悪役令息の取り巻きに転生した俺乙

第6章

※魔力暴走

‥‥


痛い‥痛くてたまらない。

心も、体も‥


何も見えない。寒い。寒い。

あぁ、これ知ってる‥
前もこんな事があった。

トラックに撥ねられた時。そうだ、あの時だ。


闇‥真っ暗‥だ。

誰もいない。誰も‥


俺は‥死んだのか‥？


それなら最後ぐらい‥


貴方の笑顔を見たかったな‥



ーーっ！！、！



声‥？誰かいるの‥？



ーーっ、～！？


なにか、言ってるのか‥？
よく聞こえない‥


ー、


「起きてッ！？起きろってば！！エル•クレヨン！！っ、


エルっーー！！！」


「っ、



‥りお、ん‥さん‥？」


夢、だろうか？
死ぬ前の幸せな夢‥

目の前に慌てふためくリオンさんの顔。

俺は口元を緩めた。


「はは‥目の前に‥リオンさんが、いる‥幸せだ‥」

俺は彼の空色の目を見つめる。
戸惑ったような表情。
俺が彼にニコリと笑いかけると、照れたように視線を逸らした。

あぁ‥可愛い‥



「リオンさん‥大好き‥」


「っ、何寝ぼけてんのさ‥」


ムッとした顔で、俺の額に手を触れるリオンさん。
そのリアルな感触に、次第に頭が冴えていく。



「‥？え、ほん、もの‥？」

「‥偽物に見える？‥っどうして、こんなにボロボロなのさ‥ひとまずっ、今すぐに魔力暴走を止めないと、動かないでね」

「っ、！？魔力暴走ッ、そうだ、俺っ、ゔがっーー！？！？」


激痛ーー。
内側から鋭い刃物に貫かれるような

俺は声にならない悲鳴をあげる。

そうだ俺っ、森で魔力が暴走してっ、


「っちょっと！？動かないでって言ってるでしょ！？今君は危険な状態なんだよ！死にたいの！？」

「りおんさ、だめだ、離れ、てっ！？」


何でここにリオンさんがっ！？
学園の皆んなはファイさんがなんとかしてくれたんじゃ！？

っ、
俺の魔法は危険なんだっ、だめだっ、近づいたらリオンさんまでッ

倒れた俺の上半身を抱き抱えた体勢のリオンさん。
彼から少しでも離れようと、俺は彼の胸を何度も腕で押そうとするが、すぐにずるりと力が抜けて垂れ下がってしまう。

くそ、力が入らないっ、

「リオン、さんっ、逃げて、くださいっ、頼むからッ」

彼から返事はない。

ただ安心させるように腕をぎゅっと握られて、
その触れた部分から、不思議と力が少しだけ収まっていくのを感じた。


これって‥



「俺を誰だと思ってるの。君のへっぽこ魔法なんか効かないよ。いいから‥動かないで。俺に任せてーー」


リオンさんの真剣な表情に、俺は目を見開く。

そっと俺の頭に腕を回すリオンさん。
それと同時に引き寄せられて、近づくリオンさんの綺麗な顔に
ドキリと心臓が跳ねた。

空色の目がゆっくりと伏せられる。



ーー魔力暴走の際の対策は二通りあります。
暴走した相手の魔力を、特別なアイテムで吸収する方法。
または他者が魔力を空に近い状態にし、暴走者に触れることで魔力摂取を行う方法です。

魔力摂取は少し恥ずかしいかもしれませんが、人命救助だと思って、皆さんも緊急の際は率先してーーーー。


そうだ。
これ、魔力暴走の対処法の授業で聞いた‥。


「ん、ーー。」


唇が触れる。


刹那、俺の魔力が唇を伝ってリオンさんへと流れ始めた。


人工呼吸みたいだなってその時思ってた。
だけど、こんなの‥

俺は少し動くようになった腕で、そっとリオンさんの頬に触れる。

ゆっくりと開くリオンさんの瞳。
愉快そうに細められたその空色に、俺はたまらず深くそれを押し当てた。

俺の勢いにリオンさんの口が開いて、その間に舌を絡ませる。
抵抗しないリオンさんをいいことに、俺は深く深く彼の口内を堪能した。


少しずつ、体に力が戻ってきて、
熱が引いていくような気持ちの良さに、
本能的に俺は彼を押し倒す。


足りない‥もっと‥



「っ、ん‥」

「は、りおん、さんっ」

「ん、は、あ‥がっつき、すぎっ、んんっあ」



そこからの記憶はおぼろげで、
ただ気づいた時には、
魔力の暴走は治まっていて、
彼の柔らかい唇を貪ったっていう羞恥な行いだけが、鮮明に脳裏へ記憶されていたのだった。



‥‥‥