14 / 18
14、公爵の事情【アレクシア編】
「(………いい娘だな。)」
アレクシア・ヴァルリア公爵がフィオナ・ローレル伯爵令嬢と初めて会った瞬間に思ったことであった。
ーー娘のエミリーと話す様子を見ながら、そもそもの始まりのことを思い出す。
あの日、若い頃からよくお世話になっていた隠居間近のとある伯爵と偶然に会った時、伯爵が何気なく挨拶のついでのように言ってきた「いい加減に結婚しないのか?」という問い掛け。
自分はどう答えたらいいのかと言葉に詰まっていると、気にしないように伯爵は「これまで自分はこれだけの男女を縁組みしてきた」という自慢話へ。
こちらのことはお構いなしに話を続けるので、さすがに困ったようになってしまう公爵。
伯爵の話は今度は「そうだ。君もお見合いしてみないか?」というお見合いを薦めることへと変わっていた。
すると、伯爵は「そうだ。それがいい」と何度も口にして、顎に手をおいて何かを考え込む。
「………よし、ちょうどあの家に年頃のお嬢さんがいたの。」
とお見合い相手を思い付いたのか、嬉しそうな顔をしていた伯爵。
ーーこうして、あれやこれやと止める間もなくお相手と連絡をつけてしまい、気が付くとあっという間に会う段取りまで組まれてしまい、こうして、人生初のお見合いは《薦められたお見合い》だった。
ーー正直、手違いだった……と、すぐに断りの連絡をいれようかとも思ったが、伯爵はこれまで他にも何組か縁組していて、半数近くは失敗していた。
だが、当の本人は気にしなく、紹介した本人は、そのほとんどが紹介したという方が大事なようで、紹介したその後のことはほとんど把握していないようだった。
その証拠に破断したカップル、もしくはその片方やその家族に会っても何も言ったりしなかった伯爵。
だから、その伯爵からお見合いを薦められても、そこまで深くは考えていなかったが、それでも一応紹介された手前ある程度の交流は必要だろうと考えていた公爵。
ーーこうして人生初のお見合いの相手が、スチュアート•ローレル伯爵の娘のフィオナ・ローレル嬢となる。
勿論、事前にローレル伯爵家を軽く調査させたが、特別何も出てこず、裏もなく、伯爵本人もその家族の評判も良いものであった。
ーー会う前は義理として、一度、もしくは二度くらいは、きちんと誘って会えば十分であろうと考えていた。
ーーいや、今は自分の娘として大切に育てているエミリーも同行させれば、さらに断られる要素が増えるだろう。
何より私とお見合いなんて、たいていの令嬢たちにとっては一番の断る要素のはず。
自分が何て呼ばれているのか知っているつもりだ。それに関しては別に否定も肯定もするつもりはない。
呼びたいように呼ばせておけばいい。貴族どものご機嫌取りをするつもりもない。
いずれエミリーに苦労させてしまうかもしれないが、防御の武器にもなるはずだ。だから、特別何かするつもりはない。
――だから、断られる前提で会うことにしよう。
どうせ断られるなら早い方がいい。
そう思い、今回のお見合いにエミリーも同席させた。より断らせるようにするために……。
――しかし、フィオナ嬢は、会った瞬間の印象の通りに優しい令嬢で、私のことも恐れる様子は……少しあったようにも見えたが、以降は感じなかったし、お見合いの経緯の説明の時の様子を見た時からして好感も見え隠れしていた。
どちらかというとエミリーへの好感の方が高いようにも見えた。
現に常にエミリーには飾らない優しい微笑みを向けてくれている。
――正直、少しだけ気にくわなかった。
自分がお見合い相手で嬉しかったと言ってくれて、自分を見る様子から、彼女が好感を持ってくれてるのは明らかなのに。
それでも……と。
気が付くと自分だけを見て欲しくて、庭を案内するといって連れ出してしまっていた。
途中、思わず本音をぶちかましそうになったが、自分ではなかなか良い時間を過ごせたと思っている。
――ただ、時折、何かを考え込んでいるようで、体調を崩しているのではないかと心配になったほどだ。
――兄のことを話してもエミリーのことを話しても、彼女は態度を変えることがなかった。
自分の中でフィオナ嬢への好感が高くなっているのを感じる。
――これでは当初の目論みから外れることになるとわかっていても、もう後戻りはできない自分の内から沸き上がるお想いに蓋をすることができないのであった。
アレクシア・ヴァルリア公爵がフィオナ・ローレル伯爵令嬢と初めて会った瞬間に思ったことであった。
ーー娘のエミリーと話す様子を見ながら、そもそもの始まりのことを思い出す。
あの日、若い頃からよくお世話になっていた隠居間近のとある伯爵と偶然に会った時、伯爵が何気なく挨拶のついでのように言ってきた「いい加減に結婚しないのか?」という問い掛け。
自分はどう答えたらいいのかと言葉に詰まっていると、気にしないように伯爵は「これまで自分はこれだけの男女を縁組みしてきた」という自慢話へ。
こちらのことはお構いなしに話を続けるので、さすがに困ったようになってしまう公爵。
伯爵の話は今度は「そうだ。君もお見合いしてみないか?」というお見合いを薦めることへと変わっていた。
すると、伯爵は「そうだ。それがいい」と何度も口にして、顎に手をおいて何かを考え込む。
「………よし、ちょうどあの家に年頃のお嬢さんがいたの。」
とお見合い相手を思い付いたのか、嬉しそうな顔をしていた伯爵。
ーーこうして、あれやこれやと止める間もなくお相手と連絡をつけてしまい、気が付くとあっという間に会う段取りまで組まれてしまい、こうして、人生初のお見合いは《薦められたお見合い》だった。
ーー正直、手違いだった……と、すぐに断りの連絡をいれようかとも思ったが、伯爵はこれまで他にも何組か縁組していて、半数近くは失敗していた。
だが、当の本人は気にしなく、紹介した本人は、そのほとんどが紹介したという方が大事なようで、紹介したその後のことはほとんど把握していないようだった。
その証拠に破断したカップル、もしくはその片方やその家族に会っても何も言ったりしなかった伯爵。
だから、その伯爵からお見合いを薦められても、そこまで深くは考えていなかったが、それでも一応紹介された手前ある程度の交流は必要だろうと考えていた公爵。
ーーこうして人生初のお見合いの相手が、スチュアート•ローレル伯爵の娘のフィオナ・ローレル嬢となる。
勿論、事前にローレル伯爵家を軽く調査させたが、特別何も出てこず、裏もなく、伯爵本人もその家族の評判も良いものであった。
ーー会う前は義理として、一度、もしくは二度くらいは、きちんと誘って会えば十分であろうと考えていた。
ーーいや、今は自分の娘として大切に育てているエミリーも同行させれば、さらに断られる要素が増えるだろう。
何より私とお見合いなんて、たいていの令嬢たちにとっては一番の断る要素のはず。
自分が何て呼ばれているのか知っているつもりだ。それに関しては別に否定も肯定もするつもりはない。
呼びたいように呼ばせておけばいい。貴族どものご機嫌取りをするつもりもない。
いずれエミリーに苦労させてしまうかもしれないが、防御の武器にもなるはずだ。だから、特別何かするつもりはない。
――だから、断られる前提で会うことにしよう。
どうせ断られるなら早い方がいい。
そう思い、今回のお見合いにエミリーも同席させた。より断らせるようにするために……。
――しかし、フィオナ嬢は、会った瞬間の印象の通りに優しい令嬢で、私のことも恐れる様子は……少しあったようにも見えたが、以降は感じなかったし、お見合いの経緯の説明の時の様子を見た時からして好感も見え隠れしていた。
どちらかというとエミリーへの好感の方が高いようにも見えた。
現に常にエミリーには飾らない優しい微笑みを向けてくれている。
――正直、少しだけ気にくわなかった。
自分がお見合い相手で嬉しかったと言ってくれて、自分を見る様子から、彼女が好感を持ってくれてるのは明らかなのに。
それでも……と。
気が付くと自分だけを見て欲しくて、庭を案内するといって連れ出してしまっていた。
途中、思わず本音をぶちかましそうになったが、自分ではなかなか良い時間を過ごせたと思っている。
――ただ、時折、何かを考え込んでいるようで、体調を崩しているのではないかと心配になったほどだ。
――兄のことを話してもエミリーのことを話しても、彼女は態度を変えることがなかった。
自分の中でフィオナ嬢への好感が高くなっているのを感じる。
――これでは当初の目論みから外れることになるとわかっていても、もう後戻りはできない自分の内から沸き上がるお想いに蓋をすることができないのであった。
あなたにおすすめの小説
好きな人が嬢を身請けするのが辛くて逃げたら捕まりました~黒服の私は執着騎士に囲われる~
こじまき
恋愛
騎士が集う高級酒場「夜香楼」で女性黒服として働くソフィアは、客である寡黙な騎士ゼインに恋していた。けれど彼が指名するのはいつも人気花嬢イサナで、身請けも近いと予想されていた。
ソフィアは、叶わない想いにと嫉妬に耐えきれず、衝動的に店を去る。
もう二度と会うことはないはずだったのに、身請けした嬢と幸せに暮らしているはずの彼が追ってきて――
「お前への愛は焼き印のように刻まれていて、もう消えない」
――失恋したと思い込んで逃げた黒服が、執着系騎士様に捕まって囲われる話。
※小説家になろうにも投稿しています
触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました
由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。
そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。
手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。
それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。
やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。
「お前に触れていいのは俺だけだ」
逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。
これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。
ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。
「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」
13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
水錵 咲
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)