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第34話義姉の手作り料理2

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「カットした野菜を入れ、塩を小さじ3分の1程度入れる。ベーコンとオリーブ油を野菜に吸わせるようにして軽く炒める。
炒め終わったらホールトマト缶一つを入れ、トマトをお玉で潰し良く混ざったらヒヨコ豆缶を入れ、白ワインと料理酒を入れスープの水分量にする」

 説明しながら実演し計量カップで軽量した日本酒と白ワインを鍋に注ぐ。すると気化したアルコールの香りがフワリと芳る。

「一ついいかしら、お酒を入れているけどお水じゃだめなの?」

 確かにそう思うよね。
 水分が欲しいだけなら水や出汁汁るじゃだめなの? と思うのは当然のことだ。

「お水でも美味しいけど、酒の旨味が加わった方が何倍も美味しいんだ。白ワインだけだど酸味が強く感じることもあるから、日本酒の甘みでそれを弱める狙いもあるんだ」

「なるほど、香りや甘み、旨味を足すのが狙いなわけね」

「ほぼその通り、コンソメを入れオレガノを数振りして蓋をしてジャガイモが煮えるまで加熱する」

「ミネストローネって、なんだか難しそうなイメージがあったけれど、やってみるとそこまで難しい料理って訳ではないのね……」

「案ずるより産むがやすしってことだね。ミネストローネと日本で呼んでいるものの多くは、パスタや豆が入っていることは多くない。ただの具沢山スープという認識になっているマカロニを入れることで、これだけでご飯になる一皿料理に早変わりする。今回はあくまでも具沢山スープにってしてもらうから、マカロニは茹でないけどね。スープが煮える間にパスタを仕上げていこう」

 ミネストローネとは? と言う説明をしながらスープを煮る時間を消化する。

「解ったわ」

「アンチョビを入れて再び過熱してパスタソース少し煮詰める。その間に塩水でパスタを茹で……規定時間よりも二分ほど前に上げパスタソースを吸わせながら煮ていく……残り一分ほどになったらオリーブ油を足してフライパンを前後振って宙に舞わせ、空気を絡ませる。これを『マンテカトゥーラ』と言う。こすうるとパスタソースの粘土が上がってクリーミーな味になるんだ」

 説明しながらフライパンを前後に振る。
 チャーハンにハマっていた時に磨いた鍋振り技術がここに生きている。
 なおいつも使っているテフロン加工されたフライパンは重いので、チャーハンやパスタを作る時はアルミで作られた軽いフライパンで作るようにしている。

「既定の茹で時間よりも早く茹であげるのはどうして?」

 確かに俺もはじめて知った時は疑問に思ったことだ。
 これは調べたので簡潔に説明できる。

「規定時間は丁度いい茹で時間を表しているだけで、パスタソースと絡めている間に伸びてしまうというんだ。それにソースの中で茹でればパスタ事態にもソースの味が染みる。オマケにパスタから溶け出たデンプンによって俗にいう “乳化” した状態になるんだ」

「私の知ってる乳化とは違うような気がするんだけど……」

 彼女の疑問は当然のものだ。

「科学用語とは違うんだけど、水と油が混ざると乳白色の混合物になるでしょ? パスタソースの場合も乳白色になって高い粘性を持ったソースの状態を “乳化” と表現するんだ。それはパスタソースにパスタのデンプンと油、空気が混ざると起こり易い。だからパスタをソースで煮て、最後にオイルを入れ『マンテカトゥーラ』することで “乳化” した美味しいパスタになるんだよ」

 説明している間に約一分間のマンテカトゥーラは終わり、盛り付けの工程に移行していた。

 パスタを巻き付けながら皿に盛り、上からバジルと千切ったモッツアレラチーズ、フライドガーリックを乗せ上から胡椒を引く。

「チーズが溶けないんじゃない?」

 不安そうな表情で 菜月なつきさんは皿を覗き込む……

「大丈夫、パスタの熱で糸を引く程度には溶けるから。さぁミネストローネも仕上げと行こう。ピストゥと言う冷製ソースを加えまる」

 そう言うと俺はブルーチーズのようなモノを鍋に加え溶かし始める。

「ピストゥって?」

「オリーブオイルとバジル、ニンニク、パルメザンチーズ、ペコリーノで、それらをペースト状にしたものをピストゥと言って、南フランス東部プロヴァンス地方発祥と言われている調味料だね」

「なんだか材料だけを聞くとジェノベーゼソース見たいね……」

 料理の経験や知識はないものの雑学としては知っているようだ。

「近いものだね。違いは松の実が入っているかどうかぐらいかな? だから代用は出来るね。スープ・オ・ピストゥーって言うミネストローネスープに良く似たスープには、この冷製ソースを使うんだ。ピストゥとオリーブ油を仕上げに淹れよく混ざったらスープ皿によそって完成だ」

 そして輪切りトマトにモッツァレラチーズを挟んで塩とオリーブ油を掛けた冷製サラダと、白だしを掛けた打輪切りトマトに塩昆布を振りかけ、皿の隅にマヨネーズを添えることで居酒屋風冷やしトマトが完成する。

 サラダ枠で作った料理だがどちらかと言うとこれは両親の酒の肴だな……昔まだ料理がロクに出来ない頃に父と言った居酒屋で頼んだ料理の再現だ。

「こんなものか……」

 食卓に料理を配膳すると玄関のドアが開いた。

 丁度いい。
 どうやら父か義母が帰って来たようだ。
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