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第17話高校入学2

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 俺の他にこの学校を受験した生徒を俺はしらない。
 だから、クラス訳に対するドキドキなんてものはあまりない。強いて言えば可愛い女の子が同じクラスに居ればいいかな? と言う程度、狙ったレアキャラ引き当てる程度の確率を少し期待している程度だ。

 カ〇コンが技術供与していると言われている。物欲センサーに引っかかる訳にはいかないからな……
 物欲センサーを回避するよう。わざと聞こえるようにこう呟いた。

「俺のクラスはどこかな~~」

 自分の名前を沢山あるクラスの中から探し出すのに苦労していると……

「あ、1組だって……」

 俺の隣で鈴が転がるような声がする。

菜月なつきさんありがとう。菜月なつきさんはもう自分のクラスは見つけた?」

「何を隠そう私も1組なの」

「ああ、なるほど……」

 自分の名前を探していたら偶然俺の名前も見つけたといったところだろうか。

「じゃぁ私、職員室に行ってくるから教室の雰囲気とか教えてね……」

「了解」

………
……


 教室のドアは保護者や生徒への配慮のためか、前も後ろも空いている。
 教室のドアに張り付けられた座席表を見るにどうやら俺の席は、前の方のようだ。
 因みに俺の真後ろは、菜月なつきさんだ。

「はぁ」

 思わず短い溜息が口から洩れた。
 別に面倒だとかうっとおしいと思っている訳ではない。
 自分のせいではないのに不用意に注目されるのが嫌いなだけだ。
 
 比較的空いている前のドアを潜る。
 少し姿勢が悪いことを自覚しているので、胸を張って歩き始める。

 教室に入ると複数の視線が俺に集まるのを感じる。
 好奇心と品定めと言ったような少し不快になる視線だ。
 向けられた視線を返すように軽く、教室内を軽く見渡すが見知った顔は存在しない。
 機械的に名前順で割り当てられた座席は既に8割方埋まっている。残りの生徒もトイレや両親との写真撮影や、同じ中学の奴のクラスや座席に話に言っている。

 俺はリュックサックを机の横に置いて、椅子を引いて席に座る。

 暫く待つと恐らくこの学年を担任すると思われる教師が来て俺達を体育館に誘導する。
 真新しいとは言えないものの、手入れの行き届いた体育館の中に中年男性の声が響いた。

「では新入生代表! 鎌倉菜月かまくらなつきさんお願いします。」

 真新しい紺のブレザーに身を包んだ年頃の男女の中で、体育館への移動中に合流した菜月なつきさんは、大きな声でハッキリと返事をした。

「はい!」

 錆の浮いたパイプ椅子から立ち上がり、座席の間に開けられた道を通って行く……するとヒソヒソとした話し声と共に彼ら彼女らの視線が菜月なつきさんに集中する。

「代表って事は成績トップって事でしょ……」
「勉強も顔面も強いって天は二物も三物も与えるのかよ……」

(容姿は生まれ持ってのものだが、二物も三物もという言い方は、彼女の努力を踏みにじっているようで癪に障る)

 脇から回り込んで壇上の上に上がる。時代遅れの蛍光灯が集中して照らされているためか、少し顔が赤い。

緊張しているのだろうか?
 
 胸ポケットからカンペを取り出して、スタンドに乗せられたマイクのスイッチを入れる。
 するとスピーカーから、キーンというハウリング音が聞こえる。
 だが焦ることはない。

「本日は私達新入生の為に、盛大な式典を開いて頂き誠にありがとうございます」

 彼女の演説の読み合わせにはかなりの時間付き合っている。
 容姿の整った人物が、表情と声のトーン、身振り手振りに気を使って話せばどう名乗るだろうか? 答えは単純、演説の中身関係なく彼女に好感を持つ人物が増えるという訳だ。
 例えば、人間は印象によって物事を判断する動物である。対して似ていないモノ真似でも誇張して印象の操作すれば一芸になる。

「暖かく穏やかな春の陽気に包まれ、私達はこの、伝統ある学園の一員となりました。新しく始まる学校生活では、学業はもちろん学校行事や部活動にも励み、自分自身を向上させていきたいと思っております。本日は盛大な式典を挙行していただき誠にありがとうございました」

 声の調子や抑揚、聖母マリアのステンドグラスやモナ・リザが浮かべているような柔和な微笑を浮かべつつ、出席者や重要な人物への目配せをする事で、自分個人に訴えていると錯覚させるテクニックだ。

 内申点で有利になるために、生徒会役員共またはそれに準じる役を経験したいという明確な目標の有る菜月なつきさんにはこの入学式という場は絶好の顔を売る期会だ。

 まぁ本人曰く、保険とのことだがそこまで器用に立ち回れる自信のない俺には真似できない芸当だ。

 こうして俺の新しい生活が始まった。
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