っていた。金額は修正前のものだ。箱に貼られていた新しい値札より四割ほど安い。オリビアはジョージと目を合わせ頷き、女性店員に笑顔で声をかけた。
「このカップが二つ欲しいのだけれど、用意してくださる?」
「ありがとうございます。ただいまご用意いたします」
女性は笑顔でオリビアからカップを手に取り、隣に並んでいたもう一つと一緒に会計カウンターに持ち出した。一瞬オリビアとジョージを一瞥し、カップについていた値札の紐を切って捨てた。それから丁寧に紙でカップを包み、箱に詰める。
「お客様、お待たせいたしました。お会計は一万エールでございます」
オリビアは金額に驚き瞬きをした。新しい値札の金額だったからだ。言われるまま払っても構わないが、彼女の反応を見るためにあえて首を傾げる。
「あら、二つで六千エルでは? さっき値札に三千エールって書いていたのを見たのだけれど……」
女性は唇を一文字に結び、肩を大きく上下させ息を吐いた。
「箱に五千エールと書いています。売値が変わったんですよ。買わないならそれでもいいですけど、お包みするのに使った紙や箱の代金千エールはお支払いくださいね!」
面倒そうに言葉を吐き捨てる女性。その豹変ぶりに呆気にとられたオリビアは、返す言葉が見つからない。ジョージが苦笑いをしながら一万エールを彼女に渡す。
「値下げしてくれと言っているわけじゃないんだ。値札と値段が違ったから確認しただけさ。商品は買うよ」
「そうでしたか、それは失礼いたしました」
女性店員は冷静さを取り戻したのか、金を手にしてからジョージとオリビアに頭を下げた。そして包み終えた商品を差し出す。セオがそれを受け取り、オリビアは彼らと食器店を出た。
>>続く
来月、八月一日より下記の税について金額を引き上げる
・領民税
・通行税
・貿易税
なお、引き上げ額は現在の価格に二割増した金額とする
以上」
広場に着いたオリビアは、時計塔の目の前に掲げられた大きな看板に注目した。離れたところからも読めるくらいの大きな文字は一方的な知らせだった。近くに寄ったところで情報は変わらず、簡素な内容にオリビアは驚嘆した。
「二割増し。領民税と通行税と貿易税って、この領地の税全てじゃない。問い合わせ先も書いていないなんて不親切すぎるわ」
「本当に。有無を言わさずといった様子ですね」
隣でセオが険しい表情を看板に向ける。リタやジョージも内容を読んで顔をしかめている。
「二割増しなんて、しかも来月からなんて、無理があるのではないでしょうか?」
「どうりで通りがかりの店の商品が高いわけだ。そうでもしないと払えないってことか」
「きっとそうね。これからお店を回ってみましょう!」
オリビアは再びジョージと恋人を装い並んで歩きながら、まずは食器店を覗いた。陶磁器や銀食器が綺麗に並んでいる。各商品には、真新しい値札が付いている。
「いらっしゃいませ」
年配の女性店員が控えめな笑顔でオリビアとジョージを迎えた。ジョージがティーカップを手に取り、オリビアに見せる。
「リビー、これなんか素敵じゃないか?」
「そうね、よく見たいわ」
カップの持ち手には値札の紐が括られており、値札がカップの中に入っていた。金額は修正前のものだ。箱に貼られていた新しい値札より四割ほど安い。オリビアはジョージと目を合わせ頷き、女性店員に笑顔で声をかけた。
「このカップが二つ欲しいのだけれど、用意してくださる?」
「ありがとうございます。ただいまご用意いたします」
女性は笑顔でオリビアからカップを手に取り、隣に並んでいたもう一つと一緒に会計カウンターに持ち出した。一瞬オリビアとジョージを一瞥し、カップについていた値札の紐を切って捨てた。それから丁寧に紙でカップを包み、箱に詰める。
「お客様、お待たせいたしました。お会計は一万エールでございます」
オリビアは金額に驚き瞬きをした。新しい値札の金額だったからだ。言われるまま払っても構わないが、彼女の反応を見るためにあえて首を傾げる。
「あら、二つで六千エルでは? さっき値札に三千エールって書いていたのを見たのだけれど……」
女性は唇を一文字に結び、肩を大きく上下させ息を吐いた。
「箱に五千エールと書いています。売値が変わったんですよ。買わないならそれでもいいですけど、お包みするのに使った紙や箱の代金千エールはお支払いくださいね!」
面倒そうに言葉を吐き捨てる女性。その豹変ぶりに呆気にとられたオリビアは、返す言葉が見つからない。ジョージが苦笑いをしながら一万エールを彼女に渡す。
「値下げしてくれと言っているわけじゃないんだ。値札と値段が違ったから確認しただけさ。商品は買うよ」
「そうでしたか、それは失礼いたしました」
女性店員は冷静さを取り戻したのか、金を手にしてからジョージとオリビアに頭を下げた。そして包み終えた商品を差し出す。セオがそれを受け取り、オリビアは彼らと食器店を出た。
>>続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
65
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる