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14、公爵の事情【アレクシア編】
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「(………いい娘だな。)」
アレクシア・ヴァルリア公爵がフィオナ・ローレル伯爵令嬢と初めて会った瞬間に思ったことであった。
ーー娘のエミリーと話す様子を見ながら、そもそもの始まりのことを思い出す。
あの日、若い頃からよくお世話になっていた隠居間近のとある伯爵と偶然に会った時、伯爵が何気なく挨拶のついでのように言ってきた「いい加減に結婚しないのか?」という問い掛け。
自分はどう答えたらいいのかと言葉に詰まっていると、気にしないように伯爵は「これまで自分はこれだけの男女を縁組みしてきた」という自慢話へ。
こちらのことはお構いなしに話を続けるので、さすがに困ったようになってしまう公爵。
伯爵の話は今度は「そうだ。君もお見合いしてみないか?」というお見合いを薦めることへと変わっていた。
すると、伯爵は「そうだ。それがいい」と何度も口にして、顎に手をおいて何かを考え込む。
「………よし、ちょうどあの家に年頃のお嬢さんがいたの。」
とお見合い相手を思い付いたのか、嬉しそうな顔をしていた伯爵。
ーーこうして、あれやこれやと止める間もなくお相手と連絡をつけてしまい、気が付くとあっという間に会う段取りまで組まれてしまい、こうして、人生初のお見合いは《薦められたお見合い》だった。
ーー正直、手違いだった……と、すぐに断りの連絡をいれようかとも思ったが、伯爵はこれまで他にも何組か縁組していて、半数近くは失敗していた。
だが、当の本人は気にしなく、紹介した本人は、そのほとんどが紹介したという方が大事なようで、紹介したその後のことはほとんど把握していないようだった。
その証拠に破断したカップル、もしくはその片方やその家族に会っても何も言ったりしなかった伯爵。
だから、その伯爵からお見合いを薦められても、そこまで深くは考えていなかったが、それでも一応紹介された手前ある程度の交流は必要だろうと考えていた公爵。
ーーこうして人生初のお見合いの相手が、スチュアート•ローレル伯爵の娘のフィオナ・ローレル嬢となる。
勿論、事前にローレル伯爵家を軽く調査させたが、特別何も出てこず、裏もなく、伯爵本人もその家族の評判も良いものであった。
ーー会う前は義理として、一度、もしくは二度くらいは、きちんと誘って会えば十分であろうと考えていた。
ーーいや、今は自分の娘として大切に育てているエミリーも同行させれば、さらに断られる要素が増えるだろう。
何より私とお見合いなんて、たいていの令嬢たちにとっては一番の断る要素のはず。
自分が何て呼ばれているのか知っているつもりだ。それに関しては別に否定も肯定もするつもりはない。
呼びたいように呼ばせておけばいい。貴族どものご機嫌取りをするつもりもない。
いずれエミリーに苦労させてしまうかもしれないが、防御の武器にもなるはずだ。だから、特別何かするつもりはない。
――だから、断られる前提で会うことにしよう。
どうせ断られるなら早い方がいい。
そう思い、今回のお見合いにエミリーも同席させた。より断らせるようにするために……。
――しかし、フィオナ嬢は、会った瞬間の印象の通りに優しい令嬢で、私のことも恐れる様子は……少しあったようにも見えたが、以降は感じなかったし、お見合いの経緯の説明の時の様子を見た時からして好感も見え隠れしていた。
どちらかというとエミリーへの好感の方が高いようにも見えた。
現に常にエミリーには飾らない優しい微笑みを向けてくれている。
――正直、少しだけ気にくわなかった。
自分がお見合い相手で嬉しかったと言ってくれて、自分を見る様子から、彼女が好感を持ってくれてるのは明らかなのに。
それでも……と。
気が付くと自分だけを見て欲しくて、庭を案内するといって連れ出してしまっていた。
途中、思わず本音をぶちかましそうになったが、自分ではなかなか良い時間を過ごせたと思っている。
――ただ、時折、何かを考え込んでいるようで、体調を崩しているのではないかと心配になったほどだ。
――兄のことを話してもエミリーのことを話しても、彼女は態度を変えることがなかった。
自分の中でフィオナ嬢への好感が高くなっているのを感じる。
――これでは当初の目論みから外れることになるとわかっていても、もう後戻りはできない自分の内から沸き上がるお想いに蓋をすることができないのであった。
アレクシア・ヴァルリア公爵がフィオナ・ローレル伯爵令嬢と初めて会った瞬間に思ったことであった。
ーー娘のエミリーと話す様子を見ながら、そもそもの始まりのことを思い出す。
あの日、若い頃からよくお世話になっていた隠居間近のとある伯爵と偶然に会った時、伯爵が何気なく挨拶のついでのように言ってきた「いい加減に結婚しないのか?」という問い掛け。
自分はどう答えたらいいのかと言葉に詰まっていると、気にしないように伯爵は「これまで自分はこれだけの男女を縁組みしてきた」という自慢話へ。
こちらのことはお構いなしに話を続けるので、さすがに困ったようになってしまう公爵。
伯爵の話は今度は「そうだ。君もお見合いしてみないか?」というお見合いを薦めることへと変わっていた。
すると、伯爵は「そうだ。それがいい」と何度も口にして、顎に手をおいて何かを考え込む。
「………よし、ちょうどあの家に年頃のお嬢さんがいたの。」
とお見合い相手を思い付いたのか、嬉しそうな顔をしていた伯爵。
ーーこうして、あれやこれやと止める間もなくお相手と連絡をつけてしまい、気が付くとあっという間に会う段取りまで組まれてしまい、こうして、人生初のお見合いは《薦められたお見合い》だった。
ーー正直、手違いだった……と、すぐに断りの連絡をいれようかとも思ったが、伯爵はこれまで他にも何組か縁組していて、半数近くは失敗していた。
だが、当の本人は気にしなく、紹介した本人は、そのほとんどが紹介したという方が大事なようで、紹介したその後のことはほとんど把握していないようだった。
その証拠に破断したカップル、もしくはその片方やその家族に会っても何も言ったりしなかった伯爵。
だから、その伯爵からお見合いを薦められても、そこまで深くは考えていなかったが、それでも一応紹介された手前ある程度の交流は必要だろうと考えていた公爵。
ーーこうして人生初のお見合いの相手が、スチュアート•ローレル伯爵の娘のフィオナ・ローレル嬢となる。
勿論、事前にローレル伯爵家を軽く調査させたが、特別何も出てこず、裏もなく、伯爵本人もその家族の評判も良いものであった。
ーー会う前は義理として、一度、もしくは二度くらいは、きちんと誘って会えば十分であろうと考えていた。
ーーいや、今は自分の娘として大切に育てているエミリーも同行させれば、さらに断られる要素が増えるだろう。
何より私とお見合いなんて、たいていの令嬢たちにとっては一番の断る要素のはず。
自分が何て呼ばれているのか知っているつもりだ。それに関しては別に否定も肯定もするつもりはない。
呼びたいように呼ばせておけばいい。貴族どものご機嫌取りをするつもりもない。
いずれエミリーに苦労させてしまうかもしれないが、防御の武器にもなるはずだ。だから、特別何かするつもりはない。
――だから、断られる前提で会うことにしよう。
どうせ断られるなら早い方がいい。
そう思い、今回のお見合いにエミリーも同席させた。より断らせるようにするために……。
――しかし、フィオナ嬢は、会った瞬間の印象の通りに優しい令嬢で、私のことも恐れる様子は……少しあったようにも見えたが、以降は感じなかったし、お見合いの経緯の説明の時の様子を見た時からして好感も見え隠れしていた。
どちらかというとエミリーへの好感の方が高いようにも見えた。
現に常にエミリーには飾らない優しい微笑みを向けてくれている。
――正直、少しだけ気にくわなかった。
自分がお見合い相手で嬉しかったと言ってくれて、自分を見る様子から、彼女が好感を持ってくれてるのは明らかなのに。
それでも……と。
気が付くと自分だけを見て欲しくて、庭を案内するといって連れ出してしまっていた。
途中、思わず本音をぶちかましそうになったが、自分ではなかなか良い時間を過ごせたと思っている。
――ただ、時折、何かを考え込んでいるようで、体調を崩しているのではないかと心配になったほどだ。
――兄のことを話してもエミリーのことを話しても、彼女は態度を変えることがなかった。
自分の中でフィオナ嬢への好感が高くなっているのを感じる。
――これでは当初の目論みから外れることになるとわかっていても、もう後戻りはできない自分の内から沸き上がるお想いに蓋をすることができないのであった。
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